「真実の口」2,137 能登半島地震 ⑮

前回の続き・・・。

今回の能登半島地震でも「液状化現象」が確認されている。

石川、富山、新潟の 3 県で、地盤の液状化による住宅の被害が 1 万件を超えるとみられている。

震源から約 160km 離れた福井県坂井市、新潟県新潟市でも被害が確認されるなど広範囲に及んでいる。

能登半島地震・液状化現象

 

今回、液状化が発生した地形にも特徴があることがわかった。

日本海側は冬の強い季節風が、沿岸部の砂を内陸部に運ぶため、山陰から東北地方にかけて砂の多い地層がある。

専門家の分析では、今回の地震で液状化の被害が大きかった場所は、この砂が堆積した「砂丘」に集中していることがわかっている。

更に、被害が大きかった場所が日本海に面した側ではなく、陸側に集中していたことも分かっている。

砂丘と言えば、鳥取砂丘が頭に浮かぶが、日本海側には数多くの海岸砂丘がある。

奈多砂丘(福岡県)
玄海砂丘(福岡県)
出雲砂丘(島根県)
北条砂丘(鳥取県)
鳥取砂丘(鳥取県)
網野砂丘(京都府)
内灘砂丘(石川県)
氷見砂丘(富山県)
八幡砂丘(新潟県)
素浜砂丘(新潟県)
西頸城砂丘(新潟県)
潟町砂丘(新潟県)
寺泊砂丘(新潟県)
荒浜砂丘(新潟県)
新潟砂丘(新潟県)
北蒲原新潟砂丘(新潟県)
岩船砂丘(新潟県)
庄内砂丘(山形県)
秋田砂丘(秋田県)
屏風山砂丘(青森県)
石狩砂丘(北海道)
稚咲内砂丘(北海道)

太平洋側で砂丘と言うと・・・。

猿ヶ森砂丘(青森県)
仙台砂丘(宮城県)
村松砂丘(茨城県)
九十九里砂丘(千葉県)
館山砂丘(千葉県)
湘南砂丘(神奈川県)
遠州大砂丘(静岡県)
浜岡砂丘(静岡県)
中田島砂丘(静岡県)
西山砂丘(愛知県)
吹上浜砂丘(鹿児島県)

日本海岸では拾い切れていない海岸砂丘もある。

見ての通り、圧倒的に日本海岸に砂丘が多いことが分かると思う。

しかし、液状化が起きることが考えられてもいたが、埋め立て地や旧河道に比べるとあまり注目されてこなかったと言う現実がある。

「今回被害が出たところは再被害のおそれもあるほか、その周辺部や類似の地形では、今後の地震で液状化被害が大きくなる可能性もある。」と専門家は指摘している。

金沢市の北に位置する石川県内灘町では、最大震度 5 弱の揺れを観測し、液状化による被害が多発した。

干拓地が開発された住宅地の道路は亀裂が目立ち、電柱や道路標識が倒れたままになっている。

町内の住宅被害は 1,451 棟にのぼり、多くが液状化によるものとみられる。

防災科学技術研究所・先名重樹主任専門研究員:

「サラサラの粒がそろった砂は最も液状化しやすい。砂浜と同じ。砂丘はこういう砂が多いので、(砂が)ぐーっとこちら側に流れてきて、地面の中で雪崩が起こったような。震度 5 弱だと一般的には液状化し始める手前、もしくはする。地震の継続時間の長さも関係していて、継続時間が長かったことで、液状化が発生するトリガーが引かれてしまってこういう状況になった。液状化を起こしやすい一般的な埋立地・干拓地・旧河道でも発生しているが、今回、非常に特徴的なのは、砂丘の低地部で激しい液状化が起こっている。」

液状化をめぐっては、東日本大震災、熊本地震、北海道胆振東部地震、では、埋立地、旧河道などの被害に大きな注目が集まってきたが、今回大きな被害が出た「砂丘」についても考える必要があると、前述の先名主任専門研究員は指摘している。

防災科学技術研究所・先名重樹主任専門研究員:

「こういったことが地域的に起こってしまうと、 1 軒だけ対策してもインフラは壊れるし、ハザードマップを見直して、こういったところは危険だと反映していったほうがいい。 1 回起こったところは何回でも液状化を起こすので、地域ぐるみで検討する。市町村と国も寄り添うことが必要。」

地盤工学を研究する東北大学大学院工学研究科・加村晃良准教授:

「能登半島地震の被災地で起きたことは、全国どこでも起きる可能性があり、特に埋め立て地や造成された場所では発生しやすい。その一方で、対策には難しさもある。費用面を考えないとすれば、人口集中地域を改良するという選択もあるかもしれないが、費用面以外にも、今動いているインフラとか、動いている社会を一旦止めて改良するというのは、非現実的な話。費用面に加え、地盤を改良する場合は地区単位で行う必要性がある。」

地盤工学が専門で、富山県氷見市の現地調査を行った京都大学・三村衛名誉教授は対策を以下のように語っている。

「河川がつまった形で流れているところの海岸沿い。もともと液状化に弱い。細かい砂が溜まる環境にある。地盤としての弱点がある。」

地盤改良後に考えられる工法として、以下の追加工事を推奨している。

液状化をもたらす地下水をくみ上げて水位を引き下げる工法
ブロックなどで液状化を起こす地盤を囲って補強する工法
地下水が流れている底を掘り下げて水位を下げる工法

しかし・・・。

「やれることは限られている。地盤を固くするか、地下水を下げるか、全体を囲って変形しないようにするか、水を逃がすという手もある。住民の合意がないとできないこともあるので、皆さんがどうするか?」とも語っている。

しかし、一度起こった液状化は、北海道胆振東部地震の時の札幌市清田区里塚地区の例を見るように幾度となく起こる可能性が大である。

その対策を取る必要はあるのは間違いない。

次回へ・・・。