前回の続き・・・。
《がん治療による様々な症状》
【体の一部に起こる症状】
4⃣ 吐き気・嘔吐
( 1 ) 吐き気・嘔吐について
● 吐き気・嘔吐は‟がん”患者の 40 ~ 70% にみられる症状である。
● ‟がん”の治療に用いる薬の副作用として起こるときには、治療から数時間以内に起こることもあれば、 1 日以上たってから起こることもある。
● 吐き気・嘔吐が続くと飲食が十分にできなくなり、暮らしの楽しみが減るとともに、全身の状態が悪くなり、治療を続けることが難しくなる。
( 2 ) 原因
● ‟がん”治療中の吐き気・嘔吐の多くは、‟がん”の治療で用いる薬や麻薬などその他の薬で起こる。
● また、‟手術”や‟放射線治療”によって起こる場合もある。
● その他、‟がん”が消化器や脳に影響を与えて吐き気や嘔吐を起こす場合や不安による場合などもある。
● また、原因は必ずしも 1 つではなく、複数の原因によって起こることもある。
( 3 ) 吐き気・嘔吐が起きたときには
● 吐き気を抑える薬(制吐薬)で予防したり、軽くしたりすることができる。
● さまざまな種類の制吐薬があり、原因や症状に合わせた薬や治療法が選ばれる。
● 吐き気・嘔吐が起こりやすい抗がん治療を始める前には、予防的に制吐薬が処方される。
● 不安や緊張などが原因となって起こる吐き気・嘔吐には、心や体をリラックスさせるために抗不安薬と呼ばれる薬が処方されることがある。
( 4 ) 本人や周囲の人が出来る工夫
~ 生活環境の工夫 ~
● 食べもの、化粧品、芳香剤などのにおいが、吐き気・嘔吐を引き起こすことがあので、においの強いものを患者の周りにおかないよう配慮する。
● 部屋ににおいがこもっている場合は、窓を開けて空気を入れ替え、できるだけ快適に過ごせるようにする。
~ 食事の工夫 ~
● 一般に、胃の中に食べものがとどまっていると吐き気・嘔吐が起こりやすくなるため、なるべく消化のよい食べものを選ぶ。
● 炭水化物を多く含む食べもの(ご飯、麺など)は消化が早く、胃の中にとどまっている時間も短い傾向がある。
● 一度に多くを食べようとせず、少量ずつ小分けし、数回に分けて食べやすいようにするといった工夫も大切である。
● 炊き立てのご飯のにおいで吐き気を感じることがあるので、冷凍したご飯を電子レンジで温めると、においを抑えることができる。
● また、温かいものほどにおいを感じやすいため、湯気のでない温度がよいといわれている
● 食欲がないときは、冷たいもの、のどごしのよいもの、やわらかいもの、においの少ないもの、やや酸味のあるもの、時には炭酸飲料などがお勧めである。
● 食物アレルギーや糖尿病などの‟がん”以外の病気をおもちの場合には、医師や栄養士に相談していくとよい。
~ 姿勢や服装の工夫 ~
● 症状に応じてクッションなどを用いて体を起こし、楽だと感じる姿勢をとる。
● 衣類によって体が締めつけられると、吐き気・嘔吐を引き起こしやすくなる。
● 特におなかの周りを圧迫しないようにゆったりとした服装を心がける。
~ うがい、口腔ケア ~
● 口内を清潔に保つことは大切である。
● うがいや歯磨きによって吐き気・嘔吐をもよおすときには、少量の冷水などで数回に分けてうがいを行うなどの工夫をするとよい。
~ 便秘の時には ~
● 便秘が吐き気・嘔吐に影響していることもあるため、便秘が続いていたり、便秘ぎみの場合は、医師や薬剤師、看護師と相談のうえ、下剤で対処したり、できる範囲で体を動かしたり、水分をとったりしてみるとよい。
~ 家族や周囲の人による支え ~
● 症状があるときは、周囲の人によって不快感のない程度に背中をさすったり、ゆっくりと声をかけたりすることで、苦痛や不安が軽くなることがある。
( 5 ) こんなときは相談する
● 食事がとれない場合、特に、水もとれなくなってしまったときは、必ず、看護師や医師に相談する。
● 処方された薬に疑問や不安を感じた場合も、自分の判断で薬をのむ量を減らしたりやめたりせずに、医師・看護師・薬剤師などに相談する。
● 医師や看護師などの医療者に自身の状態を伝えることは大切である。
● 周囲の人に協力してもらうなどして、吐き気・嘔吐の状況を記録(いつ、どんなときに)しておくとよい。
次回へ・・・。