前回のつづき・・・。
前回寄稿した以下のニュースを解説してみる。
Mpox outbreaks in Africa constitute a public health emergency of continental security
☞ アフリカにおけるMpoxの流行は大陸の安全に関する公衆衛生上の緊急事態を構成している
前回のPHECS 宣言下では、欧米やアジアなどでは、 95% が男性間性交渉者( Men who have Sex with Men:MSM )で感染が広がっていたが、今回の PHECS 宣言では、「家庭内の感染」「乳幼児で広がっている」といった説明がなされている。
ただ、家庭内感染で国を超えてそう簡単に広がるとは考えづらい。
本当に単純な家庭内感染なのだろうか?
実は、 2024 年に入ってから、これまでアフリカの流行地域では報告されていなかった性感染症としてのエムポックスの広がりが確認されているようだ。
Heterosexual transmission found in DR Congo mpox outbreak
☞ コンゴ民主共和国東部における新たな Mpox (サル痘) 流行の疫学、臨床的特徴、および感染パターン:観察的横断的コホート研究
コンゴ民主共和国( DRC) で現在も発生しているエムポックスの流行について観察コホート研究を行っている科学者らは、世界的な流行とは異なる系統が関与するエムポックスの感染経路として、異性間の性行為が考えられる第 3 の経路を特定した。
コンゴ民主共和国の南キブ州では、 2023 年 8 月から感染が広がっている。
感染の中心地はカミツガで、科学者らは新たなサブグループである可能性のある、明確な系統 1 のエムポックス株を特定した。
国際研究チームが、今週( 2024.3.8 )、その研究結果を、査読前の研究を掲載するプレプリントサーバー medRxiv で発表した。
これまでに、カミツガ地域では 200 件を超えるエムポックス症例が報告されている。
この流行は、性行為による感染が原因の初めての系統 1 型流行であったため、 2023 年後半に大きく報道された。
1 型(コンゴ型)感染症は通常、人獣共通感染症の流出を伴い、人から人への感染も一部発生する。
1 型(コンゴ型)感染症はより毒性が強く、致死率も 10% と高いことが知られている。
今回の研究のために、研究者らは 2023 年 9 月から 2024 年1月までにカミツガ病院に入院した 164 人の患者のうち 51 人にインタビューを行った。
その結果、対象の 51 人のうち 37 人( 73% )がエムポックスの感染が検査により確認された感染確定例だった。
そのほかは疑い例などとなる。
症状は発熱が 75% 、発疹が 88% 、口腔内病変が 41% 、肛門や生殖器病変が 63% だった。
感染者の中で目立った職業が性産業に従事する女性で、全体のほぼ半数となる 24 人を占めていた。
これも関連していると考えられるが、感染者の特徴は、異性愛者間の性行為が感染の主要な経路だったこと。
92% が異性愛者で、感染者の 61% が過去 6 ケ月以内に複数パートナーと性的接触があったと報告された。
これらのデータは、売買春がエムポックスの拡大において極めて重要な役割を果たしている事実を浮き彫りにしているのではないだろうか?
前回の MHM 間感染防止にワクチンを打っているから安心という欧州の見立ては間違っているのではないだろうか??
新たな感染対策として、性産業への対策は急務となるのでは???
コンゴ民主共和国は、元々、ダイヤモンドをはじめとする鉱物や木材、石油など、自然の資源が実に豊かな国である。
2021 年 2 月下旬、コンゴ民主共和国南部キブ州ルヒヒの山に、 60 ~ 90% の土壌が金という鉱山が発見された。
それを聞きつけた多くの人々は金のあふれる山へと殺到。
まさに、現代版ゴールドラッシュとなり、当局が採掘を禁止しなければならない事態となったようだ。
コンゴ民主共和国( DRC )東部の南キブ州にある金鉱の端にある町ルヒヒでは、多くの起業家精神に富んだビジネスマンが集まり、谷底にバー、売春宿、クラブ、賭博場が建てられた。
一攫千金を夢見た鉱夫たちは、夕方になると出歩き、なかなか見つからないという不平不満を解消するために女性を買うようだ。
夜になると、売春婦として働く女性や少女たち(中には 14 歳という若い者もいる)が泥だらけの街角で客を待ちながらうろついている。
不安定な情勢に見舞われた貧困地域で他に選択肢がほとんどないため、彼女たちは食卓に食べ物を並べるために体を売っているというのが現在のコンゴ民主共和国である。
同国の 2020 年報告の研究によると、有償セックスが男性の 18% 、女性の 4% に確認され、性産業の存在が報告されている。
感染経路のキーワードとして、売買春と異性愛者間の性交渉が急浮上しており、もともと家庭内感染がメインだったコンゴ民主共和国周辺のエムポックスが変質し、国を超えて急拡大するようになったと考えられるのではないだろうか?
次回へ・・・。