前回の続き・・・。
《がん治療による様々な症状》
【 全身に起こる症状】
6⃣ 発熱
( 1 ) 発熱について
● 発熱とは、体温が普段よりも高い状態で、体温が上がっている最中には、寒気がする、体が震える、手足が冷える、立毛(いわゆる鳥肌)になるなどの症状が出ることがある。
● 体温が上がりきったときや熱が下がっているときには、汗をかく、体がだるい、頭が痛い、関節が痛む、発疹(皮膚の吹き出もの)が出るなどの症状を伴うことがある。
( 2 ) 原因
● 発熱は、‟がん”そのものによって引き起こされることもあれば、細菌や真菌(カビ)、ウィルスなどの病原体に感染し、自分の体がこれらの病原体を排除するために起こることもある。
● その他、体内で炎症を起こす病気(炎症性疾患)によるもの、薬の副作用によるものなどがあるが、中には原因不明のものもある。
● 白血球は、病原体を排除する重要な役割を担っており、‟がん”の治療で用いる薬の副作用によって白血球の 1 つである好中球(※注 1 )が減少している際に発熱する「発熱性好中球減少症」(※注 2 )は、病状が急速に悪くなることもあり、‟薬物療法”を行うときには特に注意が必要である。
(※注 1 ) 白血球の中の顆粒球の一種であり、白血球全体の約 45 ~ 75% を占め、強い貪食能力を持ち、細菌や真菌感染から体を守る主要な防御機構となっている。
(※注 2 ) 何らかの理由で、好中球が 500/μL 未満に減少している、あるいは、現在は 1,000/μL 未満だが 48 時間以内に 500/μL 未満になると予測される場合に、体温が 37.5℃ 以上に発熱した状態のこと。
● もし、発熱性好中球減少症が起きた場合は、感染の原因を特定するための血液検査や画像検査( X 線検査や CT 検査など)と同時に、抗菌薬の内服または点滴による治療を受け、なお、発熱性好中球減少症の発症を予防する目的で、抗菌薬や抗真菌薬、好中球を増やす薬を使うこともり、必要に応じて防護環境(無菌室)に入る場合もある。
( 3 ) 発熱が起きたときには
● まずは原因をみつけるために問診や検査を行い、原因によって異なる治療を行う。
・‟がん”そのものによる発熱の場合
→解熱薬で熱を下げる場合もある。
・感染による発熱の場合
→原因に応じた薬(抗菌薬など)を使うことがあり、熱による苦痛がなければ解熱薬を使わない場合もある。
・薬の副作用による発熱の場合
→薬を中止し、感染による発熱がないかを確認した上で、他の薬剤の使用を検討する場合もある。
( 4 ) 本人や周囲の人が出来る工夫
~体温が上がっている最中の工夫~
・寒気がしたり、体が震えたりするときには、部屋を暖かくし、衣類や毛布で体を温める。
・飲めるようであれば、温かい飲み物を飲むのも良い。
・湯たんぽや電気毛布を用いても良いが、低温やけどには注意する。
~体温が上がったときの工夫~
・熱がこもらないように掛け物を薄手にする。
・必要に応じて部屋の温度を下げる。
・氷まくらや保冷剤を用いて頭や額などを冷やすことで、発熱による不快感を和らげることができる。
・汗をかいたときには、汗を拭き、着替える。
・大量の汗が続くときには、肌とパジャマの間に乾いたタオルを入れて、タオルだけを交換すると、着替えによる疲労を軽減できる。
・汗をたくさんかき、体の水分が不足することがあり、気付かないうちに脱水状態になることもあるため、のどが渇かなくてもこまめに水分をとることが大切である。
~その他の工夫~
・発熱により、エネルギーを消耗するので、安静を心がけ、体力が回復するまで十分に体を休める。
・できるだけ騒音や明るい光を避け、楽だと感じる姿勢で休めると良い。
・食事は無理をしなくても、食べられるもので構わないが、できれば、高エネルギー、高たんぱくのもので、消化がよいものを選ぶと良い。
・歯磨きやうがいを行い、口の中は清潔にする。
・症状が落ち着くまでは、お風呂やシャワーは無理せず、ぬれタオルで体を拭き清潔にする。
( 5 ) こんなときは相談する
● 発熱に対する治療は原因によって異なる。
● 急な発熱があれば、自分で判断せず、医療機関に連絡する。
● あらかじめ、担当医にどのような症状のときに、どのように医療機関に連絡をしたらよいかを相談しておくとよい。
● いくつか症状があるときは、いつからどのような症状が出ているのかを医師や看護師に伝える。
● また、体がつらくて飲み物でさえ飲むことが難しい場合も、我慢せずに相談する。
● ・毎日同じ時間に体温を測り、いつから、どのように体調が変化したかなど、自分の体調を記録しておくと、診断や治療の助けになる。
次回へ・・・。