「真実の口」2,158 来るべき大地震に備えて ⑳

前回の続き・・・。

小沢慧一氏著『南海トラフ地震の真実』から、科学をベースにするため発生確率を引き下げたい「地震学」側 vs 予算確保のために現状維持を諮る「防災学」側という対立構造の果てに、南海トラフ地震の 30 年発生確率 70 ~ 80% ということが定着したことが分かったわけだが・・・。

皆にとって、30 年以内の発生確率 20% と 70 ~ 80% とではどちらが防災意識が高まるだろうか?

当然、 70 ~ 80% と答えるのではないだろうか?

国、自治体の予算付けもしっかり取れるだろうので、これはこれでありだったんじゃないかと思う。

もちろん、小沢氏も発生確率のマヤカシを指摘しているだけで、防災上のことに関しては別問題と捉えている。

地震予知

地震予測

果たして本当に出来るのだろうか?

地震予知という単語はオカルトっぽくなりそうなので、以下は地震予測という単語を使う。

地震予測の方法は、統計的手法を用いて予測する手法や、地震の前兆と思われる現象を直接捕らえて予測する方法など様々なものが考えられている。

これらの地震予測は、予測時間や時刻精度によって分類されている。

● 長期予測:
・地殻変動の経年的観測を用いて確率的・統計的な予測が行われる。
・予測時間は長いが、時刻精度が低い。
・政府の地震調査研究推進本部によって発行される長期評価では、 10 年以内、 30 年以内、 50 年以内についてそれぞれ地震の発生確率が予測されている。

● 短期予測:
・地震発生のごく初期の段階に、なんらかの前駆的な現象をとらえることで、予測を行う。
・前駆的現象の発生が地震発生の数時間から数週間であるため、予測時間は短いが、時間精度が高い。

● 直前予測:
・大地震の初期微動( P 波)を検知することで,遅れて伝わる主要動( S 波)を知らせる。
・予測時間が主要動の数秒~数十秒前ときわめて短い。

現在、有効な予測として伝えられるのは長期予測と直前予測となる。

長期予測は、これまで伝えてきた 30 年以内発生確率などがこれである。

そして、直前予測は緊急地震速報として、既に実用化され、大音量でテレビやスマートフォンに通知されるものである。

しかし、時刻精度が数十年単位と低い長期予測やでは、十分に地震に備えるには難しい。

東日本大震災の後に、多くの地震学者は地震予測に関して敗北宣言をしているのはご存じだろうか?

以下の敗北宣言を紹介する。

橋本学・京都大防災研究所教授:
「甘い見積もりに安住した地震学の敗北だ。」

松沢暢・東北大教授:
「今回の巨大地震は地震学の大きな敗北。」

纐纈一起・東大地震研教授:
「科学が敗北したようなものです。」

地震学者が、何故、ここまでの敗北宣言をしているのかというと、 2011 年まで、地震学者たちは、「プレート境界の大地震の場所と規模の予測については、一定の見通しが得られた段階」とまでの賜っていたのである。

https://www.jishin.go.jp/main/seisaku/hokoku07i/as03-07.pdf

地震・火山噴火予知研究計画

東日本大震災前、政府の地震調査研究推進本部が想定した「固有地震」は宮城県沖で M7.5 程度だったが,実際の 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災では M9.1 であった.

熊本地震では、気象庁が敗北宣言をしている。

青木元・気象庁地震津波監視課長:
「過去の経験則に当てはまらない地震。現在の地震学では前震から本震を予測することができない。想定外・・・。」

一方、「日本は地震予知ができないことを認めるべきだ。」と提唱する東京大学大学院理学系研究科:ロバート・ジェームズ・ゲラー客員共同研究員がいる。

ゲラー氏の、東日本大震災発生直後の 2011 年 4 月に、「地震の予測・予知は不可能だ」とした論文が英科学誌「ネイチャー」に掲載されている。

ゲラー氏によると、政府は、地震が周期的に起きるという仮説(周期説)に基づき、大きな地震に見舞われる確率などを算出しているが、「周期説は国際的な科学コミュニティーで否定された」と指摘し、さらに東海地震を想定した大規模地震対策特別措置法(大震法)について「廃止すべきだ」とも主張している。

大震法とは、 1978 年に「地震の予知は可能」を前提とした大規模地震対策特別措置法(大震法)としてが成立されたもので、その後、毎年 100 億円規模の予算が投じられてきていたそうだ。

更に、 1995 年の阪神・淡路大震災後には政府機関として地震調査研究推進本部が設立され、 2011 年の東日本大震災の翌年には年間予算が 356 億円に達しているそうだ。

ゲラー氏は、「大震法は、地震の規模を示 M8 クラスの前兆現象の観測や、 3 日以内の地震発生を予測できることなどを前提とするが、いずれの前提も科学的根拠は皆無。」と批判している。

次回、ゲラー氏の発言の根拠を探ってみる。