「真実の口」2,120 能登半島地震 ⑤

前回の続き・・・。

前回、「津波警報はどのようにして判断・発令されているのだろうか?」という言葉で終わったが・・・。

ご存知のように、日本周辺では、大きな地震が沿岸近くで発生することがある。

その場合、津波は地震発生後直ちに日本沿岸に来襲ことが想定されるで、最新のコンピューターを用いたとしても、 地震が発生してから計算を開始したのでは、津波が到達するまでに津波警報を発表することはできない。

その為、気象庁では、あらかじめ、津波を発生させる可能性のある断層を設定して津波の数値シミュレーションを行い、その結果を津波予報データベースとして蓄積しておくそうだ。

実際に地震が発生した時は、このデータベースから、発生した地震の位置や規模などに対応する予測結果を即座に検索することで、沿岸に対する津波警報・注意報の迅速な発表を実現しているらしい。

沿岸での津波の高さや到達時刻を求めるためのシミュレーションは、大別して、海底地殻変動計算津波伝播計算の 2 段階に分けられるそうだ。

【海底地殻変動計算】

地震による海底の地殻変動は、地下の断層が動いたとして理論的に計算できるそうだ。

1⃣ 断層の水平位置と深さ
2⃣ 断層の大きさ
3⃣ 断層の向き
4⃣ 断層の傾き
5⃣ すべりの方向・大きさ

まず、上記 5 項目を定める。

断層の向きは、過去の地震を参考に決めており、断層の水平位置と深さ、及び、断層の大きさとすべりの大きさ(これらはマグニチュードから換算)については、どのような場所で、どのような大きさの地震が発生しても対処できるよう、多数のシミュレーションを行う。

なお、断層の傾きとすべり方向については、最も大きく津波を発生させるような設定である、傾きが 45℃ の純粋な逆断層(下の図を参照)としているそうだ。

海底地殻変動計算

断層は水平方向に約 1,500 箇所、深さは 0 ~ 100km の間で 6 通り、またマグニチュードは 4 通りを考え、これらの断層ひとつひとつについて海底の地殻変動を求め、これを津波伝播計算に引き渡すと言う仕組みらしい。

【津波伝播計算】

海底下で大きな地震が発生すると、断層運動により海底が隆起もしくは沈降し、これに伴って海面が変動し、大きな波となって四方八方に伝播する。

津波伝搬の仕組み

津波は、海が深いほど速く伝わる性質があり、沖合いではジェット機に匹敵する速さで伝わるそうだ。

逆に、水深が浅くなるほど速度が遅くなるため、津波が陸地に近づくにつれ、減速した波の前方部に後方部が追いつくことで、波高が高くなることにある。

津波の速度

これを見れば、一目瞭然、とても人間の足では逃げ切れない。

津波から命を守るためには、津波が海岸にやってくるのを見てから避難を始めたのでは間に合わない。

海岸付近で地震の揺れを感じたら、または、津波警報が発表されたら、実際に津波が見えなくても、速やかに高台への避難が大切である。

実際には、津波を発生させるような海底地殻変動は数 10 km 以上の広がりをもっていて、津波が広がり始める前に地殻変動が完了するため、 海底地殻の上下変動がそのまま地震発生直後に海面に生じる凹凸になると考えることができるそうだ。

こうして得られる海面凹凸パターンを津波の初期波源とし、これが四方八方に伝わっていく様子を計算する。

数値計算の方法としては、計算領域を縦横の格子状に細かく区切り、各々の格子における津波の高さと速度について、津波伝播の方程式に従って時間を追って計算していき、 全ての断層に対してこのような計算を行い、沿岸に出現する津波の時間的変化の様子を再現しているらしい。

ただ、津波警報の基準となる、沿岸で予想される津波の高さは、シミュレーションで計算された沿岸における高さをそのまま使っているわけではないらしい。

それは、計算格子の大きさを一定にしているため、海岸近くの水深が浅く地形も複雑になってくる場所では、津波の再現精度が落ちてくると考えられるためのようだ。

これを解決するには、沿岸近くで計算格子を細かくするなど非常に詳細な計算を行う方法があるが、全国の計算を行うには膨大な時間がかかり、現実的ではない。

そこで、誤差がまださほど含まれない沖合いでの津波の高さから、 「グリーンの法則」を用いて、海岸での高さを推定するのだそうだ。

グリーンの法則とは、沖合の(水深の深いところの)津波が沿岸の水深の浅い場所へくると、津波のスピードが遅くなり、前の波と後ろの波との間隔が短くなるが、ひと波に蓄えられるエネルギーは、同じはずであり、波面が海岸線に並行に入射する場合には、波と波との間隔が短くなった分、結果として、波の高さが高くなるということを理論化したものらしい。

気象庁では、グリーンの法則で水深 1m での高さを求め、これを沿岸での津波の高さとしている。

つまり、今回の能登半島地震で、実際に到達した津波の高さ及び時間がずれていたのは、想像を絶する海岸線の隆起が原因と考えられる。

次回へ・・・。