「真実の口」1,985 新型コロナウィルス・・・471

前回の続き・・・。

Q5.「 5 類」変更の影響を 専門家はどう見ているのか?

A. 専門家会合のメンバーらは「 5 類」などに変更された場合、懸念される点として次の点を指摘した。
・患者が増加したときに行政による入院調整が行われず地域を越えた調整も難しくなること。
・治療費が公費で負担されなくなり、感染者が検査や治療を受けない、受けられない可能性があること。

また、「 5 類」になると特措法の対象ではなくなるが、その場合の懸念として次の点を指摘しました。

・都道府県知事が行っていた感染対策の呼びかけの法的根拠が失われることで、「新型コロナは終わった」とみなされ必要な感染対策が行われなくなる可能性があること。
・対策本部が廃止されることで、感染力や病原性が著しく上がった新たな変異ウィルスが現れた場合に迅速な措置ができなくなる可能性があること。
・ワクチンに関する対策が縮小される可能性があり、接種の際に自己負担が発生すれば接種率が低下する可能性があること。

政府分科会の尾身茂会長は、 1 月 24 日、 NHK の番組の中で「『 5 類』に移行すれば自動的に感染者数や死亡者数が減るということはなく、コロナ診療に参加する医療機関の数が増えるということでもない。『社会・経済・教育をなるべく普通に戻す』、そうした中でも『必要な医療を提供できること』が非常に重要で、この 2 つの目的を実現するために、準備期間をおいて段階的にやっていく必要がある。『感染を許容する』というのは『一定の死亡者を許容するかどうか』という議論とつながる諸外国の例を見ても、対策を急激に緩和してしまうと死亡者が急激に発生することがわかっている。医学の領域を超えて価値観の問題で、医療関係者か経済の人なのか、高齢者か若い人なのかでも見る景色が違ってくる。『 5 類』の議論は価値観の問題を議論することで少しずつ国民的なコンセンサスを作っていくことが必要だと思う。」と述べた。

Q6. 医療現場の反応は?

A. 発熱外来で患者に対応する医師からは、これまで保健所などが担ってきた入院調整の業務が医療機関に任され、負担が増すのではないかと懸念する声があがっている。

【例 1 】

埼玉県春日部市の「あゆみクリニック」は、糖尿病や喘息の患者などの一般の診療に加えて、屋外にプレハブを設けて発熱外来を設置し、熱などの症状がある患者を診療しているが、現在は、新型コロナの患者が入院する際には、保健所などが受け入れ先の病院の調整を担っていますが、コロナ以外の患者の場合は患者の診察にあたる医師や、看護師が調整にあたります。受け入れ先の病院のベッドに空きがないなどの理由で断られることも多く、入院先が見つからないまま長い時間、酸素吸入と点滴で対応することもあるという。

藤川万規子医師は「現在でも、コロナ以外の方の入院調整がすごく難しく、スタッフが数時間対応しても見つからない状態だが、『 5 類』になってコロナも私たちが調整しなければならなくなると、人手が足りずパンクしてしまう。保健所による入院調整は急にやめるのではなく、少しずつ手を離す方法をとってほしい。(一方で)コロナの患者をどこの医療機関でも診療することになれば、コロナの患者が増えたとしてもほかの医療機関に分散し、発熱外来がある医療機関への患者の集中が解消され、余裕をもって診察に取り組めるのではないか。」と期待も寄せている。

【例 2 】

神奈川県鎌倉市の「章平クリニック」の院長、湯浅章平医師は、 20 年ほど前にクリニックを開業し、地域の患者を幅広く受けて入れてきたが、 3 年前、新型コロナの感染が拡大すると、発熱外来を設置する医療機関も増えていきましたが、このクリニックは対応が難しいとして設置しなかった。

