前回の続き・・・。
《がん治療による様々な症状》
【 全身に起こる症状】
3⃣ しびれ
( 1 ) しびれについて
● しびれは、末梢神経障害の 1 つで、‟がん”の治療中に多くみられる症状である。
・手足がビリビリ、ジンジンする(感覚がおかしい)
・何かに少し触れただけで痛くてビリッとする(感覚が強い)
・手足に力が入りにくい
・手袋をはめているような感じがする(感覚が鈍い)
・・・等々、症状は多岐にわたる。
・衣服のボタンが留めにくくなった
・つかんでいた物をよく落とすようになった
・文字が思うように書けなくなった
・うまく歩けなくなった
・つまずくことが多くなった
・飲み込むのが困難になった
・・・等々の変化も、しびれによって起こっている場合がある。
● 末梢神経障害には他にこのような症状もみられる
・手足が痛い
・手足が燃えるように熱い
・指先が冷える
・腕の感覚がない
・足の裏がふわふわして歩きにくい
・うまく物をつかめない
・口周囲のしびれ
・歯の知覚過敏
・食事がおいしくない
・のどが締め付けられる感じがする
・耳がきこえにくい
・しびれや痛みのため夜眠れない
・便秘、尿が出ない
( 2 ) 原因
・しびれの原因は、‟がん”による神経の圧迫や‟がん”の治療に使われる薬の副作用などさまざまである。
・しびれが起こりやすい薬として、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ボルテゾミブなどが知られている。
・‟がん”以外の原因でしびれが起こったり、悪化したりすることもある。
( 3 ) しびれが起きた時は
・‟がん”の治療に使われる薬の副作用によるしびれに対して、有効な予防法や治療法は十分に確立されてない。
・しびれを和らげるために、原因と程度に応じた薬を使うことがある。
・しびれに痛みを伴う場合は、鎮痛薬(痛み止め)を使うこともある。
・‟がん”の治療に使われる薬の副作用によりしびれが起きた場合、症状の程度によっては治療の効果を考えながら治療法の変更(薬の減量や変更、休薬など)を検討することもあり、その際には、しびれによる生活への影響などを担当医と相談しながら慎重に決めていく。
・‟がん”の治療に使われる薬による末梢神経障害などの場合では、しびれを和らげるための薬による治療やがんの治療法の変更を試みても効果が出ず、症状が長く続くこともある。
・担当医、薬剤師、看護師に相談しながら、しびれとの付き合い方を考えていった方が良い。
( 4 ) 本人や周囲の人が出来る工夫
~血行改善のための工夫~
・血行をよくするとしびれが悪化しにくいことがある。
・入浴中などに患部を優しくさするようにマッサージしたり、手のひらや足の指を閉じたり、開いたりすると良いとされている。
・衣服や靴下はきつすぎないものを選ぶ。
・温める(厚手の手袋や靴下の着用など)あるいは冷やす(保冷剤などを使ってしびれている箇所にあてるなど)ことが有効な場合もある。
・ただし、冷やすことで症状が悪化する場合もあるため、冷やしすぎないように心がける。
・‟がん”の治療に使われる薬の副作用である場合などは、こうした対処法を試みても効果が出ない場合もある。
~安全に暮らすための配慮~
・しびれによって熱さ冷たさを感じる感覚が鈍くなり、触れている物が熱いことに気付かず、やけどしてしまうことがあるので、鍋ややかんなど熱い調理器具をつかむときには、鍋つかみなどを使って直接触れないようにする。
・やけど、特に低温やけどに注意し、湯たんぽは低温で短時間の使用にとどめたほうがよい。
・冷たいグラスなど、しびれが強く持てないときは落とす場合があるので注意する。
・運動神経や感覚神経が鈍くなり、筋力も低下するため、転倒やけがが起こりやすくなるので、屋内外の階段や段差、すべりやすい敷物には注意する。
・できるだけ脱げにくい履物(かかとのある靴など)やすべり止めのついている履物を使用し、つまずきやすい物は床に置かないなどの配慮も大切である。
~日常生活の不便さへの対応~
・衣服のボタンを面ファスナーにすると、着替えがスムーズに行えるようになる。
・ペットボトルのフタはオープナーやタオルを使って開けたりするなど工夫する。
( 5 ) こんなときは相談する
● これまでのしびれと違う感覚や変化があった場合は、担当医に相談する。
● 医師に相談しにくい場合は看護師や薬剤師に伝える。
● 適切な治療やサポートを受けるためにも、しびれのために日常生活でどんなことに困っているのかを具体的に伝える。
● 自身の生活のためにも遠慮なく伝えることが大切である。
〔 ご家族や周りの方へ 〕
● 少し手を借りることで作業が楽になることが多いため、患者に手伝えることがないか聞き、協力するよう心がける。
● しびれによって、つまずくことが多くなったりしても、本人はそのような変化に気付いていなかったり、気付いていても我慢していたりすることもあるので、家族や周囲の人は日頃から患者の様子に注意し、変化がみられた場合は担当の医師に相談する。
次回へ・・・。