「真実の口」2,087 ‟がん”という病 ㉞~がん治療による様々な症状・脱毛編~

前回の続き・・・。

《がん治療による様々な症状》

【 全身に起こる症状】

1⃣ 脱毛

( 1 ) 脱毛について

・‟がん”の治療に伴って、髪のほか、眉毛、まつ毛、鼻毛、ひげ、わき毛、陰毛などが抜けることがある。

・その程度は治療法や使われる薬剤によって異なり、脱毛が起きないこともある。

・治療前に担当医や薬剤師に脱毛が起こるかどうかや、脱毛の程度などを確認しておくとよい。

・脱毛は治療の一時的な副作用であり、多くの場合、治療が終われば再び生えてくる。

・‟がん”の治療に使う薬による脱毛は、全身に起こることがあり、また、個人差はあるが、治療を開始してから 1 ~ 3 週間後に毛が抜け始める。

・多くの場合、原因となっている治療後 3 ケ月ほどで数ミリ程度の長さに生えそろってくる。

‟放射線治療”による脱毛は、照射した部位だけに起こり、また、個人差はあるが、治療開始から 10 日程度で毛が抜け始め、多くの場合は治療終了から 2 ~ 3 ケ月で数ミリ程度の長さに毛が生えそろう。

( 2 ) 原因

・パクリタキセル、ドキソルビシンといった細胞障害性抗がん薬などのがんの治療に使う一部の薬や、‟放射線治療”が原因となって起こる。

・細胞分裂が活発な毛根の細胞は薬の影響を受けやすいため、毛の成長に問題が生じて脱毛が起こる。

・脱毛の程度やスピードには個人差があり、必ずしもすべての毛が抜けてしまう訳ではない。

・薬の中でも、脱毛が起こりやすい薬と脱毛が起こりにくい薬があり、使用量、使用スケジュールによって、脱毛の程度は変わる。

‟放射線治療”による脱毛は、照射した放射線が皮膚を通過するときに毛根の細胞がダメージを受けることによって起こる。

( 3 ) 脱毛が起きた時は

・髪が抜け始める時期には、頭皮が引っ張られるような痛み、かゆみなどの症状が出ることがあるが、多くは一時的なものなので心配はない。

・頭皮の状態を確認し、実際に頭皮のトラブルが起こっている場合には、担当医や看護師、薬剤師に相談すると良い。

・‟がん”の治療薬の点滴中に、脱毛を抑えるために、キャップを頭に装着して頭皮を冷やす頭皮冷却装置を使用している施設もあるが、 2020 年 2 月現在、公的医療保険の適用外である。

【頭皮冷却療法】
頭皮冷却療法
参考:抗がん剤の治療中に発毛~頭皮冷却療法の体験談~

( 4 ) 本人や周囲の人が出来る工夫

~脱毛前~

・脱毛を防ぐ確実な方法はないが、‟がん”の治療方法を決めてから実際に毛が抜け始めるまで数週間あるので、その間に外見の変化に備えることができる。

・抜けた髪の毛が絡まらないように、あらかじめ短く切っておく人もいるし、長いままにしておく人もいる。

・ウィッグ(かつら)や帽子を使うのであれば、生活スタイル、好み、予算などに合わせて、自分らしくかぶれるものを選んでみよう。

・‟がん”患者へのウィッグの購入費助成を行っている自治体もある。

・脱毛が始まる前に、自分の髪型や顔の写真を撮っておくと、脱毛後に眉毛を描くときの参考になる。

~脱毛中・脱毛後~

●脱毛時の洗髪・ヘアケアの工夫

・髪の抜け始めは、バンダナや室内でも利用できる柔らかい素材の帽子が便利であり、外見的なカバーだけでなく、床に髪の毛が落ちるのを防ぎ、布団や枕に髪の毛がつきにくくなる。

・髪の毛が抜けてから頭を洗うときには、今まで使っていたシャンプーのほか、顔や背中からのつながりで洗顔料やボディーソープを使うこともできる。

・洗髪後はタオルで軽く押さえて水分を吸収させ、ドライヤーで乾かしても構わない。

・発毛剤や育毛剤を使いたいという人もいるが、 2020 年 2 月現在、脱毛の予防や期待するような再発毛を促す効果が十分に確認された製品は今のところない。

●眉毛やまつ毛が抜けたときの工夫

・眉毛やまつ毛がないと顔の印象が変わって見えることがある。

・脱毛後は眉の位置がわかりにくいので、例えば脱毛前に撮った自分の顔の写真を参考に、顔と眉のバランスを確認し、アイブロー(眉ずみ)で眉を描くとよい。

・まつ毛が抜けたときにはアイシャドーを使うなど、化粧の工夫でカバーすることができ、また、フレームの太い眼鏡やサングラスをかけると脱毛が目立たなくなる。

・まつ毛がないと目にごみが入りやすくなり、外出時には眼鏡をかけるのも 1 つの方法である。

●毛が抜けたときの工夫

・鼻毛がないと突然鼻水が出たり、鼻の中が乾燥し粘膜が痛みやすくなったりするので、外出時はマスクを使用するのも 1 つの方法である。

~再び毛が生えてきたら~

・再び毛が生えてきたときには、柔らかいくせ毛が生えてくる場合があるが、しばらくすると以前の毛質に近い毛が生えてくる。

・くせ毛を伸ばしたり白髪を染めたりしたい場合は、パーマ剤や染毛剤の使用に適した十分な長さに髪が伸びてから行うことができ、その際には、過去にパーマ剤や染毛剤によるアレルギーや皮膚のトラブルがない、頭皮に湿疹がない、パッチテストで異常がないなどの使用条件を満たすことを確認したうえで、治療前に使用していた製品を使うのが安心である。

・頭皮にパーマ剤や染毛剤がなるべく付着しないようにするため、自分で行うのではなく、美容師や理容師に施術してもらうことをお勧めする。

・施術後、頭皮にトラブルが生じた場合には、速やかに皮膚科専門医を受診する。

( 5 ) こんなときは相談する

● 脱毛について不安や悩みがあるとき、困ったときなどは、医師や看護師、薬剤師、がん相談支援センターの相談員に相談する。

次回へ・・・。