課題のひとつは、感染している可能性がある患者と他の患者を分ける「ゾーニング」で、約 40㎡ のクリニックでは待合室と診察室が一つずつで、それぞれの動線を分けることが難しく、通院患者の 7 割が高齢者で、慢性疾患を抱える人も多く、重症化リスクが高い患者も少なくないという。

一方で、湯浅医師自身は発熱外来がある病院で週 1 回勤務したり、休日夜間急患診療所で診療に当たったりとできる範囲でコロナ患者への対応に当たってきた。

湯浅医師は「『 5 類』になったからといって、コロナの感染力が落ちるわけではないので、これまで外来でみてこなかった医師がコロナをみるというのは、しばらくの間難しいのではないか?『 5 類』だからどこの医療機関もみてくれるだろうと患者さんの意識が変わって、現実はそうでないとなると現場がかなり混乱することが考えられる。段階的に『 5 類』にしていくということは必要だと思うが、現場の状態を考えて進めてほしい」と話している。

Q7. そもそも「 2 類」・「 5 類」とは何なのか?

A. 感染症法では、ウィルスや細菌を重症化リスクや感染力に応じて原則「 1 類」~「 5 類」に分け、国や自治体が行うことができる措置の内容を定めている。

「 1 類」・・・感染した場合に命の危険がある危険性が極めて高い「エボラ出血熱」、「ペスト」などが分類される。

「 2 類」・・・感染した場合、重症化リスクや感染力が高い「結核」、「重症急性呼吸器症侯群= SARS 」などが分類され、地方自治体は感染者に就業制限や入院勧告ができ、医療費は全額、公費の負担となる。入院患者は原則、感染症指定医療機関が受け入れ、医師はすべての感染者について発生届け出を保健所に届けなければならない。

「 3 類」・・・感染した場合、危険性はそれ程高くないが飲食や食品系など特定の職業集団において感染の可能性がある「コレラ」、「赤痢」、「腸管出血性大腸菌感染症」等が分類され、食品系など特定職業では、二次感染を防ぐために営業が制限されることがあり、診察した医師は、最寄りの保健所から知事に届けることが義務付けされている。

「 4 類」・・・主に動物間で流行する病気、飲食物などを介して人に感染する病気を指し、動物から人への感染は起こり得ますが、人から人への感染は起こらないとされている。「狂犬病」、「鳥インフルエンザ」、「マラリア」、「サル痘」などがある。

「 5 類」・・・国が発生動向調査を行ない、必要な情報を国民や医療関係者に提供、公開していくことで発生・拡大を防止すべきものとしてみなされる感染症のことで、「季節性インフルエンザ」、「梅毒」、「風しん」、「麻しん」、「感染性胃腸炎】、「水痘」、「破傷風」などがあり、地方自治体は就業制限や入院勧告の措置がとれないほか、医療費は一部で自己負担が発生する。一般の医療機関でも入院患者を受け入れ、季節性インフルエンザでは医師の届け出は 7 日以内とされ、患者の全数報告は求められていない。

新型コロナウィルスは当初は特性がわからなかったため「 2 類相当」とされたが、おととし 2020 年の 2 月に法改正で 5 つの類型に入らない「新型インフルエンザ等感染症」に位置づけられ、外出自粛要請など「 2 類」よりも厳しい措置がとれるほか、緊急事態宣言のような強い行動制限ができるようにしていた。

その後、「第 6 波」や「第 7 波」で拡大したオミクロン株は、従来株と比べて重症化率が低い傾向にあったことや、オミクロン対応のワクチン接種が始まったことなどを受け、対策の緩和が進み、患者の療養期間の見直し( 10 日間 → 7 日間)、感染者の全数把握の簡略化、水際対策の緩和などが見直されてきた。

こうした中で、政府は去年 12 月から「 5 類」への引き下げも含めて見直しに向けた議論を本格化させ、専門家に必要な検証を求めてきていた。

さあ、賽は投げられた・・・。

先週、火曜日の感染動向を追う。

1 月 24 日(火曜日)

次回へ・・・。