前回の続き・・・。
《造血幹細胞移植》
1.造血幹細胞移植とは
・血液は「血球」と「血漿(けっしょう)」という細胞成分から成り立っている。
・血球には赤血球・白血球・血小板の 3 種類の細胞があり、骨の中心部にある「骨髄」という組織でつくられている。
・造血幹細胞は骨髄の中で血球をつくり出すもとになっている細胞である。
・血漿は、血液から血球を除いた液体成分のことである。
・造血幹細胞は骨髄の中で盛んに細胞分裂を行い、赤血球・白血球・血小板に成長する。
・造血幹細胞がさまざまな細胞に成長する過程を「分化」と呼び、一方で、造血幹細胞には、細胞分裂によって自らと同じ細胞をふやす「自己複製」という能力もある。
・このように自己複製造血幹細胞は、さまざまな細胞に「分化」できる性質と、「自己複製」によって増殖し数を維持できる性質とを兼ね備えている。
【造血幹細胞】
2.造血幹細胞移植とは
・‟造血幹細胞移植”は、通常の化学療法や免疫抑制療法だけでは治すことが難しい血液がんや免疫不全症などに対して、完治させることを目的として行う治療である。
・通常の治療法に比べて、非常に強い副作用や合併症を生じることがあるため、‟造血幹細胞移植”を行うかを決定する際には、患者さんごとに、慎重な検討がされる。
・‟造血幹細胞移植”では、大量の化学療法や全身への放射線治療などからなる移植前処置のあとに、自分またはドナーから事前に採取した造血幹細胞を点滴で投与すり。
・血液やリンパのがんなど化学療法や放射線治療が効きやすいがんが治療の対象になる。
・移植前処置の目的は、腫瘍細胞を減少させ、患者さん自身の免疫細胞を抑制することである。
・これによって、移植された造血幹細胞が患者さんの骨髄に生着(=根付き)し、正常な造血機能が回復することが期待できまる。
・骨髄に生着した造血幹細胞は、そこで血液細胞を造るようになる。
・また、ドナーから提供された造血幹細胞を移植する同種造血幹細胞(同種移植)の場合は、ドナーのリンパ球が患者さんの腫瘍細胞を攻撃するも移植片対白血病効果( GVL 効果)も期待される。
3.造血幹細胞移植の種類
・‟造血幹細胞移植”にはさまざまな種類があり、移植前処置の種類・患者さんとドナーとの関係性・移植に使用する細胞などによって分類される。
・それぞれに特徴(長所・短所)があり、患者さんとドナーそれぞれの立場から総合的に最もよいと考えられる移植方法が選択される。
1⃣ 移植前処置の種類による分類
ⅰ.) 骨髄破壊的移植(フル移植)
・大量化学療法や全身への放射線治療などからなる‟強力な”移植前処置のあとに、造血幹細胞を投与する治療である。
・‟強力な”移植前処置を行うため、副作用や合併症が起きやすく、実施には制限がある。
・通常、 50 ~ 55 歳以下で、全身状態が良好な患者さんにのみ適応となる。
ⅱ) 骨髄非破壊的移植(ミニ移植)
・骨髄非破壊的移植(ミニ移植)では、フル移植よりも強度が‟弱い”移植前処置を行ったあと、造血幹細胞を投与する。
・ドナーのリンパ球が患者さんの腫瘍細胞を攻撃する移植片対白血病効果( GVL 効果)が得られると考えられるが、フル移植に比べて、抗腫瘍効果や免疫抑制効果が弱いため、再発や、ドナー由来の移植片への拒絶が増加する可能性がある。
・移植前処置による副作用や合併症が少ないため、高齢者や臓器に障害がある患者さんにも適応になることがある。
2⃣ ドナーとの関係性による分類
ⅰ ) 自家造血幹細胞移植(自家移植)
・患者自身の造血幹細胞をあらかじめ採取・保存しておき、大量化学療法による移植前処置後に投与する方法である。
・免疫反応に関連した合併症である移植片対宿主病( GVHD )のリスクがないのが利点だが、移植片対白血病効果( GVL 効果)は期待できない。
ⅱ ) 同種造血幹細胞移植(同種移植)
・「同種」とは「同じ種類の生物」という意味で、ドナーから提供された造血幹細胞を移植する方法である。
・大量の化学療法や全身への放射線治療からなる移植前処置のあとに、ドナーから採取した造血幹細胞を移植する。
・幹細胞ドナーは、患者さんとの間で白血球の型である HLA (※注 1 )の一致度が高い方が条件がよいとされる。
(※注 1 ) 後述
・ドナー候補は、まず HLA の合っている確率が高い血縁者(兄弟、姉妹、親子など)から探し、見つからないときは非血縁者(骨髄バンクドナーや臍帯血ドナー)から探す。
【自家移植と同種移植の違い】
次回へ・・・。