「真実の口」2,151 来るべき大地震に備えて ⑬

前回の続き・・・。

前回、平成 25 年 3 月 18 日に開催された『中央防災会議 防災対策推進検討会議』の中で『南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ』がまとめた、被害が甚大だった地域の想定される状況をお伝えしたが、今回は項目別の想定被害をお伝えする。

《前提条件(想定シーン)》

・ ライフライン被害、交通施設被害及びそれらを起因として波及する生活への影響の被害想定では、以下の 8 ケースを対象として推計を行った。
・本資料では、これらのケースを前提に、被害の様相について各地域での最大規模の被害をイメージして記述しており、被害数値は最小と最大の値で幅を持たせて表記している。
・ また、本被害様相における復旧の想定は、基本的に東日本大震災等の実績をベースに記述しているが、更に厳しい条件の下で復旧が遅れる場合等についても併記している。

前提条件(想定シーン・8つのケース)

( ア ) 東海地方が大きく被災するケース(津波ケース①)

① 地震動:基本ケース
津波ケース①・基本ケース

★震度 6 弱以上が観測される比率(深夜の人口ベースによる地域区分

・ 7 割以上・・・静岡県、愛知県、三重県、和歌山県、徳島県、高知県、宮崎県( 計 7 県)
・5 ~ 7 割・・・奈良県 ( 1 県)
・5 割未満・・・茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、香川県、愛媛県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、鹿児島県、沖縄県( 計 39 県)

②地震動:陸側ケース
津波ケース①・陸側ケース

★震度 6 弱以上が観測される比率(深夜の人口ベースによる地域区分

・ 7 割以上・・・静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県、岡山県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、宮崎県(計 15 県)
・5 ~ 7 割・・・山梨県、兵庫県、広島県(計 3 県)
・5 割未満・・・茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、香川県、愛媛県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、鹿児島県、沖縄県(計 29 県)

《地震発生直後》

【 建物被害 】 

◎ 揺れによる被害:
震度 6 弱以上の揺れが発生する地域の古い建物を中心に約 62.7 万棟~約 134. 6万棟が全壊する。
老朽化した耐震性の低い木造建物が倒壊する。
 ☞ ビルやマンションの倒壊中間階の圧潰が発生する。

◎ 液状化による被害:
液状化により、約 11.5 万棟~ 13.4 万棟の建物が沈下・傾斜被害を受け、継続的な居住や日常生活が困難となる。

◎ 津波による被害:
津波により、約 13.2 万棟~約 16.9 万棟が全壊する。

◎ 急傾斜地崩壊による被害 :
・ 地震に伴う急傾斜地の崩壊により、 4.6 千棟~約 6.5 千棟が全壊する。

◎ 地震火災による被害:
木造密集市街地が連担している地域などを中心に、地震火災が同時多発し、延焼火災を含む大規模な火災により、約4.7万棟~約75万棟が焼失する。
火災旋風が発生するおそれもある。

◎ 津波火災による被害:
津波により漂流するがれきからの出火、浸水による車両等からの出火によって津波火災が発生する。
流出した屋外タンクからのオイル、ガスボンベや、がれきなどの可燃物が燃えたまま津波に乗って漂流し、延焼が拡大する。
・ 更にこれらの集積の密度によっては海上油面火災が形成され、燃えた船舶が延焼拡大を更に助長する。
津波によって打ち寄せられた家屋などのがれきが高台に堆積し、火のついたがれきから周辺のがれきへ燃え広がる
・ 山際の避難場所まで延焼するものや山林火災に発展するものもあり、一部の避難場所では再避難が必要となる。
がれきなどが障害となって消火ができず、延焼が拡大する。

【屋外転倒物、落下物】

◎ ブロック塀・自動販売機等の転倒:
・ 住宅地に多く設置されているブロック塀や石塀等約 51.8 万件~約 84.9 万件転倒する。
・ 市街地に多く設置されている自動販売機約 1.1 万件~約 1.9 万件転倒する。

◎ 屋外落下物:
・ 中高層建物が多く分布する地域を中心に、窓ガラス、壁面タイル、看板等が落下する。
・ こうした屋外落下物が発生する建物数約 35.4 万棟~約 85.9 万棟に上る。

