「真実の口」2,084 ‟がん”という病 ㉛~がんゲノム医療とがん遺伝子検査編(その3)~

前回の続き・・・。

4⃣ がん遺伝子パネル検査

ⅰ ) がん遺伝子パネル検査とは

がん遺伝子パネル検査は、生検(※注 1 )手術などで採取された‟がん”の組織を用いて、高速で大量のゲノムの情報を読み取る「次世代シークエンサー」という解析装置で、 1 回の検査で多数(多くは 100 以上)の遺伝子を同時に調べる。

(※注 1 ) 病変の一部を採って、顕微鏡で詳しく調べる検査で、生検組織診断とも呼ばれる。手術や内視鏡検査などのときに組織を採ったり、体の外から超音波(エコー)検査やX線検査などを行いながら細い針を刺して組織を採ったりするす。‟がん”であるかどうか?、悪性度はどうか?など、病理医が病変について詳しく調べて診断を行う。

遺伝子変異が見つかり、その遺伝子変異に対して効果が期待できる薬がある場合には、臨床試験などでその薬の使用を検討する。

・ 2022 年 4 月現在、がん遺伝子パネル検査の一部は保険診療先進医療で行われており、研究開発も活発にすすめられている。

ⅱ ) 検査の流れ

がん遺伝子パネル検査では、一度に多くの遺伝子を調べる。

・例えば、ある特定の遺伝子変異があった場合には、解析結果について複数の専門家で構成される委員会(エキスパートパネル)によって検討される。

・担当医はこれを診断や治療の参考にして、遺伝子変異に効果が期待できる薬があるかどうか検討を行う。

・効果が期待できる薬がある場合には、臨床試験などを含めてその薬の使用を検討する。

・効果が期待できる薬がない場合には、ほかの治療を検討する。

がん遺伝子パネル検査を実施して、遺伝子変異がなかった場合にも、他の治療を検討する。

【がん遺伝子パネル検査(がんゲノム医療)の流れ】
がん遺伝子パネル検査(がんゲノム医療)の流れ

ⅲ ) 検査の対象となる人や状態

・2019 年 10 月時点では、がん遺伝子パネル検査は誰でも受けられるわけではない。

・一般的には、①標準治療がない固形がん、②局所進行もしくは転移があり、標準治療が終了した(終了見込みを含む)固形がんの人で、次の新たな薬物療法を希望する場合に検討する。

・全身状態などの諸条件がある。
→研究の内容や目的に合った方(患者さんの疾患、治療歴など)
→他に病気がなく、安全性の確保のため体調に余裕のある方。
→新しい治療法を受けられる可能性がある一方で、効果がない、副作用を引き起こすなどの不利益を被る可能性があることも十分に理解した方。
→参加するための条件である「適格規準」を満たしている方。
→内容について説明文書を用いての説明を受け、同意書への署名をした方。

ⅳ ) 検査結果に基づく治療

がん遺伝子パネル検査を受けても必ず治療法が見つかるわけではないので、検査の前には、あらかじめ以下についても知っておくことが大切である。

( 1 ) がん遺伝子パネル検査で期待できること

がん遺伝子パネル検査を行って遺伝子変異が見つかった場合は、その遺伝子変異に対応した薬があれば、臨床試験などでその薬を使用することを検討でき、また、新たな治療法の開発などにつながる可能性がある。

( 2 ) がん遺伝子パネル検査の留意点と再確認

・検査の結果、遺伝子変異が見つからない場合もある。
・‟がん”の種類にもよるが、治療選択に役立つ可能性がある遺伝子変異は、約半数の患者で見つかる
遺伝子変異があっても、使用できる薬がない場合もあり、がん遺伝子パネル検査を受けて、自分に合う薬の使用臨床試験を含む)に結びつく人は全体の 10% 程度といわれている。
がん遺伝子パネル検査では、多くの遺伝子を調べるため、本来目的とする個別化治療とは別に、‟がん”になりやすい遺伝子をもっていることがわかる場合があり、これを二次的所見といい、この場合、将来の健康に対する不安が生じる可能性がある。
・但し、元々調べたい‟がん”のこと以外(遺伝性のがんなど)は、たとえ見つかったとしても結果を聞く必要はないし、もし、結果を聞く場合にも、十分な理解ができるように、病院は遺伝に関する相談の体制を整備している。
・以前に手術などで摘出したがんの組織を使用する場合もあるが、新たに組織を採取するために生検を行う場合は、生検に伴って体に負担が生じる可能性がある。

5⃣ がんゲノム医療を受けたいときには

ⅰ ) がんゲノム医療が行われている病院

がん遺伝子パネル検査は、「がんゲノム医療中核拠点病院」(※注 2 )、「がんゲノム医療拠点病院」(※注 3 )、「がんゲノム医療連携病院」(※注 4 )などで行われている。

(※注 2 ) 専門家が集まって遺伝子解析結果を検討する委員会(エキスパートパネル)を開催できるなどの基準を満たした病院で、加えて、‟がん”ゲノム情報に基づく診療や臨床研究・治験の実施、新薬等の研究開発、‟がん”ゲノム関連の人材育成等の分野において貢献するなどの基準も満たしている。

(※注 3 ) 専門家が集まって遺伝子解析結果を検討する委員会エキスパートパネルを開催できるなどの基準を満たした病院で、‟がん”ゲノム情報に基づく診療や臨床研究・治験の実施、新薬等の研究開発、‟がん”ゲノム関連の人材育成等の分野において、がんゲノム医療中核拠点病院と協力してゲノム医療を行う。

(※注 4 ) がんゲノム医療中核拠点病院またはがんゲノム医療拠点病院と連携してがんゲノム医療を行う病院。

‟がんゲノム医療”を受けたいときには、まずは担当医に相談する。

・近くのがん相談支援センターでも相談することができる。

ⅱ ) がんゲノム医療が行われている病院

・我国の保険診療として行う遺伝子パネル検査の結果と、付随する臨床情報は、患者の同意に基づき、「国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター( C-CAT )」に集められ、大切に保管される。

・その情報は、ご本人の今後の治療や診断のみならず、他の患者のよりよいゲノム医療のためにも、貴重な基盤データとなり得る。

・また、適切・公平な手順で、国内外の研究者による、‟がん”の新しい治療開発などの研究のためにも活用される。

ⅲ ) がんゲノム医療が行われている病院インターネットでの情報について

・がん遺伝子検査の項に書したので省略する。

ⅳ ) 市販の遺伝子検査について

・がん遺伝子検査の項に書したので省略する。

次回へ・・・。