「真実の口」1,532 新型コロナウィルス・・・70

前回の続き・・・。

当 Blog では、抗体検査が役に立たないのでは(?)という寄稿をしてきた。

そして、 6 月 18 日、中国の重慶医科大学などの研究チームが、米医学誌 Nature Medicine に、愕然とする研究結果を発表した。

Clinical and immunological assessment of asymptomatic SARS-CoV-2 infections

(直訳:無症候性 SARS-CoV-2 感染の臨床的および免疫学的評価)

因みに、 SARS-CoV-2 とは新型コロナウィルス( Covid-19 )のことである。

Nature Medicine は、研究者および医師のために生物医学分野においてきわめて重要な最先端研究に特化した生物医学ジャーナル誌で、明快な情報提供に重点を置き、論文・記事は、がん生物学、心血管研究、遺伝子治療、免疫学、ワクチン開発、神経科学などの分野を網羅し、科学の進展を医学に具体的に応用するさまざまな生物医学研究成果をたえず提供することを目指している医学誌である。

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【概要】

重症急性呼吸器症候群 コロナウィルスに感染した無症状者の臨床的特徴と免疫反応については、これまであまり知られていなかった。

湾州区において、 SARS-CoV-2 感染と診断され、 PCR 検査陽性が確定し、過去 14 日間および入院中に関連する臨床症状を示さなかった 37 人の無症状者を対象に調査を行った。

無症状者は、政府指定の萬州人民病院に入院し、方針(※注 1 )に基づいて集中隔離を行った。

(※注 1 ) COVID-19予防と管理計画 4 版(中華人民共和国国家健康委員会2020)。

無症状群のウィルス排出期間の中央値は 19 日間( IQR (※注 2 )は 15 ~ 26 日間)であった。

(※注 2 ) 四分位範囲。データ分析の基本となる用語。四分位数とは、データを小さい順に並べた数の列を、四等分して、四等分した境界に相当するデータのことで、データ全体を 2 つに分け、その中央値(境界)となるデータを“第 2 四分位数”と言い、そして、前半のデータの中央値を“第 1 四分位数”、後半のデータの中央値を“第 3 四分位数”と言う。“第 2 四分位数”は、データ全体の中央値に相当し、そこから前後の中間となる範囲を 四分位範囲と言う。

無症状群では、症状のある群に比べてウィルスの排出期間が有意に長かった。

無症状群のウィルス特異 IgG 値( S/CO 中央値 3.4、 3.4 ; IQR 、 1.6 ~ 10.7 )は、急性期において有症者群( S/CO 中央値 20.5 、 IQR 、 5.8 ~ 38.2 )と比較して有意に低かった

無症状者のうち,症状のある患者の 96.8% ( 30 / 31 )、 62.2% ( 23 / 37 )と比較して、早期回復期に IgG 値と中和抗体値がそれぞれ低下したのは 93.3% ( 28 / 30 )、 81.1% ( 30 / 37 )であった。

症状のない患者の 40% が回復期の初期段階で IgG 陰性となり、症状のある患者の 12.9% が IgG 陰性となった。

さらに、無症状患者では、 18 種類のプロ抗炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインのレベルが低かった。

これらのデータは、無症状者は SARS-CoV-2 感染に対する免疫応答が弱いことを示唆している。

初期の回復期における IgG および中和抗体レベルの低下は、免疫戦略および血清学的調査に意味を持つ可能性がある。

【主文】

2020 年 5 月 24 日現在、 SARS-CoV-2 によるコロナウィルス感染症 ( COVID-19 )のパンデミックは、世界中で 500 万人以上が感染している。

SARS-CoV-2 に感染した患者のほとんどは、発熱、咳、息切れなどの症状を伴う軽度から重度の呼吸器疾患を有していると報告されており、これらの症状は曝露後 2 ~ 14 日後に現れる可能性がある。

しかし、 PCR 検査で陽性と診断されても、無症状または最小限の症状しか示さない患者もいる。

無症状の患者が効率的にウィルスを拡散することを示す証拠が増えており、 SARS-CoV-2 のサイレント・スプレッダーが出現したことで、流行の抑制が難しくなっている。

