前回の続き・・・。
1. 震源における電磁波放射
《電磁波》
“電磁波”は非常に身近な存在で、電気が流れると発生する。
例えば、電子レンジは電磁波で加熱、加温するよう設計された特殊な製品だが、一般的な電化製品でも電磁波は発生する。
もう少し詳しく説明すると、コンセントに電源コードを差し込むと AC100V の電圧が掛かり、これで“電場”というものが発生する。
また、電流が流れるとそこには必ず‟磁界”が発生する。
ただこれだけのことで”電磁波”が発生する。
《震源で起こっていること》
地震には、地表にその爪痕が現れるものと全く見えない“地殻”あるいは“マントル”部で発生するものがある。
現出する、しないと違いはあるが、根本的な原因は、“地殻”、“マントル”にある。
多くの地震が発生する場所には岩石しかない。
ただ、この部分は、地表面と比べるとだいぶ様相が違う。
まず、地球の重力で岩盤、岩石は中心部に向かって引っ張られる。
そのため、地表に比べて非常に高圧で高温になっている。
さらに、“マントル”は地球の中心に温められて“対流”しているので、絶えず動いている。
このような動きが、さらに不安定さを大きくする。
この様な不安定な状態の中で、岩石破壊、岩盤破壊が発生して電磁波が発生する。
この仕組みについては、まだよくわかっていない点も多く、学会では
・マイクロクラック説
・プラズマ説
・圧電効果説
・・・といった説が提唱され、研究が進められている。
一方で、ブロック状の岩石を装置に固定し機械で圧力を加え続ける実験では、破断(破壊)する瞬間に電磁波が発生することも確かめられている。
地下深い震源でいったい何が起こっているのかは、直接それらを知る術はない。
しかし、破壊あるいは破断によって、‟電磁波”が発生していることだけは間違いない。
2. この電磁波が震央上空に“電子層擾乱”を誘発する
前章で説明した「岩石、岩盤破壊で電磁波が発生する」という現象は複数の研究者、実験で確かめられ定説になりつつある。
そして、仮説をさらに体系化するためには、震源で発生する“電磁波”が“電離層擾乱”の直接的要因なのか、これを説明しないといけない。
しかし、これについては諸説あるもの現時点では制約条件が付くなど定説化するまでには至っていない。
当研究所の提示する仮説では、この部分の関係性が一番脆弱な個所になっている。
従って、震源から発せられる電波の直接観測を計画している。
いま、確かなことは、‟地震発生前に、震央上空(震源地の上空)に電離層擾乱が発生する” という関連性だけである。
3. 電離層擾乱が伝搬異常を誘発する
~電離層擾乱の要因~
擾乱を誘発する要因は、地震以外にも多数あるのでいくつか代表的なものを列挙する。
(ア) 地球の年周期によるもの(季節によって発生する)
(イ) 日周運動によるもの(昼と夜で違いが発生する)
(ウ) 宇宙線の影響(太陽フレアに代表される太陽活動の影響)
(エ) 大気中の異常放電 ・・・ ULF/ELF 電磁波を観測する
(オ) 地下構造の変化 ・・・震源から発せられる ULF 電磁放射を直接捉える
観測から必要な信号を間違いなく取り出すには、不要な信号に関する知識や傾向についても把握しておくことが大切である。
そういう意味では、(ア)~(ウ)は過去のデータが役に立つと同時にメカニズムや因果関係が明らかになっているのでほとんど問題はない。
しかし(エ)は、大気中の放電現象(雷放電)を指している。
一昔前に比べて異常気象も増えたため、全く影響がないわけではないが、昔から被雷に関する研究が盛んであったため、これについても影響は小さいと考えている。
狙っているのは、これまで見落としているかもしれない未知の事象である。
つまり、(オ)が問題になっている。
東日本大震災を境として、東日本の地下深くで地殻変動が発生したと考えられる。
そのため、観測している電波の定常状態が震災の前後で大きく変化してしまっている。
最新データ上の僅かな変化を見逃さないように⾧期間に亘って収集した膨大な過去のデータと比較するのが一般的だが、それができなくなっている現状がある。
~東日本大震災~
2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災で、伝搬異常を観測した。
この大地震では、遠くシアトルから届く VLF 帯の電波だけに伝搬異常が発生した。
国内送信局:青色◆ JJI 局(宮崎県えびの市、海上自衛隊所有 22.2KHz )
国内送信局:青色◆ JJY 局(福島県田村市、独立行政法人情報通信研究機構所有 40KHz ;電波時計の標準電波送信局)
海外送信局:イラスト外に NLK 局(アメリカ合衆国シアトル 24.8KHz )
受信局:赤★ MSR (北海道母子里観測所、名古屋大学太陽地球環境研究所所有)
CHF (調布市、電気通信大学)
KSG (愛知県春日井市、中部大学)
KCH (高知県高知市、高知大学)
震源:洋上赤★ 2 か所
図 d を見ると、国内送信局と各受信局を結ぶ伝搬路の大半は、三陸沖で発生した地震と全く関係ないことが分かる。
かろうじて JJY 局(福島)と MS (母子里)を結ぶ伝搬路だけが、三陸沖に近い場所を通過している。
しかしながら、この伝搬路でも観測データに異常はなかった。
しかし、太平洋上を伝播してくる NLK 局(シアトル)の電波を利用すると、洋上で発生する伝搬異常を観測することができる。
このケースで明らかに異常と判断できる電波を観測したのは CHF (電通大)だけだった。
次に、観測波形について説明する。
このデータを見る限り 3 月 5 日、6 日の二日にわたって振幅が低下し、そのレベルが標準偏差の 4 倍超の変化を記録した。
標準偏差の 4 倍という数値は、確率的に極めて例外的な、稀な数値と言える。
既に、観測値では、過去経験したことのない異変が現れていた。
~熊本地震~
2016 年 4 月 14 日に発生した熊本地震においても 4 月 4 日から 7 日にかけて伝搬異常を観測した。
送信局と受信局を結ぶ伝搬経路(青色)を重ねてみる。
なお、電波は一直線で受信局に向って到達するが、地球は球形であるため平面地図上ではその伝搬経路は湾曲して見える。
震央:熊本市内~阿蘇地方( M5 超の大きな地震が 3 度発生)
送信局: JJI 局(宮崎県えびの市、海上自衛隊所有 22.2KHz 電波)
受信局: 8 拠点(当時国内には 8 拠点の受信局があった)
次に、観測データについて説明する。
横軸 1 目盛り:夜間の平均振幅を 1 日のデータを現す
縦軸 1 目盛り:変化の程度を比較するために、振幅の標準偏差をプラスマイナスで現す
送信局と震央はおよそ 70㎞ 離れている。
大きな地震の場合、その前兆現象である“電離層擾乱”の範囲(規模)もそれだけ大きくなることが明らかになっている。
次に、観測波形について説明する。
このデータを見る限り 4 月 4 日から 7 日にかけて振幅が低下し、その低下度合いは標準偏差の 2 倍を超えて下降している。
このとき、早川地震電磁気研究所では、これを地震発生の前兆現象と認め、これまでの解析結果から来るべく地震を次のように予測した。
=解析結果=
・発生時期: 4 月 13 日~ 21 日と予測
・発生エリア:九州全域 と予測
・地震規模: M5.5 (最大)と予測
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=検証=
・発生時期: 4 月 14 日
・発生エリア:熊本市から阿蘇地方にかけて
・地震規模: M7 超
次回へ・・・。