「真実の口」1,543 新型コロナウィルス・・・75

前回の続き・・・。

前回、国際医療福祉大学の高橋泰教授による「感染 7 段階モデル」を使った一説を取り上げた。

高橋教授によると、「新型コロンウィルスは、暴露した人の 98% が、自然免疫によりウィルスが抑え込まれ自然に治癒し、ステージ 1 かステージ 2 、すなわち無症状か風邪の症状で済み、自然免疫までで終了し、暴露者の 2% 程度は、獲得免疫が出動(抗体が陽性になる)するステージ 3 、ステージ 4 に至るが、サイトカイン・ストームが発生して重症化するステージ 5 に進む人は、極々僅かである。」ということだった。

これを前提に、社会活動を健全な状態に戻していかなければいけないという立場だった。

しかし、新型コロナウィルスに関して、後遺症の長期化が囁かれている。

厚生労働省は、 10 日、新型コロナウィルスから回復した患者計 2 千人を対象に、後遺症の実態を調べる研究を 8 月から始めると発表した。

予防や治療につなげるねらいで、酸素投与が必要だった中等症から重症の患者千人と、軽症から中等症だった患者千人を対象とした 2 種類を予定しているという。

中等症から重症の患者については、退院から 3 カ月後、半年後の自覚症状や肺の機能などを調べる。

軽症から中等症の患者については、退院後にどんな症状が続いたかなどをアンケートし、血液検査などもする。

専門家による研究班で来年 3 月まで実施するようだ。

今後、研究に参加する医療機関を決めるらしい。

中国・武漢から感染が始まり、感染拡大期に、中国では以下のようなデータがまとめられていた。

Characteristics of and Important Lessons From the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Outbreak in China ( February 24, 2020 )

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●症例記録 72,314 件( 2020 年 2 月 11 日時点)

・確定症例: 44,672 ( 62% )
・疑わしい症例: 16,186 ( 22% )
・臨床的診断症例: 10,567 ( 15% )
・無症状の症例: 889 ( 1% )

●年齢分布( N = 44,672 )
・ 80 歳以上: 3% ( 1,408 例)
・ 30 ~ 79 歳: 87% ( 38,680 例)
・ 20 ~ 29 歳: 8% ( 3,619 例)
・ 10 ~ 19 歳: 1% ( 549 例)
・ 10 歳未満: 1% ( 416 例)

●疾患のスペクトル( N = 44,415 )
・軽症: 81% ( 36,160 例)
・中等症: 14% ( 6,168 例)
・重篤: 5% ( 2,087 例)

●到死率
・ 2.3% ( 1,023 / 44,672 )
・ 80 歳以上の患者: 14.8% ( 208/ 1,408 )
・ 70 〜 79 歳の患者: 8.0% ( 312 / 3918 )
・重大なケース: 49.0% ( 1,023 / 2,087 )

●感染した医療従事者
・ 3.8% ( 1,716 / 44,672 )
・そのうち武漢:63% ( 1,080 / 1,716 )
・ 14.8% の症例は中等症または重篤として分類された( 247 / 1,668 )
・死亡: 5 例

COVID-19 は、わずか 30 日で 1 つの都市から全国に急速に広がった。

地理的な拡大と症例数の急激な増加の両方の速さは、中国、特に武漢市と湖北省の保健・公衆衛生サービスに驚愕をもたらした。

疫学的な曲線は、混合した発生パターンを反映している。

初期の症例は、継続的な共通感染源を示唆しており、人獣共通感染の可能性がある華南海産物卸売市場での波及の可能性があり、その後の症例は、ウィルスが人から人へと伝播し始めたために伝播源を示唆している。

(中略)

COVID-19 が発生したタイミングは、中国の旧正月の前であり、中国がどのように対応するかを検討する上で重要な要素であった。

文化的には、旧正月は一年で最大かつ最も重要な祝日である。

多くの人々は、家族が暮らす田舎に戻ることを望むため、この時期に住民や観光客が数十億人の旅行をすることになるが、そのほとんどが混雑した飛行機、電車、バスを利用している。

これは、感染者一人一人が長期間、長距離にわたって多数の親しい人と接触する可能性があることを意味しており、政府は迅速な対応を必要としていた。

しかし、政府の対応の速さだけでなく、その対応の大きさも、休日の移動時間の影響を受けていた。

COVID-19 では、標的となる抗ウィルス薬やワクチンなどの特定の治療法や予防法がまだ利用できないことを知っていたため、中国は伝統的な公衆衛生のアウトブレイク対応戦術である隔離、検疫、ソーシャルディスタンシング、地域封鎖に焦点を当てたのである。

COVID-19 に感染した患者は直ちに既存の病院の指定病棟に隔離され、武漢と湖北で増加する患者の隔離とケアのために 2 つの新しい病院が急速に建設された。

濃厚接触者は、自宅で隔離されるか、特別な隔離施設に連れて行かれ、症状の有無を監視された。

旧正月の祝賀会を含む大規模なイベントはすべて中止され、武漢や湖北省内の都市では交通が制限され、厳重に監視された。

その後、ほとんどすべての交通機関が国家レベルで制限された。

これらの措置はすべて、社会的距離を縮めるためのものである。

さらに、武漢と湖北省の周辺 15 都市の推定 4,000 万~ 6,000 万人の住民は、地域封鎖措置を受けた。

このような伝統的なアウトブレイク対応行動は過去にも成功しているが、これほど大規模なものはなかった。

このような行動が、アウトブレイクに対する合理的で比例した対応であるかどうかについては、いくつかの疑問がある。

これらの措置の多くは市民の自由を侵害するのではないかとの議論もあり、「ドラコニアン」と呼ばれるものもある。

しかし、考慮しなければならないのは個人の権利だけではない。

感染していないが感染の危険性がある人の権利も考慮しなければならない。

これらのアプローチが、感染の減少や死亡の回避という点で効果的であったかどうか、また、これらの潜在的な利益が経済的損失を上回るものであったかどうかは、何年にもわたって議論されるだろう。

