「真実の口」2,167 来るべき大地震に備えて ㉚

前回の続き・・・。

果たしてスロースリップで地震予知が出来たのか 2011 年以降の M6 以上の地震で死者が出た地震のみを見てみよう。

【 熊本地震 】

前震:2016 年 4 月 14 日 21 時 26 分 M6.5 最大震度 7 (熊本県益城町)
本震:2016 年 4 月 16 日 1 時 25 分 M7.3 最大震度 7 (熊本県益城町、西原村)

〈 地殻変動評価 〉
☞ GNSS 観測の結果によると、 4 月 14 日の M6.5の地震及び 4 月 15 日の M6.4 の地震の発生に伴って、熊本県内の城南観測点が北北東方向に約 20cm 移動するなどの地殻変動が、また、 4 月 16 日の M7.3 の地震の発生に伴って、熊本県内の長陽観測点が南西方向に約 98cm 移動するなどの地殻変動が観測されている。

〈 地震調査委員会による九州地方の地震活動前月・当月報告 〉
☞ 前月:九州地方では特に補足する事項はない。
☞ 前月:九州地方では特に補足する事項はない。

〈 結果 〉
☞ 地震前にスロースリップが報告された論文は見当たらない、もしくは見つけられなかった。

【 大阪北部地震 】

2018 年 6 月 18 日 7 時 58 分 M6.1 最大震度 6 弱(大阪府大阪市北区・高槻市・枚方市・茨木市・箕面市)

地殻変動評価:
☞ GNSS 観測の結果によると、震央を東西に挟む「箕面」~「宇治」の基線で約 0.5cm の短縮、南北に挟む「交野」~「亀岡」の基線で約 0.4cm の伸長が観測された。

〈 地震調査委員会による近畿地方の地震活動前月・当月報告 〉
☞ 前月:紀伊水道周辺で 2014 年半ば頃から見られている非定常的な地殻変動は、引き続き観測されている。この変化は、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界におけるゆっくりとした滑り(スロースリップ)に起因するものと考えられる。
☞ 当月:近畿地方では特に補足する事項はない。

〈 結果 〉
☞ 大阪北部地震に起因する地震前のスロースリップが報告された論文は見当たらない、もしくは見つけられなかった。

〈後だしジャンケン〉
☞ 2014 年から 2018 年 6 月 18 日の本震を含み、 2020 年までの 7 年間にわたる大気中のラドン濃度の計測から、本震の約 1 年前の 2017 年末頃からラドン濃度は下がり始めたことが明らかになりました。(東北大学大学院理学研究科地学専攻断層・地殻力学グループ)

【 平成 30 年北海道胆振東部地震 】

2018 年 9 月 6 日 3 時 7 分 M7 最大震度 7 (厚真町鹿沼)

〈 地殻変動評価 〉
☞ GNSS 観測の結果では、地震に伴って、日高町の門別観測点が南に約 5cm 、苫小牧市の苫小牧観測点が東に約 4㎝ 移動するなどの地殻変動が観測された。また、陸域観測技術衛星 2 号「だいち 2 号」の合成開口レーダー干渉解析の画像によると、震央周辺で最大約 7 cm(暫定値)の隆起及び、隆起域の東側で最大約 4cm (暫定値)の東向きの地殻変動が観測された。

〈 地震調査委員会による北海道地方の地震活動前月・当月報告 〉
☞ 前月:北海道地方では特に補足する事項はない。
☞ 当月:北海道地方では特に補足する事項はない。

〈 結果 〉
☞ 地震前にスロースリップが報告された論文は見当たらない、もしくは見つけられなかった。

【 福島県沖地震( 2021 年) 】

2021 年 2 月 13 日 23 時 7 分 M7 最大震度 6 強(宮城県蔵王町、福島県相馬市、国見町、新地町)

〈 地殻変動評価 〉
☞ GNSS 観測の結果では、福島県南相馬市の小高観測点と S 南相馬 A 観測点が西に、楢葉町の楢葉 A 観測点が南西にそれぞれ 2cm 弱移動するなどの地殻変動が、福島県周辺で観測された。

〈 地震調査委員会による東北地方の地震活動前月・当月報告 〉
☞ 前月:東北地方では特に補足する事項はない。
☞ 当月:東北地方では特に補足する事項はない。

〈 結果 〉
☞ 地震前にスロースリップが報告された論文は見当たらない、もしくは見つけられなかった。

【 福島県沖地震( 2022 年) 】

2022 年 3 月 16 日 23 時 36 分頃 M7.4 最大震度 6 強(宮城県登米市・蔵王町、福島県相馬市・南相馬市・国見町)

〈 地殻変動評価 〉
☞ GNSS 観測の結果では、宮城県石巻市の S 石巻観測点と牡鹿観測点が北向きに 3cm 程度(速報値)移動するなどの地殻変動が、宮城県や福島県を中心に広い範囲で観測された。

〈 地震調査委員会による東北地方の地震活動前月・当月報告 〉
☞ 前月:東北地方では特に補足する事項はない。
☞ 当月:東北地方では特に補足する事項はない。

〈 結果 〉
☞ 地震前にスロースリップが報告された論文は見当たらない、もしくは見つけられなかった。

【 石川県能登地方地震( 2023 年) 】

2023 年 5 月 5 日 14 時 42 分頃 M7.6 最大震度 7 (川県輪島市門前町走出、羽咋郡志賀町香能)

