「真実の口」2,064 ‟がん”という病 ⑪~寿命と‟がん”編(その4)~

前回の続き・・・。

厚生労働省の「簡易生命表(令和 3 年)」によると、 2021 年の日本人の平均寿命は男性 81.47 歳、女性 87.57 歳で、過去最高を更新した 2020 年(完全生命表)と比較して男性は 0.09 年、女性は 0.14 年下回ったそうだ。

また、平均寿命の男女差は 6.10 年で前年より 0.05 年縮小した。

ところで、日本人の平均寿命はどのように変遷しているのだろうか?

ただし、江戸時代以前は記録が少ないということ、平均寿命を割り出し方が異なるということ(縄文時代や室町時代は人骨の推定死亡年齢から平均寿命を割り出していて、平安時代の寿命は貴族だけで割り出している)で、現在に比べるとかなり不確かな数字なのであくまで参考程度である。

旧石器・縄文時代・・・ 15 歳前後
弥生・古墳時代・・・ 10 ~ 20 代
飛鳥・奈良時代・・・ 28 ~ 33 歳
平安時代・・・ 30 歳
鎌倉時代・・・ 24 歳
室町時代・・・ 15 歳前後
安土桃山時代・・・ 30 代

そして、江戸時代はというと、全体的な人数はある程度把握できているものの、きちんとした戸籍制度がなかったため、生まれた子どもの数が知られていないということも多く、
そのため、調査方法によって平均寿命にばらつきが出てしまったるようだ。

江戸時代・・・ 32 ~ 44 歳前後

そして、近代で、ここでは男性に焦点を当てるが・・・。

明治・大正時代・・・ 43 歳前後
昭和初期(大正 15 年~昭和 5 年)・・・ 45 歳前後
1947 年・・・ 50 歳
1951 年・・・ 60 歳
1971 年・・・ 70 歳
2013 年・・・ 80 歳

戦後、急激に平均寿命が延びていることが分かる。

伸びた理由は、乳幼児の死亡率の低下、結核などへの医療の進歩、生活環境の改善、などがあげられる。

乳幼児の死亡率は、現在では 3% 程度だが、大正期までは 15% 程度と非常に高かった。

さあ、このように寿命が延びてくることにより、‟がん”発症との闘いが始まってくるはずだったのだが、近年、 50 歳未満で発症する‟がん”の増加が世界的な問題となっている。

原因は、‟質の悪い食生活”、‟肥満”、‟運動不足”などの要因が関連しているとされている。

昨年 9 月 6 日、米・ボストンのブリガムアンドウィメンズ病院の上級研究員であり、米・ハーバード大学医学大学院・公衆衛生学大学院教授でもある野周史氏らにより、「 Nature Reviews Clinical Oncology 」に論文が発表されている。

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原文:Cancers in People Under 50 Are Rising Worldwide
参考:荻野周史のブログ

研究者によると、 1990 年代以降、 50 歳未満の人々の間で多くの国でさまざまな癌の発生率が上昇している。

そして、その理由は完全には明らかではないが、人生の早い段階から始まるライフスタイルや環境の変化が大きな要因になる可能性があるとしている。

この研究では、ここ数十年で、アメイリカとカナダ、スウェーデンとイギリス、エクアドル、ウガンダ、韓国など、さまざまな国の若年成人で 14 の‟がん”の発生率が毎年増加していることがわかっている。

14 種類の‟がん”とは、乳房、大腸、子宮内膜、食道、肝外胆管、胆嚢、頭頸部、腎臓、肝臓、骨髄、膵臓、前立腺、胃、甲状腺の‟がん”である。

特定の‟がん”では、検診の増加が発生率の上昇を部分的に説明している可能性があると、ボストンのブリガムアンドウィメンズ病院の上級研究員である荻野修二教授は述べている。

乳がんや結腸がんなどの病気のスクリーニング検査は、より早い時点でより多くの症例を検出できる。

しかし、ほとんどの場合、若年成人の‟がん”発生率の増加は、検出の増加から予想されるものを超えているとしている。

そして、増加している‟がん”の多くは消化管に沿って発生します—「口から肛門までどこでも」と荻野は言い、それは、‟マイクロバイオーム”の潜在的な役割を指摘していると彼は付け加えた。

