前回の続き・・・。
前回、「IB ウィルスが鳥類に 2 度、 3 度と罹患するように、もし、新型コロナウィルスが、人類にも 2 度、 3 度と罹患する性状のものだったとしたら・・・?」という疑問を投げかけた。
再陽性・・・?
回復者が、新型コロナウィルスの再感染を受けたために再発した可能性・・・?
新型コロナウィルスの症状が消え、 PCR 反応も陰転し、治癒したように診断されても、実はウィルスは体内から完全には消滅しておらず、何らかの圧力(ストレス)が回復者に加わり、その結果体内に残っていたウィルスの増殖が再び始まってしまった可能性・・・?
まあ、未だに応えは出ていないのだが・・・。
今回は、前回に次いで、鳥類のコロナウィルス感染病である鶏伝染性気管支炎( IB )の病原体である IB ウィルスを用いた 大槻氏の 実験を紹介する。
・・・と言っても、 30 年以上も前の話だ(笑)。
大槻氏の実験の結果から、 IB ウィルスは持続感染を起こし得るウィルスであること分かった。
結論を先に行ってしまったが、 2 度、 3 度と罹患するわけでは無く、持続して感染することが可能だと言うことだ。
実験方法は、生物学的過ぎるので、省略させて頂く。
要は、孵化後 2 、 4 、 6 週目のヒナにウィルスを気管内に接種し、 20 週間経過を観察したらしい。
下の表が実験結果である。
【呼吸器症状】
一、 ヒナには呼吸器症状と下痢が発現。
一、 呼吸器症状はウィルス接種後、 3 日後からすべての日齢のヒナに約 1 週間後まで続き、後は 14 週後まで時折発現。
➡ IB ウィルスは、主要な標的臓器である呼吸器において持続感染する性質を持つ。
【下痢弁排泄】
一、 接種時の週齢の違いにより明らかな差異が生じた。
一、 2 週齢接種ヒナでは、 3 日目から 3 週間下痢が続き、さらに接種後 19 週間後まで 4 カ月以上の長きにわたって継続的に軽微な下痢が続いた。
一、 4 および 6 週齢接種ヒナでは、接種した翌日から下痢が認められた。
一、 4 週齢接種ヒナでは、 4 日間下痢が続いたが、 6 週齢ヒナではその 1 日目のみだった。
一、 4 および 6 週齢接種ヒナでは、 2 週齢時接種ヒナの場合と異なり、観察が終了するまで、稀に下痢が認められる程度で、特に 6 週齢時接種ヒナは極めて軽微な下痢が発現したのみで、 2 週齢時接種ヒナの場合と大きな違いが出た。
一、 産毛のままの 2 週齢ヒナの消化器の免疫機能は、羽根の生え変わった 6 週齢ヒナに比べ、あまりに未発達であったため、このような大きな差異が生じたのではないか?
一、 鶏では、免疫機能の衰える老齢化の進んだ個体を用いる実験室内の実験は、実際にはほとんど不可能なため、実験は出来なかったが、おそらく老齢の鶏では、孵化して間もない幼若の 2 週齢ヒナと同じような経過をたどるのではないか?
