前回の続き・・・。
『ヒマラヤの風にのって』を、私は、東京へ向かう飛行機の中で読み始めた。
吉村さんらしく、自身を冷静に観察した文体で書かれていた。
病状や治療法、その時折の心情やそして家族の愛情もリアルに表現されて・・・。
読み進んでいくうちに、不覚にも、涙が溢れてしまった。
キャビン・アテンダントに悟られないように、窓の方を向きながら、涙を拭きつつ読んだ。
残念ながら、入院したときには、手の施しようがない状態で、緩和ケアしかなかったようである。
それでも、逆に、抗がん剤を投与することができなかったお陰で、『ヒマラヤの風にのって』の執筆も出来て、最期まで作家として、生きられた訳だから、ある意味良かったのかもしれない・・・。
本書は、死を受け入れた本人と家族が、死と明るく向かいあえることの実証でもある。
吉村さんは、禁止三箇条なるものを作っていた。
“泣くこと、悔やむこと、思い出話をすること”
吉村さんに言わせれば、これらは余命幾ばくも無いものにとって、何ら価値を見いださないかららしい・・・。
そして、病状に関しての情報を、本人を含めた家族全員が100%共有したいということを医師に伝えていた。
そうすることによって、家族がひとつのチームになって、支え合うことが出来ると信じたからだ。
しかし、あとどの位、生きられるかということは聞かないとも決めていた・・・。
“リビング・ウィル”という言葉を知っているだろうか?
“生前の意志”というものなのだが・・・。
吉村さんは、3つのことを娘さんに伝えている。
『戒名をつけないこと。』
『墓に入れないこと。』
『死に装束ではなく、普段着のまま、火葬すること。』
戒名に関しては、吉村さんは、無宗教ということに誇りを持ち、戒名ではなく、吉村達也のまま死ぬということらしい・・・。
墓に関しては、この本のタイトルに由来することなのだが、吉村さん家族が永年飼っていた愛猫のヒマラヤン(ショコラン)が、吉村さんが他界する前に亡くなったのだが、その猫のお骨を、ヒマラヤに散骨したいと決めていたため、自身も亡くなったときは、ヒマラヤに一緒に散骨して欲しいということらしい・・・。
死に装束に関しては、幽霊のコスプレのような白い着物ではなく、娘さんからプレゼントされた上下の服で、普段着のまま送って欲しいということらしい・・・。
実は、5月6日に紹介した近藤誠氏著の『医者に殺されない47の心得』の巻末にも近藤氏のリビング・ウィルが書かれている。
少し紹介してみよう・・・。
『救急車は呼ばない。』
『人工呼吸器をつけない。』
『自力で飲食出来ないなら、無理に口に入れない。』
『延命治療をしない。』
『痛みで苦しんでいるのであれば、モルヒネ等の痛みを取る緩和ケアを喜んで受ける。』
もちろん、本文は、全て丁寧に、「~しないで下さい」「お願いします」等の言葉で表現されている。
実は、私もこの著を読んで、事務所のPCには、リビング・ウィルを残している。
どういう状態で、死を迎えるのかは判らないが、自分の思う死に方をしたいと思うのであれば、この意思表示は残しておいた方が良いのではないだろうか???
進行がんあるいは完治の望めない病気になったとき、吉村さんの死との向き合い方は、非常に参考になると思う。
開き直って、全てを環境回復サロンに委ねるってのも、良いのでは・・・( ̄ー ̄)ニヤリ
興味がある方は、是非、ご一読を・・・。