「真実の口」2,180 来るべき大地震に備えて ㊸

前回の続き・・・。

株式会社 東京カンテイさんが阪神・淡路大震災及び東日本大震災でのマンション被害をデータ化してくれているので参考にさせてもらう。

以降のデータは、建物被害程度を以下のように分類している。

建物被害程度分類

【 阪神・淡路大震災 】

阪神・淡路大震災では、マンションが損壊したのは、 2,532 棟(大破 83 、中破 108 、小破 353 、軽微 1,988 )で、損傷無しは、 2,729 棟だった。

これを旧耐震・新耐震別に見てみると・・・。

阪神大震災 兵庫県耐震基準別建物被災状況

これを実際の数値で見てみると・・・。

阪神大震災 兵庫県耐震基準別建物被災状況

新耐震の被災度では「被害無」と「軽微」は旧耐震より新耐震の方が多く、「小破」、「中破」、「大破」は明らかに旧耐震マンションの方が大きくなっているのがわかる。

【 東日本大震災 】

東日本大震災では、マンションが損壊したのは、 722 棟(大破 1 、中破 15 、小破 175 、軽微 531 )で、損傷無しは、 738 棟だった。

これを旧耐震・新耐震別に見てみると・・・。

東日本大震災 宮城県耐震基準別建物被災状況

これを実際の数値で見てみると・・・。

東日本大震災 宮城県耐震基準別建物被災状況

震災当時、宮城県内に 1,460 棟のマンションが竣工済みとして登録されていたが、その 92.0% にあたる 1,343 棟が仙台市内の物件であり、宮城県内で仙台市以外の地域には分譲マンションは少なく、特に旧耐震マンションは石巻市に 1 棟、多賀城市に 2 棟、大崎市に 1 棟、合計で 4 棟しかなかったらしい。

上記の数値だけでは判断できないが、震源からの距離や地震の伝わり方の違いによって被害状況が変わり、新耐震と旧耐震の違いは揺れの大きさと一定の相関性があり、旧耐震マンションは揺れが大きいと被災比率が高まる傾向が強いことが明らかとなったようだ。

二つの大震災を比較してみると、被災度で有意の差が生じているのは「小破」までであり、「中破」、「大破」では新耐震も旧耐震も大きな差が生じていない。

東日本大震災では阪神・淡路大震災と比べ旧耐震マンションについても「中破」や「大破」といった大きな被害を免れたという結果となっている。

また、揺れ方の特徴にも違いが出たよう。

阪神・淡路大震災時も東日本大震災時も私は同じ寝屋川市にいた。

阪神・淡路だ震災は、自宅で就寝中だったが、下から突き上げるような地震があり、その後も家屋がねじ切られるのではという体感を受けた。

東日本大震災時は、娘の自転車を買うために自転車にいたのだが、揺れが遠くから響いてきて、段々とその振れ幅が大きく長く続いたという感じだった。

その結果、阪神大震災は、死者のほとんどは建物の倒壊等による圧死であり、特に戸建住宅で多くの犠牲者を出した、またマンションでも低層階の座屈などが生じ、大型家具などの転倒によって死者を出している

一方、東日本大震災では、激しい横揺れが長時間続いたものの、津波によって家屋そのものが流された地域を除けば、戸建住宅の倒壊はほとんど起こっていない。

また、現地の技術者の調査では「筋交い」がきちんと入っていれば、倒壊を免れることが出来たことが確認されている。

このため、RC (鉄筋コンクリート造)または SRC (鉄骨鉄筋コンクリート造)で柱・梁・壁・天井で構成されたマンションは、横揺れにはある程度対応出来る能力を有しており、そのため東日本大震災では旧耐震マンションの被害と新耐震マンション被害に大きな差が生じなかったと考えられる。

また、阪神・淡路大震災が発生した 1995 年と東日本大震災が発生した 2011 年という 16 年の時間的隔たりがあるため、旧耐震マンションと新耐震マンションのストック割合にも大きな差があったようだ。

阪神大震災が発生した 1995 年には、兵庫県の竣工済みマンションのうち旧耐震と新耐震の比率は約 2:3と 拮抗していたが、 2011 年の東日本大震災における宮城県の旧耐震と新耐震の比率は約 1:6 だったそうだ。

さらに、阪神大震災が活断層の破壊によって生じた断層型地震で、震源が 5㎞ と浅く「直下型地震」であったこと、規模はマグニチュード 7.3 であったのに対し、東日本大震災は牡鹿半島沖約 130㎞ の太平洋上、深さは 24㎞ に震源域があったことも、戸建て・マンションの被害状況が変わったと言える。

阪神・淡路大震災は建物倒壊などによる圧死が多かったのに対し、東日本大震災の被害の 9 割以上は巨大津波によってもたらされたものという違いもある。

2 つの大震災についてまとめてみると、最大震度は同じく 6 強だったものの、阪神淡路大震災の方が東日本大震災に比べ被害が大きかった。

これは、阪神淡路大震災が直下型の地震だったからで、震源地からの距離などによって大きな差がでたためと言える。

ただ、新耐震も旧耐震も約半数以上の建物が「被害無」、 8 割以上の建物が「軽微」以下の被害で済んでおり、旧耐震といえども分譲マンションは地震に強いことが判る。

新耐震の方が「中破」以上の被害が相対的に少なく、やはり新耐震の方が相対的に耐震性は高いといえるが、新耐震でも「中破」以上の被害もそれなりにみられ、新耐震だから被害はないとは必ずしも言えない。

次回は・・・。