「真実の口」2,066 ‟がん”という病 ⑬~‟がん”治療編(その1)~

前回の続き・・・。

《あなたにとっての「最適な治療」を探すこと》

「どんな治療があるのだろう。入院になるのかな・・・?」
「わたしにとって最適な治療は何だろう・・・?」
「セカンドオピニオンって聞けるの・・・?」
「副作用が心配。治療したらわたしの体は変わってしまう・・・?」
「将来、子どもをもてるだろうか・・・?」

1.あなたの希望をふまえて、「最適な治療」を見つける

☞ ‟がん”の治療法には、手術(外科治療)、薬物療法(抗がん剤治療など)、放射線治療などがある。

☞ 治療の期間や、入院するかどうかは、治療法やあなたの状況によって変わってくる。

☞ 主治医はまず、‟がん”の種類や進行の程度、体の状態などを検査でよく調べて、提案できる治療法の中から、あなたにとっての「最適な治療」を探る。

☞ 「最適な治療」の選択は、‟がん”治療だけでなく、治療が始まってからの生活のことも含めて、あなたが何を大切にしたいのかがポイントになる。

☞ あなたの希望を主治医に伝えることが第一である。
例えば、治療の中で何を大切にしたいか?
体への負担が少ないこと・・・。
時間、生活、仕事、将来のこと・・・。

※「標準治療」

科学的根拠に基づいた観点で、‟がん”の種類ごとに現在利用できる最良の治療であることが示され、多くの患者に行われることが推奨される治療を「標準治療」という。

新しい治療が「標準治療」になるためには、その効果や副作用などを調べる臨床試験によって、それまでの「標準治療」より優れていることが証明される必要がある。

つまり、新しい治療というだけでは最良の治療にはならないのである。

2.セカンドオピニオンを聞く

セカンドオピニオン

☞ 現在の主治医とは別の医師に診断や治療の選択などについて求める「第 2 の意見」を‟セカンドオピニオン”といい、主治医が提示した以外にも治療方法がないか知りたいときや、主治医の意見を別の角度から検討したいときに利用する。

☞ ‟セカンドオピニオン”を聞くことは、患者が納得して治療を受けるために行われるものである。

☞ 病院を変えるためのものではないが、結果として病院を変えることもある。

☞ ‟セカンドオピニオン”を聞く希望があるときには、まずは医療スタッフに伝える。

☞ 医師に言い出しにくいと感じるときには、‟がん相談支援センター”に相談する。

3.‟がん”治療の影響について聞いてみる

☞ ‟がん”治療の影響は、副作用として全身や体の一部にあらわれたり、外見が変化したり、人によっては気持ちに影響することもある。

☞ 治療後すぐにあらわれることもあれば、時には、数年~十数年、経ってからあらわれることもある。

☞ 治療を始める前に、これから自分の体や心に起こりうることやその対処法を知っておくことは、あなたの助けになる。

☞ 治療が終わってからの生活のことや気になることも、主治医や看護師など医療スタッフや、‟がん相談支援センター”で話をしてみよう。

《治療を始める前に確認したいこと~将来子どもを持ちたい方へ~》

・治療の前に、将来子どもを持ちたいか考えることも大切である。

・妊孕性(にんようせい)は子どもをもうけるために必要な能力のことで、性別や‟がん”の種類にかかわらず、‟がん”の治療によって、妊孕性が弱まったり、失われたりすることがある。

・最近では、将来自分の子どもを持つ可能性を残すための「妊孕性温存」が可能なこともある。

「妊孕性温存」のための治療は、‟がん”の治療が始まる前に受ける必要があるので、将来子どもを持つことを望むのかどうかについて、考えてみることも大切である。

4.あなたには、医療チームがついている

☞ これから治療にのぞむあなたのことを、主治医を含め医療チームがサポートしていることを忘れない。

・医療チームはあなたにとっての「最適な治療」を考えるときにも加わり、治療法が決まったあとも、あなたに起こりうるその影響を考え、治療が始まってからの生活もサポートしてくれるので、いつでも声をかけれるという安心感を持って欲しい。

☞ 医療チームは、外科、内科、緩和ケア科など、さまざまな診療科の医師、看護師、薬剤師、歯科医、心理士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどから構成される。

☞ 誰に声をかけていいのかわからないときも、‟がん相談支援センター”へ尋ねる。

《あなたらしい生活を続けるために》

「仕事を辞めないで治療できる・・・?」
「親や子どもに何て言おう・・・?」
「身近に頼れる人がいない・・・。」
「治療費のことが心配・・・。」
「治療が終わっても気になることが出てきたらどうしよう・・・?」

