「真実の口」2,053 梅毒、急増【後編】

前回の続き・・・。

前編、中編と急増のデータと原因を探ってきた。

今回は厚生労働省の感染症情報をベースに Q&A 形式で進めてみる、

Q. 梅毒とはどのような病気なのか?

A. 梅毒は、梅毒トレポネーマという直径 0.1 ~ 0.2㎛、長さ 6 ~ 20㎛ の病原菌に感染することで発症する病気である。

病名は、症状の赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ていることに由来する。

主な感染経路は性行為とされているが、感染者の体液や血液に触れることによって皮膚の傷口や粘膜から感染するケースもある。

Q. 梅毒の症状は? 

A. 症状は、感染してからの時期によって、大きく Ⅰ期顕症梅毒、 Ⅱ 期顕症梅毒、晩期顕性梅毒、に分類されるそうだ。

Ⅰ期顕症梅毒は、感染後 3 週間前後で現れる病態で、梅毒トレポネーマが侵入した部位(主に口の中、肛門、性器等)にしこりや潰瘍(かいよう)が出来たり、あるいは、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れることもあるらしい。

これらの症状は痛みを伴わないことが多く、治療をしなくても症状は自然に軽快するため、この段階で梅毒の感染に気づく人はほとんどいないそうだ・・・ヾ(0д0∥)ノ

Ⅱ 期顕症梅毒は、Ⅰ期顕症梅毒の症状が改善して 4 ~ 10 週間ほど経過した後に、体内に侵入した病原菌が血液を介して全身に広がり、バラ疹というバラの花のような湿疹が全身に生じるようになる。

特徴的な症状は、手のひら、足の裏、体幹部など全身に現れる発疹である。

ただ、これらの症状も痛みやかゆみを伴わないことが多く、治療をしなくても数週間〜数ケ月で症状が治まってしまうそうだ。

また、発熱や倦怠感などの全身症状を伴うことも多く、中には髄膜炎などの重篤な合併症を引き起こすケースも多々あるらしいが、数週間~数ケ月で自然に治っていくため、医療設備が脆弱ぜいじゃくな発展途上国などでは明確な診断が下されないケースも少なくないそうだ。

日本では、発疹、脱毛、皮膚の紅斑(皮膚が赤くなった状態)や口腔咽頭粘膜斑、倦怠感や発熱などの症状等で、多くの人はここで異常に気づき、医療機関を受診して、梅毒に感染していることがわかるという。

そして、感染から 1 年未満の第 Ⅰ 期と第 Ⅱ 期は、梅毒の感染力が最も高い時期らしい。

性的接触による感染力が高く、症状が現れていない時期(潜伏期)でも気付かず誰かに感染を広める可能性もあるというのだから怖いものである。

晩期顕性梅毒は、 Ⅱ 期顕症梅毒の症状が治まると、数年~数十年は何も症状がない状態が続くらしい。

多くはそのまま梅毒トレポネーマが体内に“潜伏”した状態で一生を終えるらしいのだが、約 30% では再び症状が現れることもあるそうだ。

治療をしないでいると、無症状のまま症状が進行し、やがて心血管や神経にも異常が現れるようになってくるらしい。

ゴム腫と呼ばれるゴムのような腫瘤が皮膚や筋肉、骨などに出現し、周囲の組織を破壊してしまうこともあるそうだ。

また、大動脈瘤などが生じる心血管梅毒や、精神症状や認知機能の低下などを伴う進行麻痺、歩行障害などを伴う脊髄癆(せきずいろう)がみられることもあるという。

感染が脳や脊髄に及んだ場合を‟神経梅毒”と呼び、どの病期でも起こりうるとされている。

また、妊娠している人が梅毒にかかると、胎盤を通して胎児に感染し、死産、早産、新生児死亡が起こったり、先天梅毒となることがあるという。

Q. 梅毒の検査法は?

A. 一般的には、医師による診察と、血液検査(抗体検査)により、梅毒にかかっているかどうかが判断される。

ほとんどの医療機関で血液検査が可能であり、病変から検体を採取して顕微鏡で観察する検査や、 PCR 検査が行われることもある。

地域によっては、保健所などで匿名・無料で検査ができるところもあるらしいので、感染の不安を感じる人は、自身の居住する自治体の HP 等で確認すると良いかもしれない。

Q. 梅毒の治療は?

A. 梅毒にはペニシリン系などの抗菌薬が有効である。

国内では、抗菌薬の内服治療が一般的に行われてきた。

2021 年 9 月には、梅毒の世界的な標準治療薬であるベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤の国内での製造販売が承認された。

これまで日本で行われていた治療は、アモキシシリン(サワシリンなど)という薬を 1 日 3 回、 2 ~ 4 週間(病期によっては、それ以上)服用する方法が一般的だったが、たった 1 回の筋肉注射(病期によっては 3 回)で済むようになったのは朗報である。

神経梅毒などの場合は、抗菌薬の点滴により治療が行われる。

内服治療の場合、内服期間は病期などを考慮して医師が判断するが、医師の許可を得るまでは、症状が良くなっても、自己判断で内服を中断しないようにしなければいけない。

また、医師が安全と判断するまでは、性交渉等の感染拡大につながる行為は控えることが大事である。

同様に、感染の可能性がある周囲の方(パートナー等)も検査を受け、必要に応じて治療を受けることも重要である。

Q. 予防法は?

A. 粘膜や皮膚が梅毒の病変と直接接触しないように、また病変の存在に気づかない場合もあることから、性交渉の際はコンドームを適切に使用することが大切である。

ただし、オーラルセックスやコンドームが覆わない部分から感染する可能性もあるため、コンドームで 100% 予防できると過信はしないようにしなければいけない。

もし、皮膚や粘膜に異常を認めた場合は、性的な接触を控え、早めに医療機関を受診して相談することが第一である。

また、歯ブラシやカミソリなど体液や血液が付着している可能性のある道具の使い回しを避けるのもポイントである。

Q. 再感染は?

A. 梅毒が完治しても、今後の新たな感染を予防できるわけではない。

適切な対策(コンドームの使用、パートナーの治療等)が取られていなければ、再び梅毒にかかる可能性がある。

コロナ禍、 SNS 、パパ活、援助交際、性風俗、インバウンド、 etc ・・・。

何が主因で感染拡大しているのかは定かではないが、梅毒感染の危険は、我々のすぐ側にあるといっても過言ではない。

新型コロナ感染症が 5 類に移行したからと言って、気が緩み、多くの出会いを求め、不特定多数との性交渉を控えることが大切である。