(後略)

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そして、今月 9 日、 2 月下旬から 3 月にかけて大規模な流行がみられたイタリアから新型コロナの後遺症 に関する報告がなされた。

Persistent Symptoms in Patients After Acute COVID-19

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イタリアでは、 COVID-19 患者( 2020 年 6 月 3 日時点)で、確定症例 31,845 例のうち 71.4 %の患者に症状が現れた。

一般的な症状として、咳、発熱、呼吸困難、筋骨格系症状(筋肉痛、関節痛、倦怠感)、消化器症状、無気力・嚥下障害などがある。

しかし、回復後に持続する症状については情報が不足している。

本研究では、 COVID-19 からの回復後に退院した患者を対象に、症状の持続性を評価した。

【方法】

パンデミックの衰退期に入り、 2020 年 4 月 21 日からイタリアのローマにあるFondazione Policlinico Universitario Agostino Gemelli IRCCSは、 COVID-19 から回復して退院した人を対象とした急性期外来を開設した。

世界保健機関( WHO )の検疫中止基準を満たした全患者を追跡調査した。

・ 3 日間連続無発熱
・その他の症状の改善
・重症急性呼吸器症候群コロナウィルス 2 ( SARS-CoV-2 )の検査結果が 24 時間間隔で 2 回陰性

登録時に SARS-CoV-2 のリアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応を実施し、検査結果が陰性の患者を対象とした。

患者には、詳細な病歴と身体検査を伴う包括的な医学的評価が行われた。

臨床的および薬理学的病歴、生活習慣因子、ワクチン接種状況、身体測定値を含むすべての臨床的特徴に関するデータを、構造化された電子データ収集システムで収集した。

COVID-19 ポストアキュート(=亜急性期)外来は現在活動中であり、患者評価プロトコルの詳細については別の場所で説明されている。

特に、 COVID-19 と相関する可能性のある特定の症状に関するデータは、登録時に実施された標準化された質問票を用いて得られた。

患者は、 COVID-19 の急性期における症状の有無、および各症状が受診時に持続していたかどうかをレトロスペクティブ(※注 1 )に振り返るように求められた。

(※注 1 ) 疫学調査で用いられる方法の一つで、後ろ向き研究とも言う。後ろ向きとは、調査を開始した時点から過去に遡って対象者の情報を集めるところから、このように呼ばれる。

1つ 以上の症状を報告することができた。

EuroQol(※注 2 )ビジュアルアナログスケールを用いて、COVID-19投与前と受診時のQOLを0点(想像できる最悪の健康状態)から100点(想像できる最高の健康状態)までスコア化し、 10 点の差があればQOLが悪化したと定義した。すべての解析はRバージョン3.6.3(R Foundation)を用いて行った。

(※注 2 ) 健康水準の変化を基数的に評価するための QOL ( Quality of Life = 、「生活の質」)測定尺度の一つで、そのユーロ圏版。

この研究は、カトーリカ大学と Gemelli 財団 Policlinico Gemelli IRCCS の機関倫理委員会によって承認された。

すべての参加者から書面によるインフォームドコンセント(※注 3 )を得た。

(※注 3 ) 医師と患者との十分な情報を得た(伝えられた)上での合意文書。

【結果】

2020 年 4 月 21 日から 5 月 29 日までの間に、 179 人の患者がフォローアップ後の急性期ケア評価の対象となる可能性があった

14 人( 8% )が参加を拒否し、 22 人が検査結果で陽性だった。

したがって、 143 人の患者を追うこととなった。

・平均年齢: 56.5歳(SD:標準偏差 14.6 歳)
・範囲: 19 ~ 84 歳
・性別:男性 90 人( 73% )、女性 53 人( 37% )
(※入院中、 72.7% の参加者には、間質性肺炎の症状があった。)
・平均在院日数: 13.5 日( SD:標準偏差 9.7 日)
(※ 21 例〔 15% 〕が非侵襲的人工呼吸(※注 4 )を受け、 7 例〔 5% 〕が侵襲的人工呼吸(※注 5 )を受けていた)

(※注 4 ) 気管挿管や気管切開を行わず、マスクやマウスピースを使用して、関節的に気道を確保する人工呼吸。

(※注 5 ) 気管挿管や気管切開を行って直接気道を確保する人工呼吸。

患者の評価は、 COVID-19 の最初の症状が発現してから平均 60.3 日後(SD:標準偏差 13.6 日)に行われた。

評価の時点で、 COVID-19 に関連する症状が完全に消失したのは 18人 ( 12.6%)のみであり、 32% は 1つ ないし 2 つの症状を有し、 55% は 3 つ以上の症状を有していた。

いずれの患者にも発熱や急性疾患の徴候や症状は認められなかった。

生活の質の悪化は 44.1 % の患者で認められた。

以下の症状は、依然として高い割合で報告されていることを示している。

疲労: 53.1%
呼吸困難: 43.4%
関節痛: 27.3%
胸部痛: 21.7%

COVID-19 症状の頻度・後遺症

次回へ・・・。