前回の続き・・・。
2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災でも「液状化現象」は確認されている。
その特徴としては、液状化が発生した地域が、青森県から神奈川県まで南北約 650km の広範囲(東北地方の 6 県および関東地方の 1 都 6 県の合計 160 の市区町村)に及んでいるということだ。
以下の赤い地点で、「液状化現象」が確認されている。
画像を見て分かるように、関東平野では、沿岸部のみならず内陸部まで極めて多数発生している。
これに対して、海岸近くまで山地・丘陵が迫っている東北地方では、発生が少ない。
沿岸部に津波が襲来し液状化の痕跡が消失してしまったこともあるが、両地域の地形的特徴の違いが大きく影響したと考えられる。
関東平野は、大河川の堆積作用による低地や埋立地の面積が大きかったためであろう。
東京湾沿岸の浦安市から千葉市にかけての埋め立て地帯では、震度 5 強とそれほど大きな震度ではなかったにも関わらず、高密度に液状化が発生したそうだ。
これまでの地震でも、液状化は震度 5 強以上の地域で生じていたことが確認されている。
東日本大震災も液状化が起きた地域は概ね 5 強以上の地域で過去の傾向と同じと言えるが、町全体が液状化するなど、かつてなかったほど高密度に液状化を生じた点は、専門家でも想定外だったようだ。
地震動の継続時間が長かったこと。
本震後に大きな余震が頻発したこと。
埋め立てに用いた土の性質。
これらが複合して影響したと推測されている。
液状化に伴い地下から噴き出して地表に堆積した噴砂の厚さは、東京湾岸(震度 5 強)、利根川下流沿岸(震度 5 強~ 6 弱)などで最大 50 ~ 60cm 、地盤の沈下量は、東京湾岸埋立地では最大 50cm 以上にも及んだそうだ。
この沈下量は、地盤が液状化した後、圧縮されたことによってのみ生じた沈下とは考えにくいという。
莫大な砂が地表に噴き出したことにより地下の空洞が埋まり、地盤沈下が生じたものと思われるそうだ。
また、利根川下流沿岸では、正確な測量に基づく値ではないらしいが、 1m 以上沈下したとされる場所もあるようだ。
液状化した層が川の方向に流動する現象(側方流動)が生じたことで、沈下量が増大したと推測される。
液状化による住家被害は、 9 都県 80 市区町村の 26,914 棟にも上っている。
都県別に見ると、千葉県が最も多く 18,674 棟、市町村別では浦安市が 8,700 棟と最も多かった。
液状化被害件数が最も多かった浦安市は、総面積 30.94km2 のうち、約 85% は東京湾岸の干潟や海を 1965 ~ 1980 年の間に造成された埋立地である。
今回の地震により、地盤改良を行っていなかった埋立地のほぼ全域で液状化現象が発生したそうだ。
戸建住宅など直接基礎の小規模建築物は、液状化で不同沈下を起こし、約 3,700 棟の建築物が半壊以上( 1/100 以上の傾斜)の被害認定を受けている。
以下が、東日本大震災の液状化現象による家屋被害上位 10 位である。
2016 年 4 月 16 日に発生した熊本地震でも 「液状化現象」は確認されている。
その特徴は、発生した地域が、これまで液状化しやすい場所とされていた埋め立て地や河川沿いではなく、内陸部だったということである。
特に、熊本市南区において南北約 5 kmの範囲に液状化による被害が集中していたことがわかっている。
更に、阿蘇山の西側外輪部にも集中している。
これらの地点を調査した結果、人工島である熊本港を除いて、主に旧河道やそれに沿った自然堤防上、あるいは氾濫原(後輩湿地)上で発生していることが分かった。
古い地図で確認したところ、過去に水田に利用されていた水はけの悪い軟弱地盤上で発生したのではないかと推測される面もある。
その一方で、水域の埋め立てや旧河道の存在が確認できない地域もある。
噴砂を確認したところ、その多くが火山性由来の土質と思われる火山灰質砂であり、この影響が液状化被害を甚大化した可能性も指摘されるているようだ。
2018 年 9 月 6 日の北海道胆振東部地震でも 「液状化現象」は確認されている。
その特徴は、比較的軟らかい堆積が地下深くまで広がり、液状化が発生しやすい石狩低地帯と呼ばれる地域は元より、震源地から 60km も離れた札幌市清田区里塚地区や、震源から北西に約 80km 離れた石狩市と小樽市でも発生したと言うことである。
道内 15 市町に及ぶ 2,900 地点以上で液状化現象が確認されている。
液状化の多くは、太陽光発電パネルの設置場所など人工造成地で見られたようだ。
石狩市では、液状化や地割れで経営破綻に追い込まれたゴルフ場もあったらしい。
被害が際立った札幌市清田区の住宅地は、テレビで何度も取り上げられていた。
当初、海から遠く離れた内陸の都市部である札幌市清田区里塚で液状化が起きたのか専門家も首をかしげていた。
調べていくうちに、被害があった土地は、宅地造成がなされており、その前の状況は、川が流れていて、谷の中央に畑とか田んぼがあり、そこに山を切って谷を埋めるという、切り土盛り土で作られた造成地だったことが分かった。
時代背景を見てみると、 1972 年、札幌はアジアで初めて開催された冬季オリンピックで、これまでになく湧いていた。
人口が急速に増えていき、札幌周辺の地域で宅地造成が急ピッチに進んだ。
清田区里塚地区もそのひとつである。
里塚地区の宅地造成は、山を削り、谷を埋める形で行われ、約 8m の盛り土をし、付近を流れていた三里川は、暗渠、つまり地下水路に姿を変えた。
この造成で盛り土に使われたのが火山灰だったため、今回の悲劇が起きたと専門家は見ている。
住民は、「宅地は民有地ではあるけれど、宅地として許可を出したのは札幌市。市は行政の責任として何らかの手立てをしてほしい。」と言っているが・・・。
札幌市は、 18 年 12 月から 19 年3月にかけて、宅地内を通る道路 12 ケ所と吉田川公園内でボーリング調査を実施している。
地下水位や土質調査の結果から国土交通省の基準に従って液状化判定を行い、宅地内の道路の 1 ケ所を「液状化危険度が高い」と分類。
3 月 30 日に開いた住民説明会で、「地下水位が高い場所は液状化、低い場所は切り土と盛り土の境界における地盤強度の違いが主な原因」と説明している。
切り土と盛り土の境界は、造成する際に埋設した暗きょのほぼ真上に位置しており、そのため、暗きょ内部への土の吸い出しで地中に空洞が形成され、それが地震で潰れて地盤沈下を引き起こした可能性を指摘する専門家もいた。
しかし、市は、今回のボーリング調査で大きな空洞が確認されなかったため、地盤沈下と暗きょの間に関連性は無いと判断している。
次回へ・・・。