「真実の口」2,106 ‟がん”という病 53~がん治療による様々な症状・尿が出にくい編~

前回の続き・・・。

《がん治療による様々な症状》

【体の一部に起こる症状】

7⃣ 尿が出にくい

( 1 ) 尿が出にくいことについて

● ‟がん”の治療治療中や治療後に、尿閉(尿が全く出ない)、尿意を感じない、残尿感(排尿したあとも尿が残っているように感じる)、尿の勢いがないなどの症状が出ることがある。

( 2 ) 原因

● ‟がん”そのものや、‟がん”の治療(‟手術”‟薬物療法”)によって起こる。

● 男性の場合には、加齢によっても起こるため、原因が特定しづらいことも少なくない。

● 膀胱や前立腺、子宮、直腸の‟がん”では、‟がん”によって尿道(尿の通り道)が圧迫され、尿の通りが悪くなることがある。

● ‟がん”の進行によって、排尿の機能がうまく働かなくなることもある。

● ‟がん”に対する骨盤内の‟手術”(子宮けいがん、子宮体がん、卵巣がん、直腸がんなど)によって、排尿に関わる神経に傷がつき、膀胱が十分に収縮できなくなることによって起こることがある。

‟薬物療法”(細胞障害性抗がん薬による治療)や痛み止め、不安を和らげる薬の副作用でも起こることがある。

( 3 ) 尿が出にくいときには

● 原因に応じて、薬による治療を行ったり、生活の中でできる工夫を取り入れたりする。

● 排尿したあとも残尿感があるときには、膀胱に残っている尿の量を超音波検査、または導尿(カテーテルという管を使って排尿すること)で確認する。

● しかし、もれる量が多く、生活に支障が生じる場合には、コラーゲンを尿道に注入したり、人工尿道括約筋手術などを行うこともある。

● 尿意を感じないときや、尿が出ないためにおなかが張って苦しいときには、導尿を行うことがある。

● 症状が長く続く場合には、医療者からの説明を受けて、自宅でもカテーテルを用いた自己導尿をすることや、尿道を広げる‟手術”などを行うこともある。

( 4 ) 本人や周囲の人が出来る工夫

~ 時間を決めて、定期的にトイレに行く ~

● ‟がん”の手術後に尿意を感じづらいときは、 2 ~ 4 時間ごとにトイレに行く(時間排尿という)。

● タイミングには個人差があるので、担当医と相談する。

~ おなかの下が張ってくるなどの変化を、尿がたまったサインであると感じてトイレに行く ~

● 今までの尿意のかわりに、おなかの下の方が張る、重い感じがするなどの尿がたまってきたなどの体の変化を感じて、トイレに行くようにしていく。

● すぐに感じられるようになるのは難しいので、少しずつ練習していく。

~ 腹圧をかけて排尿するなど、自分に合った排尿方法を行う ~

● 自分に合った排尿方法を見つけていく。

・腹圧を掛けた排尿法を行う。
腹圧をかけた排尿法
1. 息を大きく吸っておなかを膨らませ、息を止める。
2. おなかの下に手を当てて軽く圧迫しながら息を吐き、おなかに力を入れながら排尿する。
3. 排便するときのように校門に意識を集中させると排尿しやすくなる。
4. おなかを強く圧迫しないようにする。

・洗浄機能つき便座の温水による刺激で、排尿を促す。
・ぬるま湯を陰部にかける。
・トイレに設置してある「流水音」や水の流れる音を流す。
・リラックスできる環境を整える。
・排尿している自分を思い浮かべながら、排尿する。

~ 便秘を予防する ~

● 便秘によって膀胱を圧迫され、尿の通りを悪くすることがあるため、便秘を予防すると良いといわれている。

● 水分を多めに取ることや、食生活を整えることを心がける。

~ 排尿日誌をつける ~

● 市販のノートにトイレに行った時間や尿の量を書く(排尿日誌という)。

排尿日誌の例

● 2 時間くらい間隔があくまで、数ケ月かかることもある。

● この日誌は、担当の医師にうまく症状を伝えることに役立ち、自分に合った治療を見つけることにもつながる。

● 日誌に書く内容は、症状によって異なるため医師に相談する。

~ 周りの人ができるサポート ~

● 排尿意が感じづらい場合には、定期的に排尿する必要がある。

● 高齢者の場合は、トイレに行くことを忘れたり、排尿日誌をつけられなかったりもするので、さりげなく周囲の人がサポートする。

( 5 ) こんなときは相談する

● 下記のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診する必要がある。

・尿が出ないためにおなかの下の方が張って苦しい場合
・ 1 日尿が出ない場合
・極端に尿の量が少ない場合

● ‟がん”の治療によっては、気付かないうちに症状がひどくなることがあるため、尿が出にくくなったと感じたときには、遠慮せず、なるべく早く担当医に相談する。

● 場合によっては、泌尿器科を紹介されることもある。

● 診察の際には、いつから、どんな風に出にくいのか、飲んだ水分量やトイレに行った時間などを書いた排尿日誌を持参すると良い。

次回へ・・・。