「真実の口」2,101 ‟がん”という病 ㊽~がん治療による様々な症状・食欲がない、食欲不振編~

前回の続き・・・。

《がん治療による様々な症状》

【体の一部に起こる症状】

5⃣ 食欲がない・食欲不振

( 1 ) 食欲不振について

● 食欲不振は、多くの人が経験する症状である。

● その程度や期間には個人差がある。

● 食べる量が減ることが一つの目安になるが、食欲がなくても無理に食べている場合などにはあまり変化しないこともある。

( 2 ) 原因

● 食欲がなくなる原因はさまざまで、いくつかの原因が重なっていることもある。

● ‟がん”そのものや、‟手術”‟薬物療法”‟放射線治療”などの治療の影響

● 体の症状や心の状態の影響
・胃炎、吐き気、便秘、下痢などの消化器系の症状
・痛み、息苦しさ、飲み込みにくさなど
・味覚の変化、口内炎、口内の乾燥など
・不安、抑うつ、せん妄、ストレスなど

● 食事をする環境
・食卓やベッド回りなどの環境
・衣類やにおいなど

( 3 ) 食欲がないときには

● 食欲のなくなる期間や対処法は原因によって異なるので、問診や血液検査、画像検査などにより原因を調べる。

● 治療が原因の場合には、治療の内容やスケジュールから症状が出る時期を予測して、食事や日常生活の工夫をしていく。

● 症状が出やすい時期の目安は、‟手術”では麻酔の影響や痛みが残る手術直後、‟薬物療法”では治療後 1 週間程度、‟放射線治療”では治療開始 10 日ごろから治療後数ケ月程度で、その後は徐々に改善することが多い。

● 治療の詳細によっても異なる、個人差もあるので、担当医や看護師、薬剤師に確認すると良い。

● 不安や抑うつが原因と診断された場合には、抗不安薬抗うつ薬が処方されることもある。

● その他、症状や状況に応じて、栄養や食事、 口腔 ケア、生活環境など、できる工夫について具体的なアドバイスを受けることもできる。

( 4 ) 本人や周囲の人が出来る工夫

● 毎日十分に食べることができなくても、また一日の中で栄養のバランスが取れなくても、体調を管理することはできる。

● 栄養や量、規則正しさにこだわらず、食べたいとき、食べられそうなときに、そのとき食べたいものを口にするようにする。

~ 食べ物の工夫 ~

● 冷たいもの、のど越しの良いもの、やわらかいものなどが比較的食べやすいとされている。
・麺類
・茶わん蒸し
・アイスクリーム
・ゼリー
・果物

● できれば、少量でも栄養価の高いもの(高カロリー・高タンパク・ビタミンの多いもの)がお勧めである。

●栄養ゼリーなどの栄養補助食品を試してみるのもよい。

~ 食ベ方の工夫 ~

● 「 1 日 3 回」というような食事のパターンにこだわる必要はない。

● 食べたくなったらいつでも食べられるように、保存のきくものを小分けしておいたり、手早く調理できるものを準備しておいたりして、少量ずつ数回に分けて食べてみる。

● 糖尿病など‟がん”以外の病気がある場合には、担当医や看護師、栄養士に相談する。

● 少量をきれいに彩り良く盛りつけると、見た目にも食べやすく感じることがある。

● 楽な姿勢をとり、心身ともにリラックスして食べることを心がける。

● 可能であれば、食事前にストレッチをするなど、体を軽く動かしてみるのもよい。

● また、温かいものほどにおいを感じやすいため、湯気のでない温度がよいといわれている

● 食欲がないときは、冷たいもの、のどごしのよいもの、やわらかいもの、においの少ないもの、やや酸味のあるもの、時には炭酸飲料などがお勧めである。

● 食物アレルギーや糖尿病などの‟がん”以外の病気をおもちの場合には、医師や栄養士に相談していくとよい。

~ こんな時には ~

‟薬物療法”の影響で食欲がないときには、酢の物やすし飯、果物など酸味のあるものを食べやすいと感じることが多いようである。

‟放射線療法”の影響で唾液の量が減っているときや、唾液が出にくい朝の時間帯には、のどを通りやすいスープや汁気の多い食べ物などがお勧めである。

● 食べ物のにおいが気になるときには、冷やす、室温程度に冷ますなどの工夫で食べやすくなることがある。

● 吐き気などの症状のあるときには、無理に食べる必要はない。

~ 周囲の人へ ~

● 周囲の人は心配して、「何とか食べてほしい」という気持ちになるかもしれないが、食べてほしいという強い気持ちや期待、言葉などが、食べた方が良いとわかっていても食べられない本人の負担になることもあることを理解する。

● また、料理に手間やお金をかけすぎると、食べてもらえなかったときの落胆も大きくなりがちなので、簡単な調理法、手軽な市販品、冷凍食品などを取り入れながら、食べられるものを一緒に探していった方が良い。

( 5 ) こんなときは相談する

● 食べ物や水分をとることができない場合や、 1 日に何度も吐いてしまうような場合には、すぐに担当医や看護師に相談する。

● 欲が落ち、体重が減っていると感じる場合には、体重を定期的にはかって記録しておき、診察のときなどに医師や看護師に伝える。

● 栄養状態に不安があるときや、不安やストレスから食欲が出ないと感じるときなどには、ひとりで抱え込まず、担当医に相談して専門家を紹介してもらうようにする。

● 栄養士は、栄養状態を確認したうえで、食材の選び方や調理法の工夫などの具体的なアドバイスをしてくれるので、自分にあった工夫をすることで、症状が改善してくることもある。

● また、カウンセラーや精神科医のような心の専門家と話をすることで、気持ちが楽になることもある。

● 相談先や相談の仕方がわからないときには、まずはがん相談支援センターに相談してみると良い。

次回へ・・・。