水産業を憂う。
平成15年12月、徳島の海苔養殖業者から、抗酸化の技術を養殖に活かせないだろうかという依頼を受けた。
現地主義の私は、すぐに話を聞きに行った。
私の地元の有明海と瀬戸内海では海苔の養殖方法が違っていた。
有明海では、次の写真のように養殖する。
“支柱式”である。
多分、見慣れた光景ではなかろうか?
福岡県・佐賀県・熊本県の3県で国内生産量の40%強を占める。
有明海3県の中でも、佐賀県は、最高級の品質を生産すると自他共に認める産地である。
私の地元である長崎は、平成9年4月14日、諫早湾干拓事業により堤防が閉められて海苔養殖ができなくなった。
昭和50年代のピーク時には1億枚以上を生産していたのにである。
この諫早湾干拓事業の影響で、かつては「宝の海」と言われた有明海は、海底への泥の沈殿、水質汚染が生じて有明海全体が死の海と化し、二枚貝タイラギが死滅、奇形魚の増加、海苔の色落ちなど重大な漁業被害が発生している。
しかし、干拓の工事前に漁業補償として、総額279.2億円が支払われており、各漁協の漁業権は消滅、又は一部放棄・制限されている。
漁業権とはいったい何ぞや?
海は漁師のものなのか?
話が脱線してしまったが・・・
一方、瀬戸内海では、次の画像のように養殖する。
“浮き流し式”である。
そして、収穫の際に、恐るべき事が行われていることを聞いた。
筏に付いた海苔を、次の写真のようにボートで潜水しながら、海苔を剥がし、その際にPH2位の濃塩酸を散布するというのである。
これは、赤焼けやゴミの付着防止のために行っているということだった。
いったい海を誰のものと思っているのだろう?
私は、全ての工程を聞いた上で、いくつかのアドバイスをした。
まず、栄養のためにアミノ酸を散布すると言うことなので、それを一日ペールで寝かせてみた。
次に、硫酸の代わりに、当時の粉石鹸であるピ○○レを、海水に流されることも考慮して1,000倍で散布させてみた。
この状況で、しばらく様子を見てみたが、効果が薄いとのことだった。
そこで100倍濃度で散布してみると、効果覿面(てきめん)だった。
一番初めに収穫する海苔の事を初摘み海苔と言うが、通常は徳島あたりの海苔は、通常、競りにかけられると7円/枚前後で取引される。
http://www.zennori.or.jp/genjo_h21/chisiki2-03.html
それが、10円を超える値段で値がつけられたのである。
更に、通常は、初摘みから2回目、3回目と回を重ねるごとに値が落ちていく。
しかし、抗酸化海苔の場合、初摘みから6枚目までほとんど値が変わることなく競りにかけられたのである。
私はこのノウハウを徳島の海苔養殖業者の間で広めて下さいとお願いした。
しかし、残念ながら、返ってきた言葉は、「他の者に言うと、自分の海苔の価値が下がる」という想像していなかった言葉だった。
当時は、諫早干拓事業の影響もあり、有明海の海苔も一時期程の高級感が薄らいで来ていた。
地元ブランドを確立するチャンスであったのに・・・
残念ながら、あれもこれも試してみようと、アイデアはたくさんあったのに、その他のアイデアは封印せざるを得なかった。