前回の続き・・・。
4 月 13 日(水)に、第 78 回・厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和 4 年度第 1 回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)が開催された。
今回は、“アナフィラキシー事例”を寄稿する。
≪アナフィラキシー報告事例≫
【ファイザー社製】
1.報告状況
○ 前回の集計対象期間( 2 月 2 日)以降、コミナティ筋注の副反応疑い報告において、製造販売業者からアナフィラキシーとして報告された事例が新たに 27 件(うち、 3 回目接種後の事例は 19 件)あり、令和 3 年 2 月 17 日から令和 4 年 3 月 20 日までに報告されたアナフィラキシー事例は計 3,208 件(うち、 3 回目接種後の事例は 55 件)となった。
2.専門家の評価
○ 令和 4 年 3 月 20 日までに報告された 3,208 事例を対象に、専門家の評価を実施。
○ 評価結果の概要は、以下のとおり。
ブライトン 分類レベル |
報告件数 | |||
---|---|---|---|---|
1回目接種時 | 2回目接種時 | 3回目接種時 | ||
1 | 119(+1) | 91(±0) | 27(±0) | 1(+1) |
2 | 468(+1) | 341(±0) | 123(±0) | 4(+1) |
3 | 24(±0) | 21(±0) | 3(±0) | 0(±0) |
4 | 2,495(+25) | 1,791(+5) | 654(+3) | 50(+13) |
5 | 102(±0) | 69(±0) | 33(±0) | 0(±0) |
合計 | 3,208(+27) | 2,313(+5) | 840(+3) | 55(+19) |
○アナフィラキシーの症例定義として国際的な指標になっている「ブライトン分類」での評価は、 3,208 事例中、何らかの循環器症状か呼吸器症状を発症し、重篤とされている“ 3 ”以上に該当するのは 611 ( +2 ) 例となっている。
●レベル 1 ~ 3 の報告件数/推定接種回数注・・・611 件/ 195,944,823 回接種
● 100 万回あたりの報告件数・・・ 3.1 件
○ブライトン分類レベル 1 ~ 3 の年齢別・性別の報告件数も見てみる。
年齢(歳) | 報告件数 | |||
---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 性別不明 | ||
0~4 | 0 | 0 | 0 | 0 |
5~9 | 0 | 0 | 0 | 0 |
10~14 | 4 | 2 | 2 | 0 |
15~19 | 13 | 6 | 7 | 0 |
20~24 | 46 | 11 | 34 | 1 |
25~29 | 51(+1) | 6 | 45(+1) | 0 |
30~34 | 57 | 12 | 45 | 0 |
35~39 | 83 | 8 | 75 | 0 |
40~44 | 82 | 9 | 73 | 0 |
45~49 | 94(+1) | 8 | 86(+1) | 0 |
50~54 | 56 | 2 | 54 | 0 |
55~59 | 43 | 5 | 38 | 0 |
60~64 | 19 | 1 | 18 | 0 |
65~69 | 25 | 6 | 19 | 0 |
70~74 | 12 | 4 | 8 | 0 |
75~79 | 4 | 0 | 4 | 0 |
80歳以上 | 20 | 2 | 18 | 0 |
不明 | 2 | 1 | 1 | 0 |
合計 | 611(+2) | 83 | 527(+2) | 1 |
(参考) 65歳以上 |
61 | 12 | 49 | 0 |
前回から、増減の箇所だけ色を変えている。
表から見て取れることは・・・。
【年齢】
65 歳未満・・・ 550 ( +9 )例
65 歳以上・・・ 61 ( ±0 )例
〔考察〕 アナフィラキシー事例のうち 7 割近くが 3 回目接取時に起きていることを考えると、 1 ・ 2 回目時よりは確率が上がっていることになる。
【性別】
男性・・・ 83 ( ±0 )例
女性・・・ 527 ( +2 )例
性別不明・・・ 1 ( ±0 )
〔考察〕 ファイザー社の報告通り、副反応は圧倒的に女性が多いのが分かる。
【モデルナ社製】
1.報告状況
○ 前回の集計対象期間( 2月 20 日)以降、スパイクバックス筋注の副反応疑い報告において、医療機関からアナフィラキシーとして報告された事例が新たに 18 件(うち、 3 回目接種後の事例は 16 件)あり、令和 3 年 5 月 22 日から令和 4 年 2 月 20 日までに報告された副反応事例は、計 541 件(うち、 3 回目接種後の事例は 20 件)となった。
2.専門家の評価
○ 令和 4 年 3 月 20 日までに報告された 541 件のうち、アナフィラキシーの疑いのある事例を対象に、専門家の評価を実施し、評価結果の概要は、以下のとおり。
ブライトン 分類レベル |
報告件数 | |||
---|---|---|---|---|
1回目接種時 | 2回目接種時 | 3回目接種時 | ||
1 | 9(+1) | 8(+1) | 1(±0) | 0(±0) |
2 | 51(+2) | 35(+2) | 14(±0) | 2(+2) |
3 | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) |
4 | 455(+15) | 319(+1) | 118(±0) | 18(+14) |
5 | 26(±0) | 25(±0) | 1(±0) | 0(±0) |
合計 | 541(+18) | 387(+2) | 134(±0) | 20(+16) |
