「真実の口」2,175 来るべき大地震に備えて ㊳

前回の続き・・・。

前回、半割れ及び一部割れケースにおける後発地震発生の確率利得を紹介した。

東北大学の研究チームは、後発地震発生の確率利得を以下のようにまとめている

【 世界の地震統計データから得られた後発地震の発生確率のポイント 】

・ 標本数が少ないため、特に半割れケースにおいて、確率および確率利得の推定の幅( 95% 信頼区間) が広くなっている。
半割れケースの 1 週間以内の後発地震発生確率は 0.59% ~ 8.1% と推定された。これは、国のガイドラインの「十数回に一回程度」の表現に整合する結果となった。ただし、当プロジェクトの結果を正確に表現するならば、「二百回に一回から十数回に一回程度」となる。
一部割れケースでの後発地震の発生確率(表 3-2 )及び確率利得(表 3-4 )は、半割れケースと比べると 1 桁小さくなる。これは、国のガイドラインの記載内容と概ね整合的しているが、 1 週間以内の確率利得( 12倍 ~ 55 倍)はガイドライン記載の表現「通常の数倍程度の確率」よりも大きい値となった。

ここまでは、世界の地震統計データを用い、 M8.0 以上の地震が連発する確率及び M7.0 以上 M8.0 未満の地震のあとに M.8.0 以上の地震が発生する確率についての計算結果を示してきたが、実際には、地震の発生に関する統計的性質には地域による違いがあることがわかっている。

特に、南海トラフでは、 M8 クラスの地震が時間差を置いて連発する事例が過去に複数あったことから、連発が起こりやすい性質があるのではないかと多くの地震学者は考えているようだ。

当該プロジェクトでは、南海トラフでの地震発生履歴に関する過去の研究文献について、特に、 M8 クラスの地震の連発の有無に着目して再精査し、その上で、前節の計算結果も用いながら、南海トラフの固有性を考慮し、南海トラフの「半割れケース」における後発地震の発生確率を計算した。

以下が、その前提条件である。

・調査は、漏れがないとされる 1361 年以降の地震について行った。

・南海トラフ地震震源域を日向灘、南海、東南海、東海の 4 つの区域に分けた。

・  1361 年の正平(康安)地震については、南海から東南海の二つの区域が震源域となったことは確実だが、これらの区域が二日の時間差を置いて破壊した(東側→西側)という推論もあり、確かなことはわからない。

・ 1498 年の明応地震については、南海区域が震源域となった決定的な証拠は地質学的データからは得られていないが、歴史資料研究からは、南海から東海にかけての広い区域が同時に破壊されたか、南海区域が先に破壊し二ヶ月半後に東側の区域が破壊された可能性が指摘されている。

・ 1605 年の慶長地震については、揺れによる被害がなく大津波の記録や痕跡が残っているので、津波地震(断層が比較的ゆっくりずれた)である可能性が高く、記録や痕跡の範囲は広く、広い区域が同時に破壊されたと推定され、なお、津波地震の震源域は通常の地震とは違い、浅部(南海トラフ〈プレートの沈み込み開始地点〉のすぐ下側)である可能性がある。

・ 1707 年の宝永地震については、南海から東海にかけての広い区域がほぼ同時に破壊したことが確実とされている。

・ 1854 年には、安政東海地震(東南海・東海区域を破壊)と安政南海地震(南海区域を破壊)が 30 時間程度の時間差を置いて連発したことが確実である。

・ 1944 年に東南海地震が発生し、二年後の 1946 年に南海地震が発生したが、日向灘区域に関しては、これまで最大で  M7.6  の地震が知られているが、他の区域と同時あるいは少しの時間差を置いて破壊されたような地震は知られていない。

1361年以降の南海トラフ地震発生履歴

上の 6 回の事例から 3 年以内に時間差を置いて連発する確率を計算すると、 33%( 6 回中 2 回)か 67% ( 6 回中 4 回)となる。

さらに、真の確率が存在する幅( 95% 信頼区間) は、それぞれ、 4.3% ~ 77% 、 22% ~ 96% となり、総合すれば 4.3% ~ 96% となる。

表 3-1 から、世界の統計からは 3 年以内の連発確率は 5.3% ~ 18% と計算されていたので、南海トラフにおける連発の確率は、やはり世界の他地域と比べればずっと大きい可能性が高いことになる。

半割れケースにおける後発地震の発生頻度についてのガイドラインの記載(

上図や前出の確率利得の表から読み取ると、先発地震の直後が最も後発地震の発生の確率が高く、その確率は次第に減少している。

当該プロジェクトでの分析の結果、この確率の減少は、通常の地震における余震の発生確率の減少と同様の公式で表せるらしい。

この確率の減少曲線と、南海トラフでの 3 年以内連発確率 4.3% ~ 96% を組み合わせると、任意の時間内での地震の連発確率を計算することができ、の結果を以下のようになるらしい。

南海トラフにおける後発地震の発生確率と確率利得

1 日以内に連続して大地震が発生する確率は、 1.4% ~ 64% で平時に比べて 460 倍~ 21,000倍。

また、 1 週間以内に連続する確率は 2.1% ~ 77% で、平時と比べて 99 倍~ 3,600 倍。

更に、 3 年以内に連続する確率も 4.3% ~ 96% と高くなっていることがわかる。

この数値を見て如何感じただろうか?

次回へ・・・。