「真実の口」927 介護・・・3

前回の続き・・・。

毎日新聞では、12月7日の介護殺人事件を調査したものの中から、更に、刻銘に届けるため『介護殺人 殺人事件の「告白」』という特集を全6回に渡り掲載している。

第一回目は、12月7日同日、「妻は認知症 魔の深夜」というタイトルで掲載された。

サブタイトルは、「不眠ドライブ 1ヶ月の末」。

※2012年 地域:兵庫県 加害者:夫(75) 被害者:妻(71)

【介護の状況】:認知症により、深夜から早朝までほとんど寝付かない妻に深夜のドライブを強要され、1ヶ月以上の不眠状態が続き肉体的・精神的に限界を感じた。

記事の内容は・・・。

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男性は、兵庫県明石市で1937(昭和12)年、国鉄職員が父親の家庭に四男として誕生。

中学を卒業して時計職人になり、姫路市の時計店に就職。

知人の紹介で出会った妻と28歳で結婚。

姫路市内にマンションを買い、3人の子を持つ。

昼夜休まずに働き、帰宅後も時計の修理に没頭し、「仕事ばっかりで、家庭をほったらかしにしていた」という。

98年、定年を迎え、ようやく、妻への恩返しをしようと思う。

近くの観光地を巡るため、退職金全額の100万円で車を初めて購入。

新聞配達のアルバイトで費用を稼ぎ、妻と北海道や石垣島を旅行した。

中国やカナダなど海外へも連れて行った。

しかし、09年ごろ、妻の異常な行動が目に付きはじめる。

意味もなくタンスの引き出しを開閉したり、使わないアイロンを用意したりした。

認知症の兆候。

暫く後、症状は急激に悪化。

認知症で人が変わってしまった妻が毎晩、「どっかに連れて行け!」と大声でわめくため、男性は妻を助手席に乗せ、行く当てもなく、車を走らせていた。

寝不足。

ハンドルを握りながら、暗闇に浮かび上がる姫路城を眺めたり、姫路港の先に広がる漆黒の海を見つめたりした。

しんどくなってしばらく路肩に停車していると、妻が目を覚まして怒鳴る。

「走れ!」

「何しとんねん!」

再びアクセルを踏む。

自宅に戻るのはいつも空が白みかけた頃。

なんな毎日が1ヶ月以上続いた8月22日。

午前0時頃、妻が目を覚ます。

意味がわからない言葉で男性を罵倒し続けた。

「お前みたいなもんは帰れ!」

午前2時ごろ。

熱帯夜なので、ベッドに横たわる妻の首に保冷剤を包んだタオルを巻いていた。

男性はそれをつかんで引っ張った。

涙が頬を伝うのを感じながら力強く絞めた。

次回へ・・・。