「真実の口」2,150 来るべき大地震に備えて ⑫

前回の続き・・・。

前回、平成 25 年 3 月 18 日に開催された『中央防災会議 防災対策推進検討会議』の中で『南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ』がまとめた震災後に想定される全国の状況をお伝えしたが、今回は、被害が甚大だった地域の想定される状況をお伝えする。

《 震災直後 》

◎ 建物・人的被害

ほとんどの地域で耐震性の低い住宅が倒壊し、多数の死傷者や要救助者が発生する。
津波により、多くの住宅が流される
大津波警報が発令され、沿岸部では高い場所への避難が行われるものの、多数の死者・行方不明者が発生する。
火災が発生するが、道路の損壊・渋滞等により、消火活動は限定される。
停電のため、テレビから情報が得られない。

◎ ライフライン被害

電力は、 9 割が停電する。
固定電話は、電線被害や停電等により、 9 割が不通となる。
携帯電話は、伝送路ある固定電話の不通等により、 2 割の基地局が停波する。
・ また、輻輳により 9 割が通話不能となる。
インターネットは、伝送系の被災により、2割が接続不能となる。
メールは、 8 割程度は接続可能だが、伝達速度が遅くなる
上水道は、 9 割が断水する。
下水道は、 9 割が利用不可となる。
都市ガスは、 9 割で供給が停止する。

◎ 交通施設被害

国道、県道、市町村道の多くの箇所で、亀裂や沈下、沿道建築物の倒壊等が発生し、通行が困難となる。
・ 車線数の多い幹線道路では通行は可能であるが、都市部では渋滞が発生し、通行が麻痺する。
高速道路は、被災と点検のため、通行止めとなる。
新幹線は、全線が不通になる。
在来線は、ほとんどが不通となる。
津波により、港湾内が被害を受け機能を停止する。

◎ 生活への影響

倒壊家屋、焼失家屋、津波からの避難者は、避難所に避難する。
・ 避難者を収容しきれない避難所もあり、相当数が空き地や公園等に避難する。 ・ ・ ガソリンスタンドは、停電により給油が出来なくなる

◎ 災害応急体制等

・ 複数の庁舎が浸水や倒壊のおそれで使えなくなる。
・ 指揮命令権者や職員が被災し、災害応急対策が混乱する。
・ 停電により、住民への情報伝達は、非常用電源による防災行政無線と緊急速報メールのみとなる。
・ 停電と通信の途絶により、消防団等の初動対応が十分にはなされない。
・ 停電と通信の途絶により、被害状況が把握できない。

《 発災当日から翌日、 2 日後の様相 》

◎ ライフライン被害

電力需給バランスの不安定化による停電は供給ネットワークの切り替えにより順次解消されるが、全体の解消には 3 日程度を必要とする。
・ 翌日以降、電力需要が回復した時、計画停電を含む需要抑制が行われる場合がある。
携帯電話の基地局の非常用電源が数時間で停止し、数時間後から翌日にかけて不通エリアが最大となる(約 8 割の基地局が停波)。

◎ 交通施設被害

・ 国道や県道は道路啓開が開始されるが、緊急輸送に使えるようにするためには、 1 日以上を必要とする。
・ 特に津波浸水エリアに進入する緊急仮復旧ルートの確保には時間を必要とする。 ・ 都市部では交通規制が行われるが、渋滞が発生し、緊急通行車両の移動にも時間がかかる。
・ 道路啓開が必要であることから、更に遅れる場合もある。
・ 高速道路は一般車両の誘導、仮復旧などが行われるが、緊急通行車両が通行できる状況になるまで、 2 ~ 3 日を必要とする。
・ 空港では、点検後、当日から翌日にかけて順次運航を再開する。
・ また、救急・救命活動、緊急輸送物資・人員等輸送の運用が行われる。

◎ 生活への影響

食料・飲料水の供給は、家庭内備蓄と県・市町村の公的備蓄で対応するため、物資が大幅に不足する避難所が発生する。
・ 避難者のいる場所・人数等の情報把握に時間を要し、県・市町村の食料・飲料水の備蓄からの配給が十分に行き届かないところが発生する
・ 非常用電源の燃料がある施設でも、燃料の供給が滞るため、電力供給の再開時期によっては停電となる。
食料品店やコンビニエンスストアの商品は、その日のうちに無くなる
ガソリンスタンドへの補給は、 2 ~ 3 日では可能とならない
停電により、被災地域での新たな食料生産は停止する。