しかし、 SARS-CoV-2 感染の無症候性患者の臨床的特徴や免疫反応については明らかになっていない。

ここでは、 37 人の無症候性患者の疫学的および臨床的特徴、ウィルスレベル、免疫反応について評価する。

【結果】

●人口動態学的特徴

2020 年 2 月 6 日、中国国家衛生委員会は濃厚接触者管理のための COVID-19 予防管理計画(第 4 版)を更新し、無症状者の同定と検疫を強調した。

無症状の個人を特定するために、万州区疾病管理予防センター( CDC )は、検疫下にある 2,088 人の濃厚接触者を対象に大規模な PCR スクリーニングを実施した。

PCR 検査の結果が陽性であった個人は、現地の CDC が実施した有病率調査と、臨床医が報告した症状評価によってスクリーニングされた。

これらのうち 60 人は、現地の CDC の記録によると、過去 14 日間に症状がなかったと主張し、集中隔離のために政府指定の病院に移送された。

入院時に、臨床医から報告された症状評価に基づいて軽度または非定型の症状を呈した 17 人が除外された。

入院後 4 ~ 17 日後に症状を呈した 6 人も除外された。

後に、核酸検査の結果が陽性であったが、過去 14 日間および入院中に関連する臨床症状がなかった者として定義された無症状の 37 例を本研究に含めた。

2020 年 4 月 10 日以前に万州区で SARS-CoV-2 感染が確認された患者は、 CDC のサーベイランスシステムで追跡され、合計 178 人が確認された。

本研究では、無症候性感染症の患者の割合は、 20.8% ( 37 / 178 )であった。

抗体検出およびサイトカイン測定のために、無症状者との比較のために、性・年齢・頻度・併存疾患をマッチさせた軽症患者 37 名を選定した。

また、 SARS-CoV-2 の PCR 結果が陰性であった萬州区の性・年齢・頻度をマッチさせた 37 名の対照者をサイトカインの比較対象として選定した。

37 人の無症状者のうち、年齢中央値は 41 歳(範囲: 8 ~ 75 歳)で、 22 人が女性であった。

PCR 検査で COVID-19 が確認された患者との接触歴を有する者は 28 名であり、 9 名は武漢在住者または感染発症前に武漢への渡航歴があった。

●ウィルス学的結果

37 人の無症状者と 37 人の有症者において、最初に陽性と診断された鼻咽頭綿棒の PCR サイクル閾値( Ct )値を比較した。

37 人の無症状者と 37 人の有症者の最初の Ct 値は類似していた。

最初の鼻咽頭綿棒が陽性となってから、最後に鼻咽頭スワブが陽性となったまでの期間として定義されたウィルス排出期間の中央値は 19 日( IQR: 15 ~ 26 日)であった。

また、症状が軽度の患者では、ウィルス排出期間の中央値は 14 日( IQR : 9 ~ 22 日)であった。

無症状群では、症状のある群に比べてウィルスの排出期間が有意に長かった。

しかし、測定可能なウィルス排出はウィルス感染性とは一致せず、培養可能なウィルスと相関する呼吸器 SARS-CoV-2 ウィルス負荷を決定するためには、さらなる評価が必要である。

●無症状者におけるウィルス特異的 IgG および IgM

SARS-CoV-2 感染に対する急性抗体反応を調べるために、無症状者と症状のある人の血清中のウィルス特異的 IgG と IgM を測定した。

無症状群では 81.1% ( 30 / 37 )が IgG 陽性であり、症候群では 83.8% ( 31 / 37 人)が曝露後約 3 ~ 4 週間で IgG 陽性であった。

さらに、無症状群の 62.2% (23/37)が IgM 陽性であったのに対し、有症者群の 78.4% ( 29 / 37 )は IgM 陽性であった。

興味深いことに、急性期(呼吸器検体中にウィルス RNA が検出される時期)の IgG 値は、無症状群( S/CO 中央値 20.5 ,IQR : 5.8 ~ 38.2 )に比べて有症群( S/CO 中央値 3.4 ,IQR: 1.6 ~ 10.7 )で有意に高値を示した。

fig_2_a

また、無症状者 37 名と症候性患者 37 名を早期回復期(退院後 8 週間)まで追跡調査した。

症状のある患者群の IgG 値は、早期回復期の無症状患者群よりも有意に高かった。

fig_2_b

驚くべきことに、無症候群では 93.3% ( 28 / 30 )、症候群では 96.8%( 30 / 31 )の IgG 値が早期回復期に低下していた。

fig_2_c

IgG値の低下率の中央値は無症候群で 71.1% (範囲: 32.8 ~ 88.8% )であったのに対し、症候群では 76.2%(範囲: 10.9 ~ 96.2% )であった。

