「真実の口」2,083 ‟がん”という病 ㉚~がんゲノム医療とがん遺伝子検査編(その2)~

前回の続き・・・。

4⃣ がん医療におけるがんゲノム医療

ⅰ ) ゲノムとは

ゲノムとは、遺伝子をはじめとした遺伝情報の全体を意味し、いわば設計図のようなもので、一人一人違っている。

・私たちの体は、約 37 兆個もの細胞から構成されており、細胞の中にはと呼ばれる大切な部分があり、その中に遺伝子を乗せた染色体が入っていて、ゲノムとは、染色体に含まれるすべての遺伝子遺伝情報のことである。

【ゲノムと遺伝子】
ゲノムと遺伝子

染色体を構成する重要な成分が DNA で、 DNA は 4 種類の塩基と呼ばれる分子のブロックが一列に並んでできている長い分子である。

・この 4 種類の塩基の並び(配列)が、単語や文章のように決められた意味をもっていて、我々の遺伝子の情報(遺伝情報)を構成している。

ⅱ ) 遺伝子とは

遺伝子は、染色体の一部で、 1 人のゲノムには約 2 ~ 3 万種類の遺伝子が含まれているといわれており、遺伝子ごとに、体をつくるためのさまざまな機能がある。

・ヒトのゲノムは両親から受け継いだ 62 億個もの塩基が並ぶ、塩基配列で表される。

・一部の塩基配列が異なることで、一人一人の個性が生まれ、これにより外見や性格、病気のなりやすさ、薬の効き方、副作用などが人によって違ってくると考えられている。

・こういった塩基配列の違いは、「生殖細胞(精子、卵子)」を介して親から子に伝わり、一方、環境や生活習慣や加齢などによって体細胞(身体をつくる細胞)の一部に塩基配列の違いが起こることもある。

ⅲ ) がんとゲノム・遺伝子

・‟がん”は、ゲノムの変化に伴って塩基配列の違いなどが生じ、遺伝子が正常に機能しなくなった結果、起こる病気である。

・多くの‟がん”は、喫煙や生活習慣、加齢などが原因となり、正常な細胞内の特定の「体細胞」の遺伝子が後天的に変化(変異)することによって、‟がん”細胞が発生する。

・‟がん”が進行していく際には、‟がん”細胞においてのみ生じたこの遺伝子変異が、進行増殖のもととなると考えられており、このような‟がん”細胞にだけ起きた遺伝子変異は、次の世代に遺伝するものではない。

ⅳ ) がんゲノム医療とは

‟がんゲノム医療”は、遺伝子情報に基づくがんの個別化治療の 1 つで、主に‟がん”の組織を使って多数の遺伝子を同時に調べる「がん遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング検査)」によって、一人一人の遺伝子の変化や生まれ持った遺伝子の違い(遺伝子変異)を解析し、‟がん”の性質を明らかにすることや、体質や病状に合わせた治療などが行われている。

・全国に‟がんゲノム医療”中核拠点病院‟がんゲノム医療”拠点病院‟がんゲノム医療”連携病院が指定されており、全国どこでも‟がんゲノム医療”が受けられるようになることを目指して、体制づくりが進められている。

・一部の‟がん”の治療では、すでに標準治療として、‟がん”の組織などを用いて 1 つまたはいくつかの遺伝子を調べる‟がん遺伝子検査”を行い、遺伝子の変化に対応した薬の選択がすでに行われているが、このように、 1 つまたはいくつかの遺伝子を調べる‟がん遺伝子検査”‟がんゲノム医療”に含まれない。

‟がんゲノム医療”として、多数の遺伝子を同時に調べる検査である「がん遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング検査)」は、その一部が保険診療として、標準治療がないまたは終了したなどの条件を満たす場合に行われている。

【がんゲノム医療としてのがん遺伝子パネル検査】
がんゲノム医療としてのがん遺伝子パネル検査

がん遺伝子パネル検査は、合う薬があるかどうかを調べる検査で、検査の結果、遺伝子変異が見つかり、その遺伝子変異に対して効果が期待できる薬がある場合には、臨床試験などを含めてその薬の使用を検討する。

がん遺伝子パネル検査を受けても必ず治療法が見つかるわけではない。
→検査の結果、遺伝子変異が見つからない場合もある。
→治療選択に役立つ可能性がある遺伝子変異は、約半数の患者さんで見つかる。
遺伝子変異があっても、使用できる薬がない場合もある。
→自分に合う薬の使用(臨床試験を含む)に結びつく人は、全体の 10% 程度といわれている。

ⅴ ) がんゲノム医療が行われる場合

・多数の遺伝子を同時に調べる検査である「がん遺伝子パネル検査」は、標準治療がないまたは終了したなどの条件を満たす場合に、‟がんゲノム医療”として、一部が保険診療で行われている。

次回へ・・・。