「真実の口」2,149 来るべき大地震に備えて ⑪

前回の続き・・・。

前回は津波被害について寄稿したが、今回は、平成 25 年 3 月 18 日に開催された『中央防災会議 防災対策推進検討会議』の中で『南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ』がまとめた震災後に想定される全国の状況をお伝えしたい。

《 震災直後 》

◎ 建物・人的被害

地震の揺れにより、約 62.7 万棟~約 134.6 万棟が全壊する。
・ これに伴い、約 3.8 万人~約 5.9 万人の死者が発生する。
・ また、建物倒壊に伴い救助を要する人が約 14.1 万人~約 24.3 万人発生する。
津波により、約 13.2 万棟~約 16.9 万棟が全壊する。
・ これに伴い、約 11.7 万人~約 22.4 万人の死者が発生する。
・ また、津波浸水に伴い救助を要する人が約 2.6 万人~約 3.5 万人発生する。
延焼火災を含む大規模な火災により、約 4.7 万棟~約 75 万棟が焼失する。
・ これに伴い、約 2.6 千人~約 2.2 万人の死者が発生する。
液状化により、約 11.5 万棟~ 13.4 万棟の建物が沈下被害を受ける。

◎ ライフライン被害

電力は、約 2,410 万軒~約 2,710 万軒が停電する。
・ 火力発電所の運転停止等により、西日本全体の供給能力が電力需要の 5 割程度となる。
固定電話は、約 810 万回線~約 930 万回線が通話不能となる。
・ また、輻輳により、固定電話・携帯電話は、 1 割程度しか通話不能となる( 90% 規制)
インターネット接続できないエリアが発生する。
上水道は、約 2,570 万人~約 3,440 万人が断水する。
下水道は、約 2,860 万人~約 3,210 万人が利用困難となる。
都市ガスは、約55万戸~約180万戸の供給が停止する。

◎ 交通施設被害

・ 幅員の大きい道路は機能を果たすが、幅員 5.5 m未満の道路や中山間部、津波被害を受けた道路等の多くが通行困難となる。
東名・新東名高速道路は、被災と点検のため通行止めとなる。
本州と四国を連絡する 3 ルートのうち 2 ルートは被災と点検のため通行止めとなる。
・ ただし西瀬戸自動車道は点検が早期に終わり、当日中に通行が再開される。
東海道・山陽新幹線の全線が不通になる。
・ ただし、三島以東、徳山以西については、当日のうちに運行が再開される。
・ 主な被災府県を中心に在来線各線が不通になる。
震度 5 強以下の地域でも一部不通となる。
・ 港湾は、耐震強化岸壁は揺れでは機能を維持するが、津波により防波堤が被災するほか、港湾内が津波被害を受け機能を停止する。
被災地域内の空港で、強い揺れや部分的な津波浸水等が発生し、滑走路等の点検のため閉鎖され、離発着が停止される。
・ このため、航行中飛行機の着陸のための緊急オペレーションが実施れる。
高知空港、宮崎空港において、津波被害が発生する。

◎ その他の関連事項

全国の 26 製油所のうち、 12 製油所が操業を停止し、石油精製能力が 5 割程度に低下する。
・ 東海以西のいくつかの油槽所が被災し、被災地域で石油製品の供給が出来なくなる
・ 沿岸地域の多数のタンクローリーが津波で被災する。
建物がれき等の災害廃棄物が約 8,600 万トン~約 25,000 万トン津波堆積物が約 2,400 万トン~約 5,900 万トン発生する。

◎ 生活への影響

倒壊家屋、焼失家屋、津波からの避難者は避難所に避難する。
・ また、空き地や公園等に避難する場合も発生する。
・ 一時的に外出先で滞留する人は、中京・京阪神都市圏で約1,060万人に上る

◎ 災害応急体制等

・ 庁舎の浸水や倒壊が発生する。
・ 指揮命令権者や職員の被災により、災害応急対策が混乱する。
・ 停電と通信の途絶により、被害状況が把握できない。

《 発災当日から翌日、 2 日後の様相 》

◎ ライフライン被害

・ 運転を停止した火力発電所の運転再開は、 2 ~ 3 日では困難である。
・ 被災により電力需要が激減するため、直後に電力供給量が不足することはないが、翌日以降、電力需要が回復した時、計画停電を含む需要抑制が行われる場合がある。
・ 全体の電力供給量を確保するため、西日本地域の各電力事業者間で電力融通を行う。
停電の主要因は需給バランスの不安定化による供給停止であり、供給ネットワークの切り替えにより順次解消されるが、全体の解消には 3 日程度を必要とする。
・ 電柱等の復旧は更に時間を必要とする。
携帯電話は、基地局の非常用電源が数時間後以降に停止するため(最低でも約3時間は稼働)、不通エリアは数時間後から翌日にかけて最大となる。
・ 徐々に通信規制率が緩和され、音声通信はつながりやすくなる。

◎ 交通施設被害

・ 中央自動車道は点検の後、通行が可能となる。
・ ただし、名古屋地域への乗り入れで大渋滞となる。
・ 本四連絡橋は点検終了後、交通規制により緊急通行車両のみ通行可能となる。
・ 東海道新幹線の三島以東、山陽新幹線の徳山以西は、当日中に点検を終え、運転を再開する。
・ 全国の空港は被災地域の発着便の緊急オペレーションのため、大幅にダイヤが変更される。
・ 引き続き、翌日以降も流動的なダイヤ編成となる。
・ 被災地域の空港では、点検後、当日から翌日にかけて順次運航を再開する。
・ また、救急・救命活動、緊急輸送物資・人員等輸送の運用が行われる。

