「真実の口」690 余談ⅷ

15回も続けたので、少し、道草を食ってみる・・・。

世間では、小学館から発行されている週刊ビッグコミックスピリッツに掲載中の『美味しんぼ』が、話題を集めている。

因みに、『美味しんぼ』は、原作:雁屋哲氏、作画:花咲アキラ氏によるグルメメ漫画の草分け的な存在である・・・。

作品内で使われる“究極”という言葉は、1986年の「新語・流行語大賞」新語部門金賞を受賞したので、作品は知らなくても、当時、究極の00という言葉が流行ったので、「あぁ~。」と思い出す人もいるのではないだろうか?

さて、問題になっているのは、2014年22・23合併号に掲載された「第604話 福島の真実その22」に描写された内容である・・・。

新聞社に勤める登場人物が福島第一原発に取材に行った後、疲労感をおぼえたり、原因不明の鼻血を出したりするなど、体調の異変を訴え、更に、前福島県双葉町長の井戸川克隆氏が、「福島では同じ症状の人が大勢いますよ。言わないだけです。」と言うコメントを掲載した場面である・・・。

これに対し、読者や福島県民から、「風評被害を助長する」という批判が寄せられ、特に双葉町からは、小学館似たいして抗議文が届けられている。

更に、石原伸晃環境大臣やその他大勢の閣僚、引いては、安倍晋三首相までもが、「放射性物質に起因する直接的な健康被害の例は確認されていない」、この問題への火消しに躍起になっている・・・。

その翌号では、大阪で受け入れた震災がれきを処理する焼却場近くの住民約800人にも同様の症状が出ているとの事例が掲載され、大阪府及び大阪市へも波紋が広がった・・・。

皆はこの一連の騒動について、どう感じただろうか・・・?

小学館編集部は、問題となる5月12日発売号の「美味しんぼ」の全ページのゲラ(校正刷り)を、発売11日前に環境省にメールで送っている・・・。

これに対し、環境省は、「具体的な内容の訂正要求はしていない」と回答・・・。

しかし、それに関わらず、石原環境大臣は、美味しんぼ批判を繰り返している・・・。

私もこの作品は好きで、飲食店に置いてあったりすると、ついつい手を伸ばしてしまう作品である・・・。

今回、原作者の雁屋哲氏の取材に対しても、「(実際は)取材などしていないのでは?」等々の疑問声も上がっている・・・。

Wikipediaによれば、「連載は取材のため長期休載することがあり、2000年頃からは1年のうち大半を休むことが多くなっており、東日本大震災などの一つの主題を連続で描く時も途中休載することがあり、休載せずに完結することは少ない。」とある。

では、鼻血騒動の真実はどうなんだろう・・・?

以下の論文見て欲しい・・・。

http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/661/661-01.pdf

これは、震災直後、双葉町が福島県外へ町役場ごと避難し、福島県からの援助が少なく、内部被ばく検査を町独自で行うことができず、その測定器を、熊本学園大の中地重晴教授らが、寄贈したことをきっかけに、当時の双葉町長である井戸川克隆氏から、健康管理に関する助言者を依頼され、主に双葉町が実施する町民向けの内部被ばくの測定と健康調査について、アドバイザーとして協力してきた結果を、2013年11月、『水俣学の視点からみた福島原発事故と津波による環境汚染』よいう標題で、中間報告として学術発表した物である・・・。

特に、15~19ページに、双葉町のことが取り上げられている。

~原文そのまま~

『「多重ロジスティック解析を用いた分析結果は,主観的健康観(self-rated health)に関しては、2012年11月時点で、木之本町に比べて、双葉町で有意に悪く、逆に丸森町では有意に良かった。更に、調査当時の体の具合の悪い所に関しては、様々な症状で双葉町の症状の割合が高くなっていた。双葉町・丸森町両地区で、多変量解析において木之本町よりも有意に多かったのは、体がだるい、頭痛、めまい、目のかすみ、鼻血、吐き気、疲れやすいなどの症状であり、鼻血に関して両地区とも高いオッズ比を示した(丸森町でオッズ比3.5(95%信頼区間:1.2,10.5)、双葉町でオッズ比3.8(95%信頼区間:1.8,8.1))。』

これらの中間報告は、現職双葉町長:伊澤史朗氏になってから、行われているものである・・・。

首相を筆頭に閣僚、現職国会議員、はたまた双葉町長は、明らかにして欲しくなかった真実をどこに隠蔽しようとしているのだろうか・・・?

先日、私の所にも、以下のようなメールの問い合わせがあった。

User(以下:U)『子どもがいるため原発事故以来の放射性物質が気になります。えみなプレミアムの製造工場は、どちらにあるのでしょうか?また原材料についても、どちらのものを使っているのでしょうか?』

私:「大変申し訳ありませんが、弊社は東北地方の復旧・復興に対して、支援を続けています。福島に於いても、放射線除去のお手伝いをしている手前、風評被害に間違われるような回答は致しかねます。ただ、お子様がいらっしゃるという事で、ご不安なお気持ちは十分にご理解できます。以下のブログを読んで、抗酸化が放射線の低減にも効果があることをご理解いただければ、少しはご不安も解消されることと思います。http://www.aida-soken.co.jp/cgi/wp/?p=1502

この手の質問に関する回答はいつも同じで、一切、回答しない・・・。

すると、こんな答が返ってきた・・。

U:「私自身、原発により避難をしました。チェルノブイリ事故の前例を見れば、すでに住み続けることが出来る土地ではなく、周囲でもこれからどんどん病気の人間が出てくる事でしょう。少しでも早く逃げれば助かる人間ですら、「風評被害」だから大丈夫だと被曝を続けさせるのはとても気の毒な事だと思います。実際に健康被害が出ていると現地の人間から度々聞くようになりました。本当に被災者や被災地域の支援をなさるのであれば、汚染された地域から離れることをサポートしてくださればと切に思います。」

これに対して、私は回答をしていない・・・。

色んな考えがあっても良いのだが・・・。

私は、現地に入り、この目でこの耳で、福島の現状を体感している・・・。

福島から離れたくても離れられない人、福島産ということだけで、返品扱いを受けても必死に頑張っている人が大勢いらっしゃる状況で、メールだけで、福島で作られているのであれば使わないという姿勢が私には、到底、理解できないからである。

子供のことを心配なのも理解できる・・・。

しかし、それでは、木を見て森を見ずでしかない・・・。

今回の美味しんぼ騒動で、国の姿勢、報道の姿勢、個人の姿勢等々、もう一度、各個人が考える機会を持つ事が出来たのであれば、貴重な一石になったのではと思う・・・。