1.治療しながら仕事を続けることもできる

☞ 仕事をしている方は、‟がん”と診断されて「仕事はもう続けられないのではないか?」と退職を考えてしまうかもしれないが、まずは、今後の治療スケジュールと仕事を続けられるかの見通しを主治医に確認しよう。

☞ 仕事を続けるのは大変なこともあるかもしれないが、治療をしながら仕事を続ける方も増えている。

☞ 経済的なことだけでなく社会とのつながりは大切なことであり、大切な決断は急いでひとりで決めずに、職場でどのように伝えたらよいのか、何を確認すればよいのかなども含め、‟がん相談支援センター”ご相談してみよう。

〈確認すること〉

① 職場の就業規則と福利厚生制度
☞職場の総務課・人事課で確認!

② 公的助成制度
☞ 職場の総務課・人事課のほか、‟がん相談支援センター”や、病院のソーシャルワーカーにも相談できる。

参考:がんと仕事 Q&A 第 3 版

2.子どもや親にどう伝えるか

☞ 身近な人だからこそ、伝えることをためらうかもしれないが、家族に病気のことを伝え、理解と協力を得ることがあなたにとってよいこともある。

☞ 自分が伝えたい内容や聞かれそうなことをメモにまとめておくと良い。

‟がん相談支援センター”で、どのように伝えたらよいのか一緒に考えることもできるので相談してみるのも良い。

※子どもに自分の病気を伝える

お子さんに伝えることはとてもつらいことかもしれないが、毎日一緒に生活していると、子どもは親の変化を敏感に感じ取り、心の距離が離れてしまうこともあるようだ。

「何という‟がん”か」「‟がん”はうつらない」「子どもや親が悪いわけではない」ことなどを伝えよう。

そして、これからの治療の見通し、生活の変化、助けてくれる人、協力をしてほしいことなど、お子さんの年齢や状況に応じて話しをしよう。

※親に自分の病気を伝える

親の年齢や健康状態によっては伝えることをためらうかもしれないが、親が元気で頼れるようであれば、これからの治療の見通しを伝え、手伝ってもらいたいことや自分のかわりにお願いしたいことも一緒に伝えよう。

親の健康状態に不安があったり、十分な理解が難しかったりする場合には、伝えるか伝えないか、伝えるとしたらどこまで話すか、あらかじめ考えておくと良い。

突然伝えるのではなく、まずは体調に不安があることを伝え、「あまりいい結果ではなかったので、今度詳しく話すよ」と、段階を踏むことで、親の心の準備ができる場合がある。

3.ひとり暮らしで心配なときに

☞ ひとりで暮らしている方も、‟がん”になると助けが必要になる場合がある。

☞ 身内や身近に頼れる人がいないなどの不安を感じるときやこれからの暮らしのことで困った場合には、‟がん相談支援センター”に相談する。

4.お金のことで心配なときに

☞ 多くの方は‟がん”の治療費について心配を伴うが、相談できる窓口を活用しよう。

☞ 病院の窓口では、自己負担限度額や、保険外になる食事、病衣、差額ベッド、診断書などの費用について聞くことができる。

☞ ‟がん”と診断されてからの必要なお金の一部は公的医療保険などで負担が軽減できる場合がある。

☞ 就業や収入の状況に合わせた支援制度もあり、例えば、高額療養費制度を利用すると治療費の負担が軽くなるなど、治療前に知っておくとよい制度がある。

☞「どこに相談したらいいのかわからない」というときには、まずは‟がん相談支援センター”に相談することから始めよう。

☞ 各医療機関の相談窓口、ソーシャルワーカー、各自治体の相談窓口に尋ねてみることもできる。

5.気持ちの落ち込みが続く場合は

☞ 困難な状況に適応する力は、誰の心にも備わっているのだが、個人差もあり、重い気持ちが長く続いてしまうこともあり、気持ちの落ち込みにより、眠れない、食べられないなどのつらい症状が 2 週間以上続く場合は、専門家による心のケアが必要となるかもしれないので、できるだけ早く、医師や看護師、‟がん相談支援センター”に相談しよう。

※「ピアサポート」

「ピアサポート」とは、同じ体験をした仲間(ピア: peer )がお互いに助け合うことであり、‟がん”と診断された方でなければわからない気持ちや体験を共有することが、他では得られない支えとなることがあり、体験者の話は患者会や‟がん”サロンなどで聞くことができるので、‟がん相談支援センター”で聞いてみよう。

次回へ・・・。