「真実の口」2,165 来るべき大地震に備えて ㉘

前回の続き・・・。

前回、電子基準点を紹介したが、スロースリップをどのようにして検出をするのか地震調査研究推進本部事務局・広報誌「地震本部ニュース」平成 30 年( 2018 年)秋号に掲載されている。

通常は、プレートが水平移動している。

海溝型地震

これに対してスロースリップ地震は、プレート境界の断層がゆっくり動く現象で、いつもと違う動きなのだが我々が体感することは無い。

スロースリップ地震

スロースリップ地震は、世界的にも注目されている地震現象らしく、日本では、従来の「地震学」とは別のテーマで、科学研究費助成事業新学術領域研究「スロー地震学」として、東京大学地震研究所を中心に集中的な研究が行われているそうだ。

以下が、 1900 年以降、 M8.8 以上の地震とスロースリップ地震の関連である。

M8.8以上の地震とSSEの関連

我が国の電子基準点は、GPS 衛星からの信号を受け、その基準点の上下、水平の変動をオンラインでつくばにある国土地理院測地観測センターに送信され、僅かな位置の移動を測定できるようになっている。

例えば、東日本大震災の時には、宮城県石巻市牡鹿半島の牡鹿局で、 5.3m 水平移動し、 1.2m 沈下したことが分かっている。

また、海上保安庁の調査では、 70km 沖合の震央では、東南東方向に 23m 水平移動、 5 ~ 7m 隆起したことも観測されている。

更に、海洋科学技術開発機構の調査では、日本海溝縁で 40 ~ 50m の超巨大すべりと 7 ~ 10m の隆起があったことも明らかにされている。

東日本大震災のGPS

上は東日本大震災の日の 18:00 から 21:00 までの GPS 測定による移動である。

東日本全体が移動しているのがわかる。

そして、スロースリップ地震研究の第一人者と言われているのが、京都大学防災研究所・地震学者の伊藤喜宏准教授らしい。

NHK の WEB 特集「地震予測に挑む ある地震学者の思い」より

「伊藤さんがどこかで観測すると地震が起きる。」

・・・と、周りの科学者からよくそう言われているらしい。

伊藤准教授は、東日本大震災発生の 2 週間後、当時、東北大学で研究中、東北沖の海底に設置していた圧力計を回収してデータを解析したところ、驚くべきデータが記録されていたことを発見したそうだ。

20230311の地震計

上は、 3 月 11 日の 1 ケ月半ほど前の 1 月 24 日ごろから小さな波形が続いており、これがスロースリップの震動によるものらしい。

スロースリップが起きていた場所

そして、宮城県の沖合、オレンジ色の所が、スロースリップが起きていた場所で、赤色のエリアは巨大地震が発生した場所だそうだ。

この二つのエリアが重なっていることが分かる。

伊藤准教授は、これらの経験をもとに、東北沖では海底圧力計を回収してからでないとスロースリップなどのデータを見つけることができなかったが、南海トラフ沿いでは海底ケーブルなどで海底の観測装置がつながっているため、リアルタイムにデータを取得できることから南海トラフ地震を予知に役立てたいそうだ。。

伊藤喜宏准教授:

「予知はそれほど簡単なことではないと思います。

ただし、スロースリップが起きていることでその周辺の地震活動が活発化して、さらには結果的に巨大地震の発生確率が高まっているということは言えると思いますので、スロースリップそのものを理解して、より高い精度でスロースリップに伴うその周辺現象の予測、巨大地震の発生予測という情報を積極的に発信できるようになればいいかなと思います。

少なくとも私たちは今、海底観測網や陸上観測網を用いてスロースリップを観測はしているんですね。

そういうリアルタイムで得ている情報を、その周辺に住んでいる方々に何かしらの注意報とか警報のような形で発信していくというのが、ある程度低い精度であってもまず進めるということが私は大切じゃないかと考えています。」

果たして、スロースリップによる地震予知は可能なのか?

次回へ・・・。