「真実の口」2,166 来るべき大地震に備えて ㉙

前回の続き・・・。

前術の京都大学防災研究所・伊藤喜宏准教授は、東日本大震災のあと、メキシコに新たな研究のフィールドを移したそうだ。

メキシコもご存知のように日本と同じように地震が多い国である。

余談だが、地震大国ランキングの一位は日本じゃない。

地震大国ランキング

上のグラフは、 1980 年から 2000 年にかけての 20年間の M5.5 以上の地震の年平均回数である。

1 位は中国で、日本は 4 位、メキシコは 7 位である。

伊藤准教授は、 2015 年からメキシコ国立自治大学のビクトール・クルーズ教授等の現地の研究グループと共同で、メキシコの太平洋沿岸で巨大地震とスロースリップの関係を探る研究プロジェクトを立ち上げたそうだ。

下の写真は、過去40年間に発生したマグニチュード7.0以上の地震の震源をプロットしたものである。

メキシコでのM7.0以上の地震

太平洋沿岸部に集中していることがすぐにわかると思うが、その数は 26 回にのぼるそうだ。

1985 年 9 月 19 日 13 時 17 分に発生した M8.0 のメキシコ地震では、首都のメキシコシティーで高層ビルが倒壊するなど 1 万人近い死者が出ている。

また、 2012 年 3 月 20 日 12 時 02 分に発生した M8.0 のメキシコ南部地震沿岸部では 2 ~ 3m の津波も観測されている。

伊藤准教授が観測を始めて 2 年経過した 2017 年。

2017年9月19日メキシコ中部地震

6 月から赤いエリアで始まったスロースリップが約 3 ケ月間継続した後、 9 月 19 日に東のエリアで M7.1 の メキシコ中部地震が発生したそうだ。

更に、その後、上の写真とは別の領域でスロースリップが拡大し、翌年 2 月 17 日にメキシコ・オアハカ州を震源とする M7.2 の地震が発生したそうだ。

2018年2月16日

メキシコ国立自治大学 ビクトール・クルーズ教授:

「巨大地震の発生を予測する現象を特定するためには、スロースリップの研究を続けることが必要です。

日本で起きることはメキシコで起きることと非常によく似ています。

巨大地震の発生前のプロセスをもっとはっきりと把握できるようになれば、地震の発生を事前に予測することもできるかもしれません。

これは世界中の地震学者が何世代にもわたって抱いてきた夢なのです。」

伊藤助教授に共感して、メキシコで防災に取り組んでいる研究者もいるらしい。

京都大学・中野元太助教授である。

中野助教授は、 7 歳のときに阪神・淡路大震災を経験し、高校や大学で防災を学んだ後、京都大学の研究者として津波のリスクがある高知県などで地域防災や防災教育に力を入れてきたそうだ。

首都メキシコシティーから飛行機で 1 時間ほどのところにある太平洋沿岸の町・シワタネホは、美しい海を望む素朴な雰囲気の街で、海岸沿いにはリゾートホテルが建ち並び、外国人旅行者も多く訪れる観光地だそうだが・・・。

シワタネホでは、約 100 年前の 1925 年に 11m の津波に襲われた記録があるそうだ。

しかし、当時の周辺地域の人口が 400 人前後だったことから、津波体験の語り継ぎもなく、現在、住んでいる人は、他の地域から移住してきた人が多く、 100 年前に津波があったことさえ知らない人がほとんどらしい。

シワタネホの住民は津波が何であるのかさえよく分かっていない状況だったらしい。

住民や漁師は、「今までの人生で津波が発生したことは一度もなかった」、「自分の人生で一度だって津波が発生することはありえない」といった答えが返ってくる防災意識のかけらもなかったそうだ。

それが現在では、京都大学とのプロジェクトにより、街中に‟TSUNAMI”の避難ルートを示す標識が設置されているそうだ。

伊藤助教授と中野助教授はメキシコで、防災教育に取り組み、メキシコの人たちも防災に対しての意識に変化が現れてきたそうだ。

そして、ここでスロースリップ地震による地震予知が役に立てば言うことは無い。

話を日本に戻そう。

2018 年 6 月に入った頃、千葉県東部や周辺の沖合でスロースリップに起因すると考えられる震度 1 以上の地震が 20 回以上観測されたらしい。

これらの地震の中には、最大震度 4 の揺れが観測されたものもあるそうだ。

2018年6月の房総半島沖周辺の地震の震源分布

そして、 2018 年 7 月 7 日 20 時 23 分頃、千葉県東方沖を震源とする M6.0 の地震が発生し、千葉県長南町で最大震度 5 弱が観測されている。

2018年7月7日20時23分

さて、予知は可能なのか?

次回へ・・・。