◎ 災害応急体制等

・ 通信が途絶することから、被災状況の全体像の把握のため、各機関によりヘリコプターによる上空からの調査が実施される。
・ 人員数、道路状況により、消火活動には限界があり、更に延焼が広がる
・ 道路啓開に 1 日~数日を要することから、他地域からの救援活動のための自動車乗り入れは限られ、早くても翌日以降となる。
・ 自衛隊、警察、消防の部隊の乗り入れは、まず、ヘリコプターによってなされる。 ・ 救急医療活動もヘリコプターによってなされる。
・ 病院等も停電の影響を受けるため、非常用電源が配備されている施設以外は治療が困難となる。

《 3 日後の様相 》

◎ ライフライン被害

電力は、 5 割が停電のままである。
・ 電力需要の回復により、計画停電を含む需要抑制が行われる場合がある。
固定電話は、 5 割が不通のままである。
上水道は、 8 割が断水したままである。
下水道は、 4 割が利用できないままである。
都市ガスは、 8 割が供給を停止したままである。
・ 域外からの復旧支援が始まるが、被害量が多く支援要員が不足する。

◎ 交通施設被害

高速道路は、仮復旧が完了する。
直轄国道等は、一部で不通区間が残るが、内陸部の広域ネットワークから沿岸部の浸水エリアに進入する緊急仮復旧ルートの 7 割が確保される。
・ 交通規制により緊急通行車両の通行が優先され、災害応急対策が本格的に開始される。
新幹線及び各在来線は、不通のままである。
港湾施設では、航路啓開、港湾施設の復旧、荷役作業の体制の確保等が始まる。 ・ 津波被害が軽微な港湾や、優先的に啓開した港湾で入港が可能となり、緊急輸送が始まる。

◎ 生活への影響

在宅者が、食料・物資の不足や断水等により避難所に移動し始め、避難所避難者数が増加する。
・ 避難者のいる場所・人数の確認、救援物資の内容・必要量の確認が十分にできない。
避難所等で、特設公衆電話、移動用無線基地局車の配備等による限定的な通信確保が進められる。
・ 燃料供給が不足し、ガソリン等の入手が困難である。
燃料が不足し、非常用発電、物資輸送、工場の稼働等が停止する。

《 1 週間後の様相 》

◎ ライフライン被害

電力は、停電の大部分が解消されるが、電力需要の回復により、計画停電を含む需要抑制が行われる場合がある。
固定電話は、 2 割が不通のままである。
上水道は、 7 割が断水したままである。
下水道は、 4 割が利用できないままである。
都市ガスは、 6 割が供給を停止したままである。

◎ 交通施設被害

高速道路は、交通規制により緊急通行車両のみ通行可能となる。
直轄国道等は、一部で不通区間が残るが、浸水エリアに進入する緊急仮復旧ルートが概成する。
緊急通行車両として標章発行の対象となる車両が徐々に拡大され、民間企業の活動再開等に向けた動きが本格化する。
新幹線及び各在来線は、不通のままである。
在来線は、バスによる代替輸送が開始される。
・ 被災した港湾のうち、約半数の港湾について災害対策利用が可能となる。

◎ 生活への影響

避難所避難者数は発災後最も多くなる
・ 多数の避難者が避難所での生活を送るようになり、日数が経過するにつれ、食料や救援物資の配給ルールや場所取り等で避難者同士のトラブルが発生する。
・ 自治体間や避難所間で、食事の配給回数やメニュー、救援物資の充実度等にばらつきや差が生じ始める。
・ 指定避難所以外の避難所が多数発生し、状況の把握が困難になるほか、支援が十分に行きわたらない避難所が発生する。
・ 居住地域に住むことができなくなった人が、遠隔地の身寄りや他地域の公営住宅等に広域的に避難する。
・ トラック等の災害応急対策を担う車両の燃料が不足する。
遺体の安置場所、棺、ドライアイスが不足し、夏季には遺体の腐乱等による衛生上の問題が発生する。
・ また、火葬場の被災、燃料不足等により火葬が困難となり、衛生上の問題から土葬が必要となるが、都市部では土葬の可能な場所が限定されることから、遺体の処理が困難となる。

次回へ・・・。