「真実の口」2,054 リステリア症

リステリア症

聞き馴染みのない名前だが、米ワシントン州では、ここ数カ月に 5 人のリステリア症患者が報告されているらしい。

わずか 5 人なのだが、リステリア菌(リステリア・モノサイトゲネス)への感染で起こるリステリア症のアウトブレイク(集団発生)と認定されるには十分らしい。

州保険局は状況を注視しているそうだ。

州保健局の発表によると、 5 人(男性 2 人、女性 3 人)はすべて入院し、患者たちの症状は重篤状態で、すでに 3 人が亡くなっているというから、実に、おそろしい話である。

タコマ・ピアース郡保健局によると、患者 5 人というのはすでにワシントン州全体の通年の想定患者数の 20 ~ 50% に達しているそうだ。

これを鑑みると、アウトブレイクというも満更大げさではないようだ。

また、これら 5 件の感染例は、全く無関係に発生したものではなく、関連性があるらしい。

4 件はピアース郡内で起きており、残り 1 件も隣のサーストン州で発生している。

全ゲノム解析の結果からは各患者のリステリア菌が似たような遺伝子パターンをしていることがわかっていて、感染源が共通だったことが強く示唆されるそうだ。

ただ、当局は現時点では感染源を突き止められておらず、疑いのある食品の店頭撤去は、未だに出来ていない。

リステリア症は、リステリア・モノサイトゲネス( Listeria monocytogenes )による感染症で、ヒトのほか種々の動物にも認められる人畜共通感染症ということらしい。

また、リステリア菌は、動植物を始め自然界に広く分布しているそうだ。

1929 年、デンマークにおいて、 Nyfeldt によりヒトのリステリア症が初めて明らかにされた。

それ以来、大規模な発生や事例数が少なかったためあまり注目されず、感染経路や疫学的背景など不明な部分が多かったそうだ。

欧米では牛乳、チーズ、野菜、食肉などの食品を原因とした集団発生が 1980 年代になって多数報告されるようになった。

食品が感染源であることが証明された最初の事例は、 1981 年のカナダのコールスローを原因とした集団事例である。

日本で、ヒトのリステリア症が、最初に報告されたのは、 1958 年 8 月に山形県で髄膜炎、 11 月に北海道で胎児敗血症性肉芽腫症を発症した症例がある。

以来、 1970 年代前半まで年間数例の散発例がみられていたが、 徐々に本症に対する関心が高まるにつれて報告数も漸増してきている。

ただ、日本では集団事例の発生はなく、食品が疑われる事例でも感染源や感染経路が明確にされたものもない。

日本の健康人における保菌率は、 1972 年に 0.5% 、 1989 年に 1.3% と報告されている。

また、本菌の宿主域はきわめて広く、ほとんどの動物や種々の環境材料からも分離されることから、様々な食品が汚染される危険性があり、乳、食肉などの動物性食品はこの危険性が高い。

食品の低温流通が進み、食品を長期間保存することが可能となったことも、食品媒介感染症として注目されるようになった要因の一つとして考えられる。

原因になることの多い食品は、ソフトチーズ、ホットドッグ、ランチョンミート、デリミート、デリサラダ、冷製パテ、ミートペースト、冷製の魚介類の燻製などで、これらの食品は、リステリア菌を殺すのに必要な約 74℃ 以上での加熱が施されていない場合が多いためらしい。

パックで売られているホットドッグは、中までしっかり加熱すれば問題ないが、軽く温めるだけでは安心できない。

間違っても、パックの汁をすすってはいけない(笑)

もし、リステリア菌が体内に入ったらどうなるのか?

症状は汚染された食品を口にしてから数時間~ 3 日後に出始めることが多いらしい。

健康な成人では無症状のまま経過することが多いが、稀に、免疫系が正常に機能している人の場合でも、数日間にわたりトイレで長い時間を過ごすこともあるという・・・Σ(`ω´ )マヂデスカ!?

38 ~ 39℃ の発熱、頭痛、嘔吐などがあり、意識障害や痙攣が起こる場合もある。

感染初期には倦怠感、弱い発熱を 伴うインフルエンザ様の症状を示すことがある。

胎児敗血症では、妊婦から子宮内の胎児に垂直感染が起こり、流産や早産の原因となる。

妊婦は発熱、悪寒、背 部痛を主徴とし、胎児は出生後短時日のうちに死亡することが多い。

集団発生の患者は妊婦、胎児、新生児が多く、散発例ではステロイド剤使用者、癌、白血病 などの患者に多い。

更に、リステリア菌が臓器や血流、場合によっては中枢神経系にまで侵入した場合、ある特定の高リスクの集団では、重篤な病状を示すことも多い。

この特定の集団には、妊婦、がんの治療を受けている患者、 AIDS 、臓器移植者、高齢者、乳児などが該当する。

このタイプの病態は、重篤な症状および高い致死率( 20 ~ 30% )を示すという。

妊娠女性は、その他の健康成人と比べてリステリア症への感染率が 20 倍も高くなり、流産や死産の原因にもなるというのだから要注意だ。

また、新生児は低出生体重、敗血症、髄膜炎などを起こすかもしれない。

HIV/AIDS 患者では、免疫機能が正常な人よりも、少なくとも 300 倍も感染しやすくなるそうだ。

潜伏期は通常 1 ~ 2 週間だが、数日から 90 日までの間で変動するそうだ。

今回の米ワシントン州のアウトブレイクでは、罹患した人は 60 ~ 70 代だったようだ。

現在、調査が進められているようだが、原因究明が出来るまでは、予防策としてできることは、通常の食中毒対策と変わらない。

食品中のリステリア菌は、低温殺菌や調理によって死滅するので。

・清潔を保持すること
・生鮮物と調理物とを分けて扱うこと
・調理は徹底して行うこと
・食品を安全な温度に保つこと
・安全な水と新鮮な材料を使用すること

特に、高リスクの人々には、次のことへの注意が必要でえある。

・未殺菌の牛乳から製造された乳製品、総菜や出来合いの肉料理、肉パテやミート・スプレット(ほぐし肉)、低温燻製の海産物(スモーク・サーモンなど)の摂取を避けること。
・製品ラベルに記載されている保管期間と保管温度を読み、慎重に確認すること。
・潜在的に、これらの食品に存在する細菌が(感染の)危険が生じるほどに増殖していないことを確認するために、調理済みの食品のラベルに記載されている消費期限と保管温度を尊重すること。
・食べる前にもう一度調理すること。

日本で、集団感染が無いからと言って、対岸の火事と思わず、注意するに越したことはない。