「真実の口」2,056 ‟がん”という病 ②~日本人のための‟がん”予防法( 5+1 )編(その1)~

前回、日本人の‟がん”発症の原因は生活習慣であるという風に寄稿した。

以下は、令和 4 年 8 月時点でのエビデンスに基づいて、日本人の‟がん”発症の原因をまとめたものである。(参照:がん情報サービス)

日本人のがん発生原因

男性・女性の最下部にある‟全体”という項目、男性 43.4%、女性 25.3% は、ここにあげた生活習慣や感染が原因で‟がん”になったと考えられるものだが、複数のリスク要因が組み合わさって‟がん”になった場合を調整しているため、各項目の単純合計値にはならない。

国立がん研究センターをはじめとする研究グループでは、日本人を対象としたこれまでの研究を調べ、その結果、日本人の‟がん”の予防にとって重要な、‟禁煙”‟節酒”‟食生活”‟身体活動”‟適正体重の維持”の 5 つの改善可能な生活習慣に、‟感染”を加えた 6 つの要因を取りあげ、『日本人のための‟がん”予防法( 5+1 )』を定めている。

初めて聞いた方が多いのではないだろうか?

私も始めて知った・・・(笑)。

1. 喫煙

☞ たばこは吸わない。
☞ 他人のたばこの煙を避ける。

【能動喫煙】

非喫煙者に対する喫煙者の‟がん”全体のリスクは、 1.5 倍(男性: 1.6 倍、女性: 1.3 倍)と推計されている( Inoue et al. Jpn J Clin Oncol 2005 )。

また、日本人を対象とした‟がん”死亡のリスクは、男性 2 倍、女性 1.6 倍程度と推計されている( Katanoda et al. J Epidemiol 2008 )。

上述の相対リスクと喫煙者の割合などから推計すると、日本人の‟がん”死亡の約 20 ~27 %(男性では 30 ~ 40% 程度、女性では 3 ~ 5% 程度)は喫煙が原因であり、即ち、喫煙していなければ予防可能であったと言える。

本人の喫煙が、‟がん”罹患・死亡に寄与する割合は、男性で罹患 23.6% 、死亡 29.8%、女性で罹患 4.0% 、死亡 4.7% と試算されている。

日本人男性にとって‟がん”に寄与する割合が最も高い要因となっている( Inoue et al. Glob Health Med. 2022 )。

【受動喫煙】

日本人非喫煙女性を対象としたコホート研究では、肺腺がんのリスクは、夫が喫煙者である場合に、非喫煙者である場合と比べて、約 2 倍(肺がんのリスクは約 1.3 倍)高いことが示された( Kurahashi et al. Int J Cancer 2008)。

また、同じコホート研究で、閉経前の非喫煙女性において、家庭あるいは職場など公共の場所で受動喫煙を受けていたグループの乳がんリスクは、受動喫煙のないグループの 2.6 倍高いことが示された( Hanaoka et al. Int J Cancer 2005 )。

受動喫煙が‟がん”罹患・死亡に寄与する割合は、男性で罹患 0.2%、死亡 0.3% 、女性で罹患 0.9% 、死亡 1.3% と試算されている( Inoue et al. Glob Health Med. 2022 )。

あるコホート研究の 1990 年のデータ( Hanaoka et al. Int J Cancer 2005 )では、非喫煙の男性と女性について、配偶者から各々 8% と 35% 、職場において各々 58% と 32% が、受動喫煙の曝露を受けていると回答していた。

近年、職場を含む公共の屋内空間を禁煙とする罰則を伴う法規制が、欧米やアジアの国・地域において一般的になっている。

日本でも、 2018 年 7 月、健康増進法の一部を改正する法律が成立し、 2020 年 4 月 1 日より全面施行され、受動喫煙を防止する動きはあるが、更に、一歩進んだ取り組みが必要なのかもしれない。

