「真実の口」2,183 来るべき大地震に備えて ㊻

前回の続き・・・。

長きにわたり地震のアレコレについて寄稿してきた。

能登半島地震の被害状況に始まり、地震予知につぎ込まれた多額の国家予算とそのシステム、耐震構造等々・・・。

再度、地震予知は可能かどうかを考えてみる。

日本において、地震予知は可能だと言い切る人がいる。

電気通信大学名誉教授でもあり、株式会社早川地震電磁気研究所の代表・早川正士氏である。

著書も多く出されている。

東日本大震災直後に出版された『地震は予知できる!』はかなり脚光を浴びたようだ。

地震は予知できる!

帯がちょっと笑う・・・。

「的中率 7 割の予測方が実在していた!」

的中率 7 割なのに、その後に起きた熊本地震、大阪北部地震、北海道胆振東部地震、能登半島地震で、何故、脚光を浴びなかったのか?

早川氏が地震予知のメカニズムを解説してくれているので紹介する。

(※注) 実際は、‟です・ます”調のレポートだが、当 blog に合わせて断定式に変えている。

1. なぜ 1 週間前に地震を予知できるのか?

地震を予知するには地震の前兆現象、先行現象を捕捉しなければならない。

早川氏は、巨大エネルギーをともなう大地震の発生を次のように考えていた。

それは、「地震は突然発生するものではなく、発生前にこの巨大なエネルギーに誘発されて何かしら変化が起こるはずだ。その変化前兆現象)を見つけることができれば地震発生を予知できるのではないか」というものだった。

元々、早川教授は、名古屋大学空電研究所現在の太陽地球環境研究所)で大気圏や宇宙から到来する電磁波の研究をスタートさせた。

電気通信大学に移ってからは、研究フィールドを地球温暖化や地磁気嵐など電波を使った地球環境に広げた。

そうした中、阪神淡路大震災の前に電波に顕著な異常が出て いたことを発見。

この発見こそが早川教授が求めていた前兆現象の最初の 1 例となった。

その後、約 20 年間電波の異常と地震発生の因果関係を調べた。

その後も中越沖地震やスマトラ沖地震など巨大地震の前に電波異常を観測するなど、こうした観測結果を 2010 年世界有数のアメリカ地球物理学会に論文を発表した。

M5.5 以上の浅い地震の前には電波に異常が発生する。

そして、この電波を使った地震予知技術を特許として登録した。

特許第4867016号

地震発生前に観測される電波の異常を観測データから見つけ出す観測及び解析方法である。

大地震発生前には、電離層に異常が発生する。

地震の前兆をとらえる早川理論

上図で示されるように、通常の電波の通り道を緑色で、地震発生前の電波の通り道を赤色で表す。

緑色赤色では送信局から発した電波が受信局に届くまでの距離に変化が生じる。

この変化には、電波の強度・速度に変化が生じる。

特に、太陽の影響の ない夜間にはこの影響が顕著に現れることが分かった。

これを‟夜間揺らぎ法”という名前をつけて地震予知に活かしている。

地震を予知するためには、 1: いつ、 2: どこで、 3: どのくらい規模(マグニチュード)の 3 要素の特定が重要である。

電波を使うと、‟いつ” : 観測開始から約 1 週間後に地震発生、‟どこで” : 電波の異常の重ね合わせで場所を特定、‟どのくらい” : マグニチュード 5 以上の大きな地震を予知することができる。

つまり、電波観測によって地震の 3 要素をバランス良く予報できる可能性が強まった。

2.  地震の前に何が起こる(地震の前兆現象)

~物理現象・化学現象を伴った前兆現象~

人にはほんの僅かな香りを嗅ぎ分ける能力が備わっているが、犬の嗅覚はその一億倍とも言われている。

このように人間を遥かに上回る高感度センサーを備えた動 物が、地震の「前兆現象」を感知して、激しく吠えたり暴れたり、地震を避けるように姿を隠しているのではないかと考える研究者がいる。

つまり、人間には感知できない 物理現象や化学現象が地上に現れているのではないかという“仮説”である。

既に、測れる“何か”を探す研究、その“何か”が引き起こす現象、事象を使って地震を予知し ようという研究が始まっている。

下記に現在進んでいる観測、研究を紹介する。

① 地震計を設置した地震活動の観測
② ひずみ計・傾斜計・検潮器を使った地殻変動の継続観測
③ 測量技術を流用した各地点の移動距離や高さ変化の継続観測
④ 電磁波の継続観測、
⑤ 化学的成分(ラドンガス)の濃度観測 等々。

‟継続観測”とは、常時観測を続けて平時の状態を把握し、その状態が大きく変化したときに異常と判断して予知する観測手法である。

このように地震発生前の岩盤変化を直接調べることができないので、地表(地上)で観測できる“モノ”を使って間接的に地震を予知する試みである。

様々な前兆現象の観測法

~電磁波を使った観測手法~

日本では有感地震以外にも感じない規模の地震が多数発生しており、国土は絶えず動いていると言える。

これは、複数の大陸プレートが複雑にぶつかり合う境界の 上に日本が位置しているからである。

平時(地震が起きていない時)の平常状態から異変を捕捉して予測に役立てる。

早川地震電磁気研究所では、上記の ④ 電磁波( VLF/LF 帯) を使って観測している。

さらに、今後、 3 種類の電波帯域を併用して精度と確度を向上させる計画を練っている。

a) VLF/LF 帯(電離層の擾乱を観測する)
b) ULF/ELF 帯(大気圏内の異常を観測する)
c) ULF 電磁放射(地圏から直接放射される信号を観測する)

地震予知の方法

次回へ・・・。