「真実の口」2,107 ‟がん”という病 54~がん治療による様々な症状・リンパ浮腫編①~

前回の続き・・・。

《がん治療による様々な症状》

【体の一部に起こる症状】

8⃣ リンパ浮腫

( 1 ) リンパ浮腫ついて

● ‟がん”の治療部位に近い腕や脚などの皮膚の下に、リンパ管に回収されなかった、リンパ液がたまってむくんだ状態のことをリンパ浮腫という。

● リンパ液はタンパク質を高濃度に含んだ液体である。

● 治療直後にリンパ浮腫が生じることもあれば、 10 年以上経過してから生じることもある。

リンパ管とリンパ節

※ リンパ液:血管から染み出した血漿やタンパク質の成分などが、毛細リンパ管に再吸収されたもので、老廃物の回収などの働きがある。

※ リンパ管:リンパ液が流れている管で、途中にリンパ節という節目があり、そこからさらに枝分かれして、血管のように体中に張り巡らされている。

※ リンパ節:体全体にある免疫器官の 1 つで、全身の組織から集まったリンパ液が流れるリンパ管の途中にある。細菌、ウィルス、がん細胞などがないかをチェックし、免疫機能を発動する「関所」のような役割を持つ。リンパ節が腫れて大きくなる原因として、感染症、免疫・アレルギー性疾患、血液のがん、がんの転移などがあげられる。

● この症状は発症すると治りづらく、進行しやすいため、むくんだところが重くなる、関節が曲げづらくなるなど、生活にも影響することがある。

● そのため、リンパ浮腫は予防することや、早く見つけて治療を受けることが大切である。

リンパ浮腫の一例:
リンパ浮腫 リンパ浮腫

( 2 ) 原因

● ‟がん”(乳がんや子宮がん、卵巣がん、前立腺がんなど)治療として行うリンパ節の切除(リンパ節郭清(※注 1 ))や、‟放射線治療”、一部の‟薬物療法”などによって、リンパ液の流れが悪くなることで起こる。

(※注 1 ) ‟手術”の際に、‟がん”を取り除くだけでなく、‟がん”の周辺にあるリンパ節を切除すること。‟がん”細胞はリンパ節を通って全身に広がっていく性質があるため、‟がん”が転移している可能性がある部分を取り除いて、再発を防ぐことを目的としている。リンパ節を切除すると、体内をめぐるリンパの流れが滞るため、リンパ浮腫が起こり、手や腕、足などがむくむことがある。

● 体重が増えたり、リンパ液の流れが悪くなった場所に感染が生じたりすると、リンパ浮腫が起こりやすくなる。

● 原因がわからないこともある。

( 3 ) リンパ浮腫になったときには

● 適切な治療を受けることで、リンパ浮腫の進行をおさえたり、症状を軽減したりすることができる。

● できるだけ早く、担当医に相談し、専門のリンパ浮腫外来などを受診する。

・スキンケア
・手を使う医療的なマッサージ(用手的リンパドレナージ(※注 1 ))
・弾性包帯や弾性着衣(弾性ストッキング等)による圧迫(圧迫療法)
・弾性着衣などで圧迫した状態での運動(運動療法)
・体重管理などの日常生活の注意

(※注 1 ) リンパの流れをよくするマッサージで、一般的なマッサージとは全く異なる手技で、リンパ浮腫の治療として行われる医療行為である。

● これらの治療は、保険診療として行われ、リンパ管に回収できなかったリンパ液リンパ管に戻すために行う。

弾性着衣には、腕に装着するスリーブやグローブ、脚に装着するストッキングなどがある。

【弾性着衣の種類】
弾性着衣

● 担当医の指示のもとで、リンパ浮腫の状態に合った最適なサイズ、圧迫圧、形状のものを選ぶ。

リンパ節切除後に発症したリンパ浮腫の場合、療養費を申請することで、弾性包帯弾性着衣の購入費用の一部が後で戻ってくる場合があるので、購入する前に、担当医に確認する。

● ‟がん”の手術後のリンパ浮腫では、手術による治療を行うこともある。

リンパ管と静脈をつないで、腕や脚に滞ったリンパ液を静脈に流す方法などがあるが、体の状態によっては受けられないこともあり、必ず改善するとは限らない。

リンパ浮腫ではリンパ液の流れが悪くなるため、傷ができたときに傷口から細菌に感染しやすくなり、腕や脚全体に炎症が広がる蜂窩織炎を起こすことがある。

蜂窩織炎になると、赤い斑点が広がり、腫れた部分を触ると熱く、 38 度以上の高熱が出る場合もあり、抗菌薬を使う。

● また、スキンケアを行って皮膚を清潔で健康な状態に保つことで、細菌に感染しにくくなる。

次回へ・・・。