◎ その他の関連事項

・ 被災していない地域の 14 製油所は、フル操業体制となる。

◎ 生活への影響

発災翌日には約 210 万人~約 430 万人が避難所へ避難する。
・ また、約 120 万人~約 270 万人が比較的近くの親族・知人宅等へ避難する。
・ 被害の大きな地域では満杯となる避難所が発生する。
・ 水や食料の供給は、家庭内備蓄と都府県・市町村の公的備蓄により対応するが、発災後の 3 日間で約 1,400 万食~約 3,200 万食分の食料及び約 1,400 万~約 4,800 万㍑の飲料水が不足する。
中京・京阪神都市圏で約 320 万人~約 380 万人の帰宅困難者が発生する。

◎ 災害応急体制等

・ 道路啓開が進まない間は、域外からの救援活動は限定的となり、初期の段階はヘリコプターによる支援が主体となる。
・ 停電と通信の途絶の影響を受け、被災状況の把握に時間がかかり、府県と市町村との間の支援の調整に時間がかかる。

《 3 日後の様相 》

◎ ライフライン被害

・ 電力は、供給ネットワークの切り替えにより、停電の多くが解消される。
・ 電力需要の回復により、計画停電を含む需要抑制が行われる場合がある。
上水道・下水道は、管路等の復旧が限定的である。
・ 域外からの復旧支援が始まるが、被害量が多く支援要員が不足する。

◎ 交通施設被害

高速道路は、仮復旧が完了する。
直轄国道等は、一部で不通区間が残るが、内陸部の広域ネットワークから沿岸部の浸水エリアに進入する緊急仮復旧ルートの 7 割程度が確保される。
・ 交通規制により緊急通行車両の通行が優先され、災害応急対策が本格的に開始される。
東海道・山陽新幹線及び在来線は応急復旧作業中であり、不通のままである。
港湾施設では、航路啓開、港湾施設の復旧、荷役作業の体制の確保等が始まる
・ 津波被害が軽微な瀬戸内海の各港や、優先的に啓開した港湾において、耐震強化岸壁への一部船舶の入港が可能となり、緊急輸送が実施される。
・ 高知空港・宮崎空港において、滑走路の土砂・がれきの除去等が完了し、緊急物資・人員等輸送のための暫定運用が開始される。

◎ 生活への影響

在宅者が、食料・物資の不足や断水等により避難所に移動し始め、避難所避難者数が増加する。
・ 避難者のいる場所・人数の確認、救援物資の内容・必要量の確認が十分にできない。
避難所等で、特設公衆電話、移動用無線基地局車の配備等により、限定的に通信が確保される。
・ 被災地への燃料供給が不足し、ガソリン等の入手が困難となる。

《 1 週間後の様相 》

◎ ライフライン被害

停電の多くは解消されるが、停止した火力発電所の運転再開は限定的であり、供給量は十分でない状況が続き、計画停電を含む需要抑制が行われる場合がある。
・ 固定電話等は屋外設備等の復旧により、直後の通話支障の多くが解消される。
上水道は、約 970 万人~約 1,740 万人が断水したままである。
下水道は、約 140 万人~約 230 万人が利用困難のままである。
・ 一部では、仮設の貯留池等に汚水等を貯留する応急対策が実施される。
都市ガスは、約 38 万戸~約 150 万戸の供給が停止したままである。

◎ 交通施設被害

高速道路は、交通規制が継続される。
・ 直轄国道等は、浸水エリアに進入する緊急仮復旧ルートが概成する。
・ 緊急通行車両として標章発行の対象となる車両が徐々に拡大され、民間企業の活動再開等に向けた動きが本格化する。
東海道・山陽新幹線及び各在来線は不通のままである。
・ 在来線はバスによる代替輸送が開始される。
・ 被災した港湾のうち、約半数の港湾について災害対策利用が可能となる。
・ 緊急仮復旧ルートの開設により、利用可能となった港湾・空港において、緊急輸送が本格化する。

◎ 生活への影響

避難所避難者数は約 240 万人~約 500 万人となり、発災後最も多くなる
・ 自治体間や避難所間で、食事の配給回数やメニュー、救援物資の充実度等にばらつきや差が生じ始める。
・ 従前の居住地域に住むことができなくなった人が、遠隔地の身寄りや他地域の公営住宅等に広域的に避難する。
・ 指定避難所以外の避難所が多数発生し、状況の把握が困難になるほか、支援が十分に行きわたらない避難所が発生する。
被災地への燃料供給は十分ではない
燃料供給不足が全国に広がり、被災地外の企業活動にも影響が出る。
遺体の安置場所、棺、ドライアイスが不足し、夏季には遺体の腐乱等による衛生上の問題が発生する。
・ また、火葬場の被災、燃料不足等により火葬が困難となり、衛生上の問題から土葬が必要となるが、都市部では土葬の可能な場所が限定されることから、遺体の処理が困難となる。

次回へ・・・。