また、シュードウィルスを用いた中和試験法では、無症候群では 81.1% ( 30 / 37 )、症候群では 62.2% ( 23 / 37 )で中和抗体値の低下が認められた。

中和血清抗体の減少率の中央値は、無症状群では 8.3%(範囲 0.5 ~ 22.8% )であったのに対し、有症群では 11.7% (範囲 2.3 ~ 41.1%)であった。

fig_2_d

また、無症候群では 40.0 ( 12 / 30 )が IgG 陰性となったが、症候群では 12.9% ( 4 / 31 )にとどまった。

fig_2_e

●無症状者のサイトカイン

SARS-CoV-2 感染に関連する免疫反応をさらに明らかにするために、血清サイトカインおよびケモカイン濃度を無症状群と症候群で比較した。

18種類のプロ・抗炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの濃度の上昇が、無症状群と比較して有症者群で観察された。

これらのうち、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド( TRAIL)、マクロファージコロニー刺激因子( M-CSF )、成長制御オンコジーンα( GRO-α )、グラニューロン( GRANUL )などがあった。

顆粒球コロニー刺激因子( G-CSF) 、インターロイキン 6 ( IL-6 )が最も有意な変化を示した。

さらに、無症状群と 37 人の健常対照者を対象に、サイトカインをさらに解析した。

32 種類のサイトカインの血漿レベルは、健常対照者と無症状者との間で類似していた。

幹細胞因子( SCF) 、 IL-13 、 IL-12p40 および白血病抑制因子( LIF )の有意に高いレベルが無症候群で認められた。

これらのデータをまとめると、無症候群では、サイトカインおよびケモカインの循環濃度が低いことを特徴とする炎症反応が減少していたことがわかる。

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Nature Medicineに掲載された論文をそのまま意訳してみたが・・・。

要は、新型コロナウィルスに感染後、体内で作られる抗体が、感染から数カ月後には減り始めたというのだ・・・。

通常、感染後、回復した人は再感染する割合が低いとされているのが、感染症に対する一般的な常識である。

しかし、新型コロナウィルスに関しては、その常識が通用しないという可能性が指摘されたわけだ。

このようなレポートが公表された後に何なのだが・・・。

6 月 23 日、米 Science 誌に以下のようなレポートが発表された・・・。

A mathematical model reveals the influence of population heterogeneity on herd immunity to SARS-CoV-2

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イギリスとスウェーデンの研究グループは、人口の多くが免疫を獲得することで、感染が広がらなくなる「集団免疫」について、人口の何割が新型コロナウィルスへの免疫を獲得すれば達成できるのか、理論上の計算を行いった。

その結果、人口の 43% が免疫を獲得すれば、それ以上感染が広がらなくなる「集団免疫」を達成する可能性があることが分かった。

具体的な推測の方法について研究グループは、人口を年齢別に 6 つの集団に分けて、それぞれ感染のリスクが異なると想定したうえで、活動の活発さについても 3 つの段階に分け、感染がどのように広がるかを推測したとしている。

従来の推測では 60% の人が免疫を獲得する必要があるとされており、より少ない割合でも獲得できる可能性を示した形となった。

ただ、研究グループは今回の結論について、「精密な予測が目的ではない」としている。

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いやいや、一番感染が多いアメリカでも 10% 前後なのに・・・(笑)

更に、抗体が減少するのであれば、集団免疫もあったものではないのだが・・・ε=┏(; ̄▽ ̄)┛

さてさて、抗体が減少するのであれば、集団免疫もあったものではないのだが・・・(笑)。

70 回にわたり、新型コロナウィルスに関しての寄稿をしてきたが、感染動向のみを月曜日に公開し、一旦、休憩することにする。

もちろん、気になるニュースがあれば、随時、挙げていくことにする。