「真実の口」2,176 来るべき大地震に備えて ㊴

前回の続き・・・。

前回、東北大学の研究チームによる、南海トラフ限定の後発地震発生の確率利得を紹介した。

同チームは以下のようにまとめている。

【 南海トラフにおける後発地震の発生確率のポイント 】

南海トラフの後発地震発生確率は、国のガイドラインに目安として示されている数字よりも大きい可能性が高いと言える。
・ガイドラインには、 1 週間以内の後発地震の発生確率は「十数回に一回程度の頻度」で起こると記載されているが、当プロジェクトの結果では 2.1% ~ 77% となった。
・ 後発地震の発生確率は、時間枠が広がってもその増加量はあまり大きくない。
 6 時間以内の後発地震発生確率は 1.0% ~ 53% だが、これが 1 日以内だと 1.4% ~ 64%1 週間以内となっても 2.1% ~ 77% であるが、これは、「もし 1 週間以内に後発地震が起こるとすると、先発地震の直後(例えば 1 日以内)に発生する可能性がかなり高い」といったことを意味する。
半割れケースでの臨時情報の場合、先発地震の発生から 1 週間は後発地震に対する警戒対応をすることになっているが、最も警戒すべきは先発地震発生直後であるため、迅速な対応ができるよう平常時から準備や訓練をしておく必要がある。
・ 確率および確率利得の推定の幅がかなり広くなっているが、これは、 6 事例というわずかしかない標本数による不可避な結果である。
・ 信頼区間の下端の値からは、わずかながら、南海トラフでこれまで連発事例が複数回あったのは偶然であって、実際の連発の確率は世界平均と同程度である可能性があることが言える(その場合でも、十分注意すべき高い値である)。
・ 一方、もしも 3 年以内に後発地震が必ず発生すると仮定すると、 1 日以内で 6 割以上1 週間以内で 8 割近くといった高い確率で後発地震が発生することになる。

我々は、南海トラフの半割れケースとは異なるが、短期間での 2 回の巨大地震を経験している。

平成 28 年熊本地震である。

平成 28 年 4 月 14 日 21 時 26 分、熊本県熊本地方を震央とする M6.5 の地震が発生し、熊本県益城町で震度 7 が観測された。

その 28 時間後、 16 日 1 時 25 分には、同じく熊本県熊本地方を震央とする M7.3 の地震が発生し、益城町及び西原村で震度 7 が観測された。

震度 7 の地震が同一地域で連続して発生するのは震度 7 が設定された 1949 年以降初めてのことであった。

気象庁では、当初、 14 日に発生した M6.5 の地震が本震と想定されていたが、 16 日未明に上記 M7.3 の地震が発生したことを受けて気象庁は、同日、後者( 16 日未明)の地震が本震で、前者( 14 日)の地震は前震であったと考えられるとする見解を発表している。

前震の揺れに耐えた建物も本震あるいは度重なる余震で崩れていったのを覚えていると思う。

特に、熊本城などは印象的ではなかっただろうか?

【 4 月 14 日の前震後の熊本城】

前震後の熊本城

【 4 月 16 日の本震後の熊本城】
本震後の熊本城

2021 年 4 月 26 日から一般公開されるようになり、その後の写真がこちらである。

復旧途中の熊本城

この復旧には私もわずかだが貢献している・・・。

感謝状

城主証

上記は、復興のための募金活動に協力した人に贈られるものである。

話を戻そう。

半割れ・後発地震が発生した場合、現在の建物はどうなるのだろうか?

専門家によれば、オフィスビルやタワーマンションといった超高層ビルに、これまでにはなかった甚大な被害が及ぶ可能性があると注意喚起している。

その中でも被害が深刻だと想定されるのが、東京、大阪、名古屋といった大都市は特に要注意らしい。

以下は、建築物の構造設計に詳しい摂南大学・西村勝尚特任教授らが、超高層ビルが「半割れ」の 2 度の揺れに襲われたケースをシミュレーションしたものである。

摂南大学・西村勝尚特任教授

大阪にある 25 階建て、高さ約 100m の鉄骨造、制震装置のあるオフィスビルの構造を、コンピューター上で再現し、大阪・此花区の地盤で想定される揺れを 2 回入力したものだそうだ。

その結果、 1 回目の揺れではビルの鉄骨の一部が赤色に変形したことを示されている。

そして、この鉄骨を修復できないまま 2 回目の揺れに襲われた場合、下の階を中心に青色に変わった部分が確認できると思う。

これは変形した鉄骨が、揺れに耐えられずに破断したことを意味しているそうだ。

つまり、超高層ビルが、継続して使用できないダメージを受けてしまう可能性があるという結果が得られたことになる。

分析を行った西村特任教授は、超高層ビルの倒壊の可能性は低いとした上で、南海トラフ地震で大阪を襲うような 2 度の大きな揺れは、今のビルの設計の基準では想定されていないものだと指摘している。

摂南大学 西村勝尚特任教授:

「たとえば針金をクネクネと曲げても、 1 回や 2 回曲げたくらいでは変形するだけで折れることはありません。しかし 10 回くらい継続して曲げているとポキッと折れてしまう。それと同じことが起きるのです。今の建物の設計基準では継続時間の長い 2 回の揺れに襲われることが想定されていないため、南海トラフ地震が起きた場合にこういうリスクがあるということを構造設計者や建築主、そして建物を利用する私たちも理解しておくことが必要です。」

近年、都会ばかりでなく地方でも、タワマンブームの追い風に乗り、アチコチでタワーマンションが作られている。

以下は、建物の高経年化や居住者の高齢化の「二つの老い」が進行し、これに伴い様々な課題が顕在化しつつある中、こうした状況に対応するため、管理・修繕の適正化や再生の円滑化の観点から今後進めるべき政策について、幅広く検討することを目的として、 2022 年 10 月に国土交通省が有識者等による検討会を設置し、「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」の中で提示された『超高層マンション(タワーマンション)の新規竣工棟数・累積棟数( 2021 年 12 月末時点)』である。

全国の超高層マンションの新規竣工棟数・累積棟数

超高層マンション 20 階以上のマンション)は、 2000 年代に入り、新規竣工棟数が大幅に増加しており、 2021 年末の累積棟数は全国で約 1,400 棟超になっている。

また、 2003 ~ 2010 年に多く供給されており、これらのマンションの多くかは、同時期に大規模修繕工事を行うことが見込まれることになる。

以下は、マンション内の借家の割合である。

マンション内の借家の割合

近年、マンション全体における借家の割合が増えていることが話明かると思う。

これは、超高層マンションでも同様である。

階建て別の賃貸戸数割合

20 階建て以上になると賃貸戸数割合は 19.5% に跳ね上がっているのが分かると思う。

これら賃貸率増加も厄介な問題になってくるのである。

次回へ・・・。