前回の続き・・・。
「日本は地震予知ができないことを認めるべきだ。」
東京大学大学院理学系研究科:ロバート・ジェームズ・ゲラー客員共同研究員の言葉である。
ロバート・ジェームズ・ゲラー氏とはどんな人物なのだろうか?
1952 年、アメリカ・ニューヨーク市生まれ。
1977 年、カリフォルニア工科大学地球惑星科学研究科博士課程修了。同大学地球惑星科学研究科特別研究員。
1978 年、スタンフォード大学地球物理学科助教授を歴任。
1984 年、東京大学理学部(当時)助教授着任。
1999 年、同大大学院理学系研究科教授着任。
2017 年 3 月、定年退職。
同年 6 月に東京大学名誉教授称号取得。
主要研究テーマは、地震波動論および地球 3 次元内部構造推定、地震予知・予測の可能性の有無。
ゲラー氏に影響を与えたのが、金森博雄氏という日本の地震学者らしい。
金森博雄氏とは、現在も使われている中規模から大規模の地震のマグニチュードの計測で最も一般的に使用されているモーメント・マグニチュードの考案者である。
金森氏は、 1970 年、 34 際という若さで東京大学地震研究所の教授に就任している。
年齢は若かったが、地震学の第一人者として、日本は元より欧米でも認められていた国際的な研究者として著名だったらしい。
その金森氏が、東京大学を退官後、カリフォルニア工科大学へと籍を変えたことがゲラー氏との縁を結んだらしい。
その縁で、子弟関係となり、日本に興味を持ったゲラー氏は日本に移り住み、今では、日本の永住権を持つようになったようだ。
日本の学者は、地震を予知(?)・予測(?)することに躍起になっているが、当然、「日本は地震予知ができないことを認めるべきだ。」と唱えるゲラー氏は地震学者の間では異端児扱いである。
何故、ゲラー氏は「日本は地震予知ができないことを認めるべきだ。」と声高に言うのだろうか?
以下の図を見て欲しい。
これはゲラー氏が、政府が毎年公表している確率論的地震動予測地図(今後 30 年間に震度 6 弱以上地震が発生する確率)を素に、地震が実際に起きた地域を落とし込んだ独自の表「リアリティチェック」である。
1979 年以降に 10 人以上が死亡した大地震を書き込んでいる。
ほとんどが、今後 30 年間に震度 6 弱以上の地震が発生する確率が 3% 以下のところで起きているのが分かる。
その中で、以下は、 M7 以上を観測した地震の直前の発生確率である。
ついでに、私の住む大阪府で 2018 年に発生した大阪北部地震も調べてみた。
【 1995 年・阪神・淡路大震災】
・震央:兵庫県北淡町
・地震の深さ: 16 km
・地震の規模: M7.3
・最大震度: 7 (神戸市、芦屋市、西宮市、宝塚市、北淡町、一宮町、津名町)
・津波:数十 cm
・死者: 6,434 人
・行方不明者: 3 人
・ 30 年以内に地震が発生する確率: 0.02 ~ 8%
【 2004 年・新潟県中越地震】
・震央:新潟県中越地方
・地震の深さ: 13 km
・地震の規模: M6.8
・最大震度: 7 (新潟県川口町)
・津波:なし
・死者: 68 人(直接死 16 人、災害関連死 52 人)
・ 30 年以内に地震が発生する確率: 0.4 ~ 0.9 %
【 2011 年・東日本大震災】
・震央:三陸沖(仙台市の東方 70km )
・地震の深さ: 16 km
・地震の規模: M9.0 ~ 9.1
・最大震度: 7 (宮城県栗原市築館)
・津波: 9.3m 以上( 相馬港)、最大遡上 40.1m(綾里湾)、浸水面積 561km2 以上
・死者: 19,765 人
・行方不明者: 2,553 人
・ 30 年以内に地震が発生する確率: 90%
【 2016 年・熊本地震】
・震央:熊本県熊本地方
・地震の深さ: 12 km
・地震の規模: M7.3
・最大震度: 7 (熊本県熊本地方・益城町、西原村)
・津波:なし
・死者: 死者 276 人(直接死 50 人、地震関連死 221 人、豪雨関連死 5 人)
・ 30 年以内に地震が発生する確率: 0 ~ 0.9%
【 2018 年・大阪北部地震】
・震央:大阪府北部
・地震の深さ: 13 km
・地震の規模: M6.1
・最大震度: 6 弱 (大阪府大阪市北区・高槻市・枚方市・茨木市・箕面市)
・津波:なし
・死者: 死者 6 人
・ 30 年以内に地震が発生する確率: 0 ~ 3% 未満
この中で東日本大震災だけ 90% と当たっているような気がするが、M7.5 ~ M7.8 程度の地震の予想である。
地震学者の誰一人として、 M9.0 以上の地震が発生するなど想定していなかった。
これらを見ると、ゲラー氏が言う「日本は地震予知ができないことを認めるべきだ。」は満更、見当外れではないのだろうか?
次回へ・・・。