前回の続き・・・。
前回、昭和東南海地震、昭和東南海地震の被害状況を寄稿した。
当時の人口を調べてみた。
年次 | 総数 (単位: 1,000 人) |
人口密度 ( 1km2 につき) |
---|---|---|
1941 ( 昭和16 ) 年 | 72,218 | 188.8 |
1942 ( 昭和17 ) 年 | 72,880 | 190.5 |
1943 ( 昭和18 ) 年 | 73,903 | 193.2 |
1944 ( 昭和19 ) 年 | 73,839 | 194.2 |
1945 ( 昭和20 ) 年 | 72,147 | 195.0 |
第二次大戦(大東亜戦争)の影響で人口減少がみられるが、 1945 年( 昭和 20 年)に約 7,200 万人であった我が国の総人口は、 1967 年( 昭和 42 年) に 1 億人を超えることになる。
そして、 2024 年( 令和 6 年 ) 5 月 1 日現在、 1 億 2,263 万 1,432 人となっている。
当時の人口の約 1.7 倍である。
また、 2024 年の日本の人口密度は 325.43 人/km2 となっており、これもまた当時の約 1.66 倍になっている。
当然、都市化が進み、高層化、交通量の増加、デジタル化、当時とは比較にならない環境になっている。
停電になれば、都市機能はマヒし、ガスや水道も機能しなくなるのは必然である。
現在の状況で半割れが起きたとしたらどうなるのだろうか?
2023 年 1 月11 日、東北大学は「南海トラフ巨大地震が連続発生する確率を算出」という研究成果をプレスリリースしている。
いわゆる、半割れの発生確率である。
なお、本研究成果は、 2023 年 1 月 10 日 19 時(日本時間)に Scientific Reports 誌に掲載されている。
【発表のポイント】
・ 南海トラフ沈み込み帯で発生する巨大地震((海トラフ地震)について、巨大地震が発生した後に別の巨大地震(後発地震)が発生する確率を算出した。
・ 1 週間以内に後発地震が発生する確率は約 2% 〜 77% 、平時の約 100 〜 3,600 倍と算出された。
・ 後発地震の発生予測には大きな不確実性が伴うこと、世界の他地域と比べて南海トラフ地域の巨大地震連発発生確率が大きい可能性があることを定量的に示した。
南海トラフ地震の“トラフ”とは“溝”という意味で、南海トラフの溝は、静岡県から九州の宮崎県にわたる地域の太平洋沖合にあり、この溝からのプレートの沈み込みにより発生する M8 以上の巨大地震が、南海トラフ地震と呼ばれる。
政府は、南海トラフ地震に対して防災対応を取るべきケースとして、( 1 ) 半割れ、( 2 ) 一部割れ、( 3 ) ゆっくりすべりの 3 つが想定している。
いずれかのケースに該当する現象が観測されたら、南海トラフ地震臨時情報が気象庁から発表されることになっているそうだ。
( 1 ) 半割れ
震源域と考えられている領域の半分を破壊するような M8 以上の南海トラフ地震が発生したケース。過去には、このような場合に、 30 時間あるいは 2 年の時間差を置いて別の巨大地震が発生し、残りの半分の震源域を破壊したことが知られている。過去の例から見ても、最大級の警戒が必要なケースということになり、この半割れケースでは、「巨大地震警戒」という種類の臨時情報が発表されることになっている。
( 2 ) 一部割
M8 まで大きくはないものの、想定震源域内で M7 クラスの地震が発生したケースのことであり、「巨大地震注意」という一段階レベルが低い臨時情報が発表される。
( 3 ) ゆっくりすべり
想定震源域の近くで普段は見られないような、異常なほどゆっくりとした断層のすべりが起こったケース。想定東海地震の前に検出できる可能性があるとされていた「前兆すべり」は、このゆっくりすべりに含まれる。ゆっくりすべり自体は、体に感じるような揺れや、被害を生じないが、 2011 年の東日本大震災を引き起こした超巨大地震の前に発生していたことを東北大学の研究チームが突き止めるなど、近年、巨大地震との関連性が注目されていおり、このような背景のもと、ゆっくりすべりケースでも「巨大地震注意」の臨時情報が出ることになっているが、ただ、巨大地震との関連性は未解明な部分が多い。
それまでの流れは以下のようになっている。
更に、「巨大地震警戒」までの流れは以下のようになっている。
話は戻るが、東北大学などの研究グループは、世界で過去に発生した M7 以上の地震およそ 1,500 回分の統計データと、 1361 年「正平(康安)東海地震」以降の南海トラフにおける地震の発生履歴をもとに確率を算出している。
以下は、 M8.0 以上の地震が発生したあとに別の M8.0 以上の地震が発生する事例(半割れにおける後発地震の発生数)および、 M7.0 以上 8.0 未満の地震が発生したあとに M8.0 以上の地震が発生する事例(一部割れにおける後発地震の発生数)をカウントしたものである。
ただし、後発地震の発生確率が、通常の何倍にあたるか(確率利得)を計算するにあたり、表 3-1 , 表 3-2 で算出された確率を平常時での確率で割り算している。
この平時の発生確率は、平均発生間隔が 90 年という仮定を基に計算している。
この仮定は、国の南海トラフ地震長期評価の計算上の仮定( 88.2年 )に準じている。
つまり、この 90 年という平均発生間隔は、漏れがないとされる 1361 年以降の南海トラフ地震の平均発生間隔( 117年) より短くなっている。
これより長い平均発生間隔を仮定すると、確率利得はより大きくなるので、ここで示す値は控えめに推定した結果ということになる。
このような方法で計算した確率利得が以下のようになる。
【 半割れケースにおける後発地震発生の確率利得 】
【 一部割れケースにおける後発地震発生の確率利得 】
これらの数値を見て如何感じるだろうか?
次回へ・・・。