2. 節酒

☞ 飲むなら、節度のある飲酒をする。

飲む場合はアルコール換算で 1 日あたり約 23g 程度まで、日本酒なら 1 合、ビールなら大瓶 1 本、焼酎や泡盛なら 1 合の 2/3 、ウィスキーやブランデーならダブル 1 杯、ワインならグラス 2 杯程度となるらしい。

日本人を対象とした研究に基づいて、飲酒により‟がん”全体のリスクが上がることは‟確実”と評価された( Inoue et al. Jpn J Clin Oncol 2007 )。

部位別には・・・。

【確実】

肝臓( Tanaka et al. Jpn J Clin Oncol 2008 )
大腸( Mizoue et al. Jpn J Clin Oncol 2006 )
食道( Oze et al. Jpn J Clin Oncol 2011 )
男性の胃( Shimazu et al. Jpn J Clin Oncol 2008, Tamura et al. Cancer Sci 2022 )

【ほぼ確実】

閉経前女性の乳房( Nagata et al. Jpn J Clin Oncol 2007, Iwase et al. Int J Cancer 2021 )

※その他、多くの‟がん”についてはいまだに“データ不十分”と判定されている。

日本人男性を対象としたあるコホート研究で、 1 日あたりの平均アルコール摂取量(純エタノール量)で 46g 以上の飲酒で 40% 程度、 69g 以上の飲酒で 60% 程度、‟がん”全体のリスクが上がることが示された。

これらの飲酒量に該当する人の全体に対する割合も考え合わせると日本人男性の‟がん”の 13% 程度が、 1 日 2 合以上の飲酒習慣によりもたらされているものと推計される( Inoue et al. Br J Cancer 2005 )。

●大腸がん( Mizoue et al. Am J Epidemiol 2008 )

1 日のアルコール摂取量とリスク
23 ~ 45.9g ・・・ 1.4 倍
46 ~ 68.9g ・・・ 2.0 倍
69 ~ 91.9g ・・・ 2.2 倍
92g 以上・・・・・ 3 倍

●肝臓がん( Shimazu et al. Int J Can 2011 )

〈男性〉
1 日のアルコール摂取量とリスク
23 ~ 45.9g ・・・ 1.1 倍
46 ~ 68.9g ・・・ 1.1 倍
69 ~ 91.9g ・・・ 1.8 倍
92g 以上・・・・・ 1.7 倍

〈女性〉
1 日のアルコール摂取量とリスク
23g以上 ・・・ 3.6 倍

ただし、男性の全死亡、全‟がん”、循環器疾患死亡において、また女性の全死亡、心疾患死亡において、 1 週間当たり 46g 未満、あるいは、23g 未満の飲酒では、リスクの上昇が認められない J 字型、あるいは、リスクの低下が認められる U 字形の関連がみられている( Inoue et al. J Epidemiol Community Health 2010 )。

したがって、常勤の推奨されている節度のある飲酒であれば‟百薬の長”となり得るということなのだろう(笑)。

飲酒が全‟がん”罹患、死亡の原因として寄与する割合は、男性で罹患 8.3% 、死亡 8.8% 、女性で罹患 3.5% 、死亡 3.0% と試算されており、男女共に喫煙・感染に次いで寄与の高い要因であることが示された( Inoue et al. Glob Health Med. 2022, Hirabayashi et al. Glob Health Med Open. 2022 )(※注)

(※注) 2005年の国民健康・栄養調査:飲酒割合男性 71.7% 、女性 36.9% に基づいて推計。

また、 2019 年の国民健康・栄養調査によると、生活習慣病のリスクを高める量( 1 日当たりの純アルコール摂取量が男性で 40g 以上、女性で 20g 以上)を飲酒している人の割合は、男性 14.9% 、女性 9.1% と推計されている。

年齢別にみてみると、その割合は男性では 40 歳代、女性では 50 歳代が最も高く、それぞれ 21.0% 、 16.8% となっている。

酒呑童子と呼ばれる私は、ビール 135ml 缶・ 1 本、日本酒 3 合を飲んでいる(笑)。

アウトだな・・・((((( ̄_ ̄;)サササササッ

次回へ・・・。