‟マイクロバイオーム”とは、通常、体内の主に消化管に住む膨大な数の細菌を指す。

近年の研究により、‟マイクロバイオーム”が全体的な健康にとってどれほど重要であり、免疫に役割を果たし、慢性炎症やその他の重要な機能と闘うかが明らかになっている。

誰にとっても、‟マイクロバイオーム”の構成は部分的に遺伝子に依存する。

しかし、荻野教授は、‟食事”、‟アルコール摂取”、‟喫煙”、‟運動”、‟抗生物質の使用”など、環境要因も重要であると指摘している。

そして、これらの環境曝露の多くは、ここ数十年で大幅に変化している。

「西洋型の食生活」の普及は明確な例であると荻野氏は述べたている。

高度に加工された食品、砂糖、赤身の肉が多く含まれているが、果物、野菜、繊維、および結腸癌などの特定の‟がん”のリスクの増加に関連している品質である「良い」脂肪は少ない。

若年成人における結腸がんの増加は、特に注目を集めている。

米国国立がん研究所によると、 50 歳未満のアメリカ人のこの病気の発生率は、  65 歳以上の人々の減少とは対照的に、 1990 年代から 2 倍以上になっている。

実際、この傾向により、専門家は結腸がんスクリーニングの推奨開始年齢を引き下げるようになった。

現在、この病気のリスクは、平均年齢は 45 歳となっている。

ワシントン DC の MedStar ジョージタウン大学病院の准教授であるベンジャミ・ンワインバーグ博士は、早期発症の結腸癌における‟マイクロバイオーム”の潜在的な役割を研究している。

博士はまた、病気の患者を治療もしている。

若年成人が結腸がんを発症すると、初期の腫瘍に対する免疫系の反応がうまくいかなくなったことが示唆されているとワインバーグ氏は述べている。

また、‟マイクロバイオーム”の多様性が、その免疫応答をサポートする可能性があるといういくつかの証拠があるとワインバーグ氏は言っている。

一方、特定のバクテリアはそれを妨害する可能性があり、歯周病に関連するバグであるフソバクテリウム・ヌクレアタムはその好例である。

研究によると、 F. nuc は、結腸の免疫応答を抑制することにより、‟がん”の成長を促進する可能性があり、そしてワインバーグ氏と彼の同僚は、若年成人の結腸腫瘍が細菌の存在率が高いことを発見している。

もちろん、子供や若年成人の肥満は近年急増している。

そして、人口レベルでは、肥満と結腸がんのリスクの間には関係があるとワインバーグ氏は述べている。

しかし、この病気と診断された多くの若者は肥満ではなく、発生率の上昇の背後にある理由は単一の要因を超えている。

様々な早期発症‟がん2の増加を引き起こしているものを理解するには、さらに多くの研究が必要であると両方の医師は述べている。

しかし、ワインバーグ氏は、専門家が長い間アドバイスしてきたことを行うのが賢明であると述べまている。

栄養豊富な自然食品でいっぱいの健康的な食事を食べる(他の多くの利点の中でも、多様な腸内細菌叢を促進する可能性があります)。
定期的に運動する。
禁煙。
アルコールを制限する。
必要な場合にのみ抗生物質を服用。

そして、荻野氏は、健康的な生活習慣は人生の早い段階で培われるべきだと述べている。

「最も重要なメッセージは、将来の子供の‟がん”リスクは、あなたが今何をするかにかかっているということです」と荻野氏は強調する。

しかし、彼は、簡単にアクセスできるジャンクフードと座りがちなスクリーンタイムの世界では、両親が助けを必要としていると付け加えた。

荻野氏によると、「健康的な食事、定期的な運動、健康的な睡眠パターンなどを優先するのは社会次第である。」そうだ。

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結局、日本人のための‟がん”予防法( 5+1 )に行きつくようだ(笑)。