「真実の口」1,738 新型コロナウィルス・・・239

前回の続き・・・。

“幸せな低酸素血症”

報道でも、時折、取り上げられているので、聞いたことがある方もいると思う。

英語では、“ Happy Hypoxia ”と言われている。

“低酸素血症”とは、動脈血中の酸素が少なくなる状態のことを言う。

本来、人は、呼吸によって酸素を吸い込むと、動脈血に酸素を溶かして全身に巡らせ、身体の細胞の隅々に酸素を供給するように出来ている。

しかし、“低酸素血症”になると、動脈血に溶ける酸素の量が著しく少なくなるため、身体の隅々に酸素を送ることができなくなり、例えば、脳細胞が破壊されるなどして最終的に命に係わる重篤な症状である。

“低酸素血症”となる原因は、様々で、発熱などによって代謝が亢進され、血液の流れが速くなると肺を通過する血液の流れも速くなり、肺の毛細血管を通過する時間も早くなり、血液に酸素を充分に溶かせないまま身体中を巡ってしまうため“低酸素血症”を起こしうることになるらしい。

また、発熱によって脈拍が速くなると身体に血液を送る速さも早くなり、発熱時は呼吸数も増えるため酸素の需要も増えるため、これによって先ほどと同様に肺を通過する血液の流れが速くなり、酸素を充分に動脈に取り込めずに、“低酸素血症”を起こしてしまうこともあるらしい。

そのため、“血中酸素飽和度”を測ることが重要なことになってくるわけである。

新規感染者が増える中、自宅療養者の数も日に日に増えている。

少し古くなるが、厚生労働省は、都道府県ごとの病床の使用率や患者の療養先について最新の状況を発表した。

新型コロナウィルス感染症患者の療養状況、病床数等に関する調査結果( 9 月 1 日 0 時時点)

要は先月末時点ということになる。

全国: 135,859 人
東京都: 19,792 人
大阪府: 17,723 人
愛知県: 16,058 人
神奈川県: 14,546 人
千葉県: 10,820 人
埼玉県: 9,271 人
福岡県: 7,869 人
京都府: 7,258 人
兵庫県: 4,462 人
静岡県: 4,155 人
三重県: 3,906 人
沖縄県: 3,009 人
北海道: 2,379 人

これ以外にも、茨城県、栃木県、滋賀県、岡山県、広島県は 1,000 人を超え、“緊急事態宣言”対象地域で 1,000 人を下回っているのは、宮城県と群馬県のみである。

新型コロナウィルスへの感染が確認されたものの“軽症”であると診断され、自宅で経過観察を支持されていた方が、突如、“重症化”して、急死したという報道が増えてきている。

その一因が、“幸せな低酸素血症(ハッピーハイポキシア)”なのである。

元々は、航空医学で使われている言葉で、パイロットに起こる症状である。

航空機の場合、高度 18,000ft における酸素分圧は 1/2 程度としており、パイロットの場合は、高い高度で飛行していた場合などにおいてこの“幸せな低酸素血症”を起こす可能性が考えられている。

実際に、墜落事故を起こしたパイロットの中にこの“幸せな低酸素血症”に陥った可能性があるのではないかと思われているようだ。

何故、低酸素状態なのに“ハッピー”なのかと言うと、多幸感に包まれ、とても気持ちの良い気分になるそうなのだ。

例えば、自分の名前が書けなくなったり、今までできていた行動がとれなくなったり、判断能力が鈍ったりするそうなのだ。

多幸感に陥ったことにより、正確な判断がつかなくなり、“低酸素血症”の症状が出ていたとしても自分が“低酸素血症”となっていることにさえ、気づけなくなり初期症状を見逃してしまうことになるらしい。

そのため、気づいた時には“重症化”しており、死亡に至ると言う訳だ。

愛知県で、 8 月 30 日朝、東海市の県道で信号待ちをしていた車に、男性が運転する軽乗用車が低速で追突するという事故が起きた。体調が悪化し、正常な運転ができなくなっていたとみられる。

男性には、外傷は無かったが、病院で死亡が確認された。

男性が心肺停止状態で搬送されてきたのは同日午前七時半ごろで、死後に抗原検査と PCR 検査を実施したところ、コロナ陽性と判明。

コンピューター断層撮影(CT)の結果、両肺は肺炎が進み、人工呼吸器が必要な重症状態だったそうだ。

医師によると、男性は肺炎が進んだ状態で、深刻な酸素不足にもかかわらず息苦しさを感じないコロナ患者特有の“幸せな低酸素血症”だった可能性があるとした。

パイロット、トラックの運転手、バスの運転手、etc・・・。

感染が分からず、運転している間に、“幸せな低酸素血症”落ちいったとしたら怖いものがある。

これからは、乗車前のアルコールチェックのみでなく、血中酸素飽和濃度チェックも必要になりそうだ。

また、自宅療養者・宿泊療養者には、自治体からパルスオキシメーターが届けられるようになっているようだが、感染者急拡大によって、保健所職員の手が回らず、手元に届かない、手元に届くのに日数が掛かる等、数多くの報告されている。

一般的に、健康の人の正常値は 96~100% とされ、 90% 以下になると“幸せな低酸素血症”で、酸素投与などの治療が必要になる。

因みに、酸素飽和濃度による新型コロナウィルスの症状分類は以下のようになっている。

COVID-19重症度分類

タレントの野々村真さんが新型コロナウィルスに感染し、一時、重篤な状態に陥ったことは記憶に新しい。

野々村さんは、 7 月 30 日に陽性が判明し、その夜に 38℃ の発熱などの症状があったものの、保健所の指示で自宅療養となった。

その後、パルスオキシメーターで計測した血中酸素飽和度の値が「 90 」に下がり、いったんは緊急搬送を要請。

しかし、救急車が到着した際の同値が「 96 」に上がったために、搬送を見送ることになったのだが、結局、保健所の指示で、翌日に入院となったそうだ。

急激な数値の変化は何故なのか?

医療ガバナンス研究所の上昌広理事長:
「心臓や肺という二つの臓器は人の死に直結します。本来であれば肺炎は、症状が軽くても、入院治療させ、 1 ~ 2 日間、経過観察する。なぜなら、急激に症状が変わるのが特徴だからです。つまり、総合的に判断する必要がある病気にもかかわらず、新型コロナは、呼吸不全の一つのマーカーに過ぎない簡易な酸素モニターで症状を見抜こうという。この考え方自体に無理があると言わざるを得ません。」

医師に言わせると、「パルスオキシメーター」の数値だけで素人が勝手に判断するのは危険極まりないということのようだ。

自宅療養者はどうしたら良いのだろう?

次回へ・・・。