前回、 After Corona ではしかを取り上げた。
今回は、これから暑くなると増えてくる‟トコジラミ”を取り上げてみたいと思う。
‟トコジラミ”は、「南京虫(ナンキンムシ)」とも呼ばれ、かつては都市の住宅密集地域で一般的な虫だった。
その後、殺虫剤の普及とともに 1970 年代には激減したが、近年、再び‟トコジラミ”の被害が増加しているようである。
「シラミ」と命名されているが、シラミ目ではなく、カメムシ目トコジラミ科の昆虫である。
捕食性のカメムシであるマキバサシガメ科などが近縁にあたるようだ。
トコジラミ科の昆虫は全て吸血性であるが、そのほとんどは主に鳥類やコウモリ類を宿主とする。
一方、今回取り上げるトコジラミ科トコジラミ属トコジラミおよび近縁種のタイワントコジラミのみが、ヒトを主な吸血源とするそうだ。
同じカメムシ目の昆虫にはシャーガス病を媒介するオオサシガメ類が存在するらしい。
しかし、現在のところ‟トコジラミ”が媒介する伝染病は確認されていないので、取り敢えず安心しても良いと思う。
ただ、例として、‟トコジラミ”の体から B 型肝炎ウィルスなど幾つかの人間の病原体を検出した例もあるらしいが、いずれも実際にこれらの病原体を媒介しているという証拠は見つかっていない。
こんな‟ヤツ”である。
成虫は、 5 ~ 7mm 程度に成長する。
不完全変態で、幼虫と成虫はほぼ同じ形をしている。
また成虫も翅(はね)を持たない。
体色は吸血前(画像右)は薄黄色からやや赤褐色を呈すが、吸血後(画像左)は吸血した血液が透けて見えるためより濃い茶色となる。
成虫は卵形で、背腹軸に扁平である。
‟トコジラミ”は、雄雌ともに吸血し、幼虫・成虫にかかわらず、その全生存期間を通じて栄養分を血液に頼るそうだ。
成虫にいたるまで 5 齢までの幼虫期を経るが、幼虫の各齢期に 1 回以上の吸血を必要とするらしい。
孵化から成虫まで約 2 ~ 7 週間かかるが、これは吸血原の有無や温度に大きく依存するるという。
飢餓に強く、無吸血でも 2 ~ 3 ケ月は生存し、実験室内での実験ではあるが 18 ケ月間も無吸血で生存したという記録があるというから実に恐ろしい・・・Σ(・ω・;)
25℃ くらいの暖かい場所を好むが、 0℃ で 6ケ月、 10℃ で 2 年近く生存したという報告もあるほど寒さにも強い・・・Σ(||゚ω゚)ヒィィィィ
主な発生時期は 6 ~ 9 月と言われているが、暖房が発達している日本の室内では 1 年中生息でき、冬でも普通に発生が見られるそうだ・・・ΣΣ(゚ω゚lll)ガガーン!!
‟トコジラミ”は、通常は夜間に吸血するが、厳密には夜行性ではなく、暗ければ昼間でも吸血することがある。
普段は太陽光や照明を嫌い、壁の割れ目など隙間に潜んでいる・・・|壁|ω・`)y─ o○(監視㊥)
トコジラミは翅(はね)を持たないため、自力では長距離を移動することはできない。
しかし、人間の荷物または輸送される家具に取り付くことで、その分布を拡大する。
つまり、コロナ後で人の移動が活発になった今が勢力拡大の好機という訳である。
近親交配を日常的に行っており、一匹の妊娠したメスがいれば、その子供達同士で交尾し、大規模に繁殖をすることもできるらしい。
‟トコジラミ”に刺咬されると、唾液が宿主の体内に注入され、この中に含まれる物質が引き起こすアレルギー反応で激しいかゆみが生じる。
一般的に、刺されると肌に 2 つの赤い痕跡(刺し口)が残ると言われるが、実際には刺し口は 1 つであることの方が多いらしい。
かゆみは刺された当日よりも 2 日目以降の方が強い。
刺咬の痕跡は 1 ~ 2 週間以上は消えない。
‟トコジラミ”と同様に、‟ダニ”も刺咬されると、激しいかゆみが起こるが、‟トコジラミ”は肌の露出している手足を刺咬し、‟ダニ”は衣服の中の皮膚が柔らかい部位を刺咬する。
結構目立つので、女性は特にいやかもしれない・・・。
前述したが、 1970 年代には激減したが、近年、再び‟トコジラミ”の被害が増加しているのは何故か?
10 年ほど前から殺虫成分に耐性を持った“スーパートコジラミ”が現れ、被害が拡大しているというのだ。
長年にわたってトコジラミなどの吸血性昆虫を研究してきたこの分野の研究の第一人者である兵庫医科大学皮膚科学・夏秋優教授を以下のように警鐘を鳴らしている。
夏秋教授:
「新型コロナの影響で、海外からの観光客や国内の旅行者が減るにつれて、‟トコジラミ”の拡大も例年に比べて落ち着いていました。しかし、去年の秋ごろから再び大勢の人が行き来することにより、例えば、荷物に紛れ込んだ‟トコジラミ”が各家庭に運ばれ、そして別の場所へと移りました。今後は、さらに広がっていくと思います。」
上のグラフは、都内の害虫駆除の専門業者などで作る団体に寄せられた被害の相談件数である。
‟トコジラミ”が、再び拡大し始めていることが一目でわかる。
さあ、どうする?
次回へ・・・。