➡ IB ウィルスは、免疫力の弱い個体に対して持続感染する性質を持つ。
上記の結果を踏まえて、 2 週齢時接種ヒナは、下痢便を長期間排泄するということから、 2 週齢ヒナに同じウィルス株を接種した後、ウィルスが増殖すると考えられる複数の臓器からのウィルス回収を 20 週間にわたり行い、なお、対照として 6 週齢ヒナも用いた。
下の表が実験結果である。
一、 6 週齢時接種ヒナからのウィルス回収は、呼吸器と腎臓からウィルス接種後 4 週目まで認められるのみだった。
一、 2 週齢時接種ヒナからのウィルス回収は、より多くの臓器からウィルスが回収され、 18 週後にも結腸から回収された。
➡ 2 週齢時ウィルス接種ヒナでは、 IB ウィルスの持続感染が起きることが確認され、さらに IB ウィルスが長期間増殖する臓器は下部腸管であることが分かった。
更に、前段の呼吸器症状・下痢弁排泄の実験時、ウィルス中和試験(※注 1 )による血清中で産生された抗体および抗体価(※注 2 )の動態を調べた。
(※注 1 ) ウィルスと抗体を反応させたあと、鶏などに接種し、ウィルスが抗体によって不活化されたか否かを調べるもの。未知のウィルスがどのウイルスグループに属するかを決めたり、ウィルス感染によって鶏などの血清中にどのくらいの中和抗体が出現したかをみたりするために用いられる。
(※注 2 ) 体の中に侵入してきた、あるウイルス(抗原)に対して対抗する物質(抗体)の力価(量や強さ)のこと。
前回も解説したが、念のために再解説させていただいた(笑)。
下のグラフが実験結果である。
一、 いずれの週齢でウィルスを接種したヒナにおいても、ウィルス接種後 4 週目から抗体の産生が認められた。
一、 2 週齢時接種ヒナでは、抗体価は、低いまま経過し、ウィルス接種後 14 週目には消失した。
一、 4 および 6 週齢時接種ヒナでは、抗体価は、実験が終了した 20 週目まで検出され続けた。
➡免疫機能が劣る 2 週齢時接種ヒナでは、抗体が作られにくく、消失しやすい。
更に、2 週齢時接種したヒナでは、糞からウィルスは 20 週間回収され続けていたにもかかわらず、血中抗体は消失していたという。
大槻氏は、何故このような理解し難い現象が起きたのか不思議に思い、更に、実験を行ったらしい。
2 週齢および 6 週齢ヒナにこのウィルス株を接種し、定期的に胆汁中に出現した抗体を測定。
肝臓でつくられた胆汁の一部は胆嚢内に貯留し、それとは別に、総(腸)胆管より十二指腸に排出される粘度の少ない胆汁があるらしい。
後者の胆汁を採取し、この胆汁中の IB ウィルス抗体の動態を調べたという。
これを調べることにより、血液中の抗体ではない別の系統である門脈系の抗体産生状況について調べられるそうだ。
胆汁中には消化管感染を引き起こしたウィルスなどの病原体に対する抗体が出現し、血液中に出現する抗体とは別の動態を示されるということらしい・・・。
下のグラフが実験結果である。
接種ヒナの血清中(左側)および胆汁中(右側)のウィルス中和抗体の産生状況
(●は 2 週齢ヒナ、○は 6 週齢ヒナ。実験は 2 回実施した)
一、 血清中の抗体が、ウィルス接種後 3 週目から出現したのに比べ、胆汁中の抗体はウィルス接種後 2 週目から出現。
一、 胆汁中の抗体価は高く、しかも長期間維持された。
一、 2 週齢時接種したヒナでも、 6 週齢時に接種したヒナに近い胆汁中の抗体産生が認められる場合があった。
➡腸管下部の粘膜細胞で IB ウィルスの増殖は継続し、そのウィルス増殖に反応する胆汁抗体も持続して産生され、増殖したウィルスを腸管内である程度中和することにより、ウィルスの爆発的な増加を防ぐことによる軽微な腸管内の持続感染が成立した可能性が示唆された。
➡一方、 2 週齢時接種ヒナの血清中の抗体が比較的早期に消失したのは、呼吸器でのウィルスが、ウィルス接種後 14 週目に検出されなくなったことが関与しているのではないか?
大槻氏は、さらに涙液、唾液、気管洗浄液などに産生された抗体についても同様に経時的に調べたが、抗体は産生されたが抗体価性はあまり高くなく、 2 週齢時接種ヒナと 6 週齢時接種ヒナの間には、明瞭な差異は認められなかったらしい。
如何だろうか?
新型コロナウィルスと同じコロナウィルスである BI ウィルスでは、持続感染が確認されている。
新型コロナウィルスも同様に持続感染が無いとは言い切れない・・・!
抗体検査を積極的にやろうと言う政治家やマスメデイアや著名人・・・(笑)
いやはや、どうなるのだろうか?
次回へ・・・。