【人的被害】

◎ 建物倒壊による被害:
耐震性の低い木造建物を中心に、揺れによる建物の倒壊により、約 3.8 万人~約 5.9 万人の死者が発生する。
・ なお、深夜は自宅等で就寝中に被災する人が多く、被害が最大となる。
☞ 自宅や職場等で、老朽化や耐震性の低い木造建物が倒壊し、下敷きになり死傷する。
☞ 自宅や職場等で、ビルやマンションの中間階の圧潰や建物の倒壊により、下敷きになり死傷する。

◎ 津波による被害:
津波高が高く、更に到達時間が短い地域を中心に、津波に巻き込まれて、約 11.7 万人~約 22.4 万人の死者が発生する。
☞ 自宅や職場等で津波に巻き込まれて死傷する。
☞ 徒歩で避難中に津波に追いつかれて死傷する。
☞ 自動車や列車が津波に巻き込まれて死傷する。
☞ 夏季に地震が発生した場合、多数の海水浴客が避難しきれずに津波に巻き込まれて死傷する。

◎ 急傾斜地崩壊による被害:
・ 地震に伴う急傾斜地の崩壊により家屋の倒壊や土砂による生き埋め等が発生し、約 400 人の死者が発生する。

◎ 火災による被害 :
出火家屋からの逃げ遅れ、倒壊し延焼被害を受けた家屋内での閉じ込め、延焼拡大時の屋外での逃げまどいにより、約 2.6 千人~約 2.2 万人の死者が発生する。
・ 集合住宅や高層ビル、地下街等で煙に巻かれて死傷する。

◎ ブロック塀・自動販売機の転倒、屋外落下物による被害:
屋外転倒物や屋外落下物により、約 20 人~約 800 人の死者が発生する。
☞ 街路樹や電柱、自動販売機等の転倒に巻き込まれて死傷する。
☞ 沿道の建物の倒壊に巻き込まれて死傷する。
☞ ブロック塀やレンガ塀、石塀が倒れて下敷きとなり死傷する。
☞ 落下した屋根瓦が直撃し死傷する。
☞ 外壁パネルやコンクリート片が直撃し死傷する。

◎ 屋内収容物移動・転倒、屋内落下物による被害:
・ 屋内において、固定していない家具等の移動や転倒、その他の落下物により、約 3.0 千人~約 3.9 千人の死者が発生する。
☞ 自宅や職場等で、家具や什器が転倒し、その下敷きとなり死傷する。
☞ 自宅や職場等で、本棚や食器棚等から内容物の飛散、窓ガラス等の飛散により負傷する。
☞ 自宅や職場等で、熱湯の入ったやかんやストーブ等が転倒して負傷(熱傷)する。  ☞ 商店等で、看板や展示物が落下・転倒し下敷きとなり死傷する。
☞ 体育館や屋内プール、集会場等で、吊り天井等が落下し下敷きとなり死傷する。

◎ 揺れによる建物被害に伴う要救助者(自力脱出困難者):
・ 揺れによる建物倒壊により閉じ込め被害が発生し、救助を要する人約 14.1 万人~約 24.3 万人発生する。
・ 家族・近隣住民等により救助活動が行われるものの、重機等の資機材や専門技術を有する消防・警察・自衛隊等による救助活動が必要となる。

◎ 津波被害に伴う要救助者・要捜索者 :
・ 津波から逃れるために中高層階に避難したものの、低層階が浸水して救助が必要となる人約 2.6 万人~約 3.5 万人発生する。
・ 津波により膨大な数の行方不明者が発生する。
冬季に地震が発生した場合、津波から救出されても、漂流時に低体温症になり死亡する人も発生する。

《概ね 1 日後~数日後》

◎ 揺れによる建物被害に伴う要救助者(自力脱出困難者)、津波被害に伴う要救助者:
・ 膨大な数の救助件数になるとともに、被災地で活動できる実動部隊数にも限界があるため、救助活動が間に合わず、時間とともに生存者が減少する。
倒壊した建物から救出された人でも、挫滅症候群(クラッシュ・シンドローム)により死亡する人が発生する。

《概ね 1 週間後》

◎ 津波被害に伴う要捜索者 :
・ 津波に巻き込まれた行方不明者が膨大な数に上り、長期にわたる捜索活動が必要となる。

長くなるのでライフライン等への被害想定は割愛する。

次回へ・・・。