〈 地殻変動評価 〉
☞ GNSS 観測の結果では、、珠洲市の SZMT 観測点(京都大学防災研究所)で西南西方向に 10㎝ 程度、 M 珠洲笹波観測点(国土地理院)で南西方向に 9cm 程度の移動、珠洲市の SZHK 観測点(金沢大学)で 18cm 程度、 M 珠洲狼煙観測点(国土地理院)で 13㎝ 程度の隆起などの地殻変動が観測された。また、陸域観測技術衛星 2 号「だいち 2 号」が観測した合成開口レーダー画像の解析結果によると、 M6.5 の地震の震央周辺で最大 20cm 程度の隆起が検出された。 M6.5 の地震後は、複数の観測点で水平上下成分ともにゆっくりとした変動が見られている。

〈 地震調査委員会による東北地方の地震活動前月・当月報告 〉
☞ 前月:東北地方では特に補足する事項はない。
☞ 当月:東北地方では特に補足する事項はない。

〈 結果 〉
☞ 地震前にスロースリップが報告された論文は見当たらない、もしくは見つけられなかった。

【 令和 6 年能登半島地震 】

2023 年 5 月 5 日 14 時 42 分頃 M7.6 最大震度 7 (石川県輪島市門前町走出、羽咋郡志賀町香能)

〈 地殻変動評価 〉
☞ GNSS 観測の結果では、珠洲市の SZMT 観測点(京都大学防災研究所)で西南西方向に 10㎝ 程度、 M 珠洲笹波観測点(国土地理院)で南西方向に 9㎝ 程度の移動、珠洲市の SZHK 観測点(金沢大学)で 18cm 程度、 M 珠洲狼煙観測点(国土地理院)で 13㎝ 程度の隆起などの地殻変動が観測された。また、陸域観測技術衛星 2 号「だいち 2 号」が観測した合成開口レーダー画像の解析結果によると、 M6.5 の地震の震央周辺で最大 20cm 程度の隆起が検出された。

〈 地震調査委員会による北陸地方の地震活動前月・当月報告 〉
☞ 前月:北陸地方では特に補足する事項はない。
☞ 当月:北陸地方では特に補足する事項はない。

〈 結果 〉
☞ 地震前にスロースリップが報告された論文は見当たらない、もしくは見つけられなかった。

【 令和 6 年能登半島地震 】

2024 年 1 月 1 日 16 時 10 分頃 M6.5 最大震度 6 強(石川県珠洲市)

〈 地殻変動評価 〉
☞ GNSS 観測の結果では、輪島 2 観測点(国土地理院)で 2.0m 程度の南西方向への変動、 1.3m 程度の隆起が見られるなど、能登半島を中心に大きな地殻変動が見られた。さらに新潟県など日本海側だけでなく、関東地方や中部地方など広い範囲で北西から北向きの地殻変動が観測された。陸域観測技術衛星 2 号「だいち 2 号」が観測した合成開口レーダー画像の解析によると、輪島市西部で最大 4m 程度の隆起、最大 2m 程度の西向きの変動、珠洲市北部で最大 2m 程度の隆起、最大 3m 程度の西向きの変動が検出された。現地調査により、能登半島の北西岸で、今回の地震に伴う新たな海成段丘が認められた。また、空中写真及び合成開口レーダー画像の解析や現地調査から、能登半島北岸の広い範囲で隆起により陸化した地域があることが分かった。

〈 地震調査委員会による東北地方の地震活動前月・当月報告 〉
☞ 前月:北陸地方では特に補足する事項はない。
☞ 当月:北陸地方では特に補足する事項はない。

〈 結果 〉
☞ 京都大学防災研究所・西村卓也教授、金沢大学理工研究域地球社会基盤学系・平松良浩教授、東北大学大学院理学研究科・太田雄策准教授の研究グループは地震前に以下のような報告をしている。

流体とスロースリップに駆動された能登半島群発地震―ソフトバンク独自基準点データを用いた地殻変動解析結果―

『2020 年 11 月から 2022 年 12 月までの期間に最大で約 7cm の隆起と群発地震の震源域を中心とする膨張を示すような水平変動があった。観測された地殻変動に基づき、この地域のテクトニクスや地震活動も考慮して変動源を推定すると、 2020 年 11 月末からの 3 ケ月間に大量(約 1,400 万m3 )の流体が深さ 16km まで上昇し、能登半島の地下にある透水性の高い逆断層帯内で拡散することにより、この断層の深さ 14 ~ 16km で非地震性逆断層すべり(スロースリップ)を誘発し、さらに断層帯の浅部側で活発な群発地震を誘発したことが明らかになりました。 2020 年 11 月から 2022 年 6 月までに上昇した流体の総量は約 2,900 万m (東京ドーム約 23 個分)に達し、このような大量な流体の上昇が長期にわたるスロースリップと群発地震を引き起こした原因であると考えられる。』しかし、これを令和 6 年能登半島地震の予知には実現できなかった。

これだけのデータを見て 、スロー地震学に何を期待していけばいいのだろうか?

次回へ・・・。