○ 「ブライトン分類」での評価は、 541 事例中、何らかの循環器症状か呼吸器症状を発症し、重篤とされている“ 3 ”以上に該当するのは 60 例となっている。
・ レベル 1 ~ 3 の報告件数/推定接種回数・・・ 60 件/ 51,618,647 回接種
・ 100 万回あたりの報告件数・・・ 1.2 件
○ ブライトン分類レベル 1 ~ 3 の年齢別・性別の報告件数
年齢(歳) | 報告件数 | |||
---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 性別不明 | ||
0~4 | 0 | 0 | 0 | 0 |
5~9 | 0 | 0 | 0 | 0 |
10~14 | 1 | 0 | 1 | 0 |
15~19 | 5(+1) | 0 | 5(+1) | 0 |
20~24 | 12 | 5 | 6 | 1 |
25~29 | 9 | 2 | 7 | 0 |
30~34 | 10 | 0 | 10 | 0 |
35~39 | 7 | 3 | 4 | 0 |
40~44 | 4(+1) | 0 | 4(+1) | 0 |
45~49 | 4 | 1 | 3 | 0 |
50~54 | 3 | 0 | 3 | 0 |
55~59 | 4(+1) | 2(+1) | 2 | 0 |
60~64 | 0 | 0 | 0 | 0 |
65~69 | 1 | 0 | 1 | 0 |
70~74 | 0 | 0 | 0 | 0 |
75~79 | 0 | 0 | 0 | 0 |
80歳以上 | 0 | 0 | 0 | 0 |
不明 | 0 | 0 | 0 | 0 |
合計 | 60(+3) | 13(+1) | 46(+2) | 1 |
(参考) 65歳以上 |
1 | 0 | 1 | 0 |
表から見て取れることは・・・。
【年齢】
65 歳未満・・・ 59 ( +3 ) 例
65 歳以上・・・ 1 ( ±0 )例
〔考察〕 これまで同様、 65 歳未満の増加が見て取れた。
【性別】
男性・・・ 13 ( +1 )例
女性・・・ 46 ( +2 )例
〔考察〕 ファイザー社同様、副反応は圧倒的に女性が多いのが分かる。
【アストラゼネカ社製】
1.報告状況
○ 前回の集計対象期間( 2 月 20 日)以降、バキスゼブリア筋注の副反応疑い報告において、医療機関からアナフィラキシー疑いとして報告された事例が新たに報告はなく、令和 3 年 8 月 3 日から令和 4 年 3 月 20 日までに報告されたアナフィ ラキシー疑い事例は計 5 件のままである。
2.専門家の評価
○ 令和 4 年 3 月 20 日までに報告された 5 事例を対象に、専門家の評価を実施し、評価結果の概要は、以下のとおり。
ブライトン 分類レベル |
報告件数 | |||
---|---|---|---|---|
1回目接種時 | 2回目接種時 | 3回目接種時 | ||
1 | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) |
2 | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) |
3 | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) |
4 | 5(±0) | 2(±0) | 3(±0) | 0(±0) |
5 | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) | 0(±0) |
合計 | 5(+2) | 2(±0) | 3(±0) | 0(±0) |
○ 「ブライトン分類」での評価は、 5 事例中、何らかの循環器症状か呼吸器症状を発症し、重篤とされている“ 3 ”以上に該当するのは 0 例となっている。
・ レベル 1 ~ 3 の報告件数/推定接種回数・・・ 0 件/ 116,640 回接種
・ 100 万回あたりの報告件数・・・ 0 件
○ ブライトン分類レベル 1 ~ 3 の年齢別・性別の報告件数は無し。
アナフィラキシーに関する考え方(副反応疑い報告の状況に関するまとめ)
【 3 回目接種についてのまとめ】
○ ファイザー社ワクチンの 3 回目接種については、接種開始後( 2021 年 12 月 1 日)より、今回の審議会( 2022 年 3 月 20 日時点)までにおいて、医療機関より 1490 件( 3 回目推定接種回数のうち 0.046% )、製造販売業者より 449 件( 3 回目推定接種回数のうち 0.0017% )の報告があり、 より少ない傾向であった。また、 3 回目接種後の死亡として 86 件の報告があった。
○ 武田/モデルナ社ワクチンの 3 回目接種については、医療機関より 339 件( 3 回目推定接種回数のうち 0.0018%)、製造販売業者より 192 件( 3 回目推定接種回数のうち 0.0010% )の報告があり、 1 ・ 2 回目接種時より少ない傾向であった。また、 3 回目接種後の死亡として 51 件の報告があった。
【 3 回目接種に関する論点のまとめ】
○ 国内の 3 回目接種後に係る副反応疑い報告状況については、現時点では重大な懸念は認められない。
○ 国内外の 3 回目接種後の係る副反応疑いの報告状況についても、引き続き注視していく。
〔考察〕今回も前回同様 3 回目接種にしかスポットがあてられていない。閣議では、接種間隔が 6 ヶ月から 5 ヶ月へと短縮され、 3 回目接種を推進しようとしている。その一方で、 3 回目接種の死亡例がファイザー社製で 86 件、モデルナ社製で 51 件も発生している。発生率を確率だけで少なく見積もっているようだが、家族にとっては、何百万分の 1 ではなく、 1 分の 1 の発生だということを忘れないで欲しいものだ。
次回へ・・・。