「真実の口」2,062 ‟がん”という病 ⑨~寿命と‟がん”編(その2)~

前回の続き・・・。

私的なことだが、実兄の死によって休稿していたが、再開する。

以下は、国立がん研究センター HP に記載されているものである。

細胞不死化酵素‟テロメラーゼ”に新しい‟がん化”機能を発見~全く新しいタイプのがん治療法の開発を期待~

2020年3月25日

国立研究開発法人国立がん研究センター
金沢大学
東北大学
国立研究開発法人日本医療研究開発機構

■ 概要

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所・がん幹細胞研究分野の増富健吉分野長、金沢大学附属病院総合診療部の山下太郎准教授および医薬保健研究域医学系の金子周一教授、東北大学大学院医学系研究科抗体創薬研究分野の加藤幸成教授らの共同研究グループは、細胞不死化酵素として知られている‟テロメラーゼ”に、細胞の‟がん化”に深く関わる別の新しい機能があることを明らかにしました。

さらに、この新たな機能は、肝臓がんや膵臓がんのうちでも悪性度が高いものほど活発であること、また、その機能を保持するスイッチのオン・オフに関する機序の解明にも成功しました。

これらの知見をもとに、‟テロメラーゼ”の新たな機能を抑制する全く新しいタイプの‟がん”治療法の開発が期待されます。

本研究成果は、 2020 年 3 月 25 日に英国科学誌『 Nature Communications 』に掲載されました。

テロメラーゼのがん化機能
図 1 :‟テロメラーゼ”の‟がん”化機能

青)細胞が無制限に細胞分裂できる不死化機能によりがん化が進む。
赤)分子 CDK1 によりスイッチが入り、‟がん”化が進む新たな機能。新たな治療法の開発が期待される。

■ 背景

‟がん”細胞の最大の特徴の一つとして、何度でも細胞分裂を続けることができるという性質があります。

この「‟がん”細胞が無制限に細胞分裂できる能力」のことを専門用語では「細胞不死化能」といいます。

一方、正常な細胞は、細胞分裂の回数に制限があり、無制限に細胞分裂を繰り返すことはできません。

このように、‟がん”細胞には不死化能があるのに対して、正常細胞には不死化能がないことが大きな違いであったため、約 30 年にわたり多くの研究者によって、‟がん”細胞はどのようにして細胞不死化能を獲得するのかという研究が行われ、 1997 年に細胞不死化酵素として‟テロメラーゼ”という分子が発見されました。

その後も、世界中のがん研究者らは、細胞不死化能の有無に着目して、‟テロメラーゼ”を阻害する薬剤の開発を進めてきましたが、‟がん”治療として十分に効果がある薬剤は開発できませんでした。

また、近年、世界中の‟がん”研究者が参加する国際共同研究による、「‟がん”全ゲノム解読」により‟テロメラーゼ”が大変重要であることが改めて証明されることとなりました。

例えば、 C 型肝炎関連肝臓がんなどでは、患者検体を用いた大規模ゲノム解析で、約 7 割の症例で‟テロメラーゼ”が発‟がん”過程における最も重要な分子であることが報告されています。

‟テロメラーゼ”は、もともと細胞不死化酵素として同定された分子であることから、これまでは、この‟テロメラーゼ”の役割は唯一、「細胞に不死化能を付与する」ものと理解されてきましたが、「‟テロメラーゼ”の細胞不死化能を阻害する」という考え方に基づくと、‟がん”治療薬の開発が順調に進展しなかったことなどから、‟テロメラーゼ”には別の働き(=新たな機能)があるのではないかと考える研究者らが出てきました。

このように、‟がん”遺伝子情報の大規模な解析から、‟がん”治療に対する標的として‟テロメラーゼ”分子の重要性が再認識されました。

一方で、過去 20 年以上にわたる、細胞不死化酵素としてのテロメラーゼを標的とした‟がん”治療薬の開発戦略は行き詰まっており、新たな分子機序の発見が待ち望まれています。

このような背景の下、本共同研究グループは・・・

1) 新たな‟テロメラーゼ”の分子機序の探索
2) ‟テロメラーゼ”の新たな機能が、‟がん”細胞で活発に作用しているのか
3) どのようにして‟テロメラーゼ”の新たな機能のスイッチが入るのか

・・・に関して研究を進めてきました。

専門的なので飽きられないように次回へ・・・。