「真実の口」2,068 ‟がん”という病 ⑮~CT検査編~

前回の続き・・・。

【 CT 検査】

ⅰ.検査の目的

▶ CT ( Computed Tomography )検査は、治療前に‟がん”の有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。

ⅱ.検査の方法

▶ CT 検査は、 X 線を使って行い、体の周囲から X 線をあてて、体の中の吸収率の違いをコンピューターで処理し、体の断面を画像にする。
▶ 断面にする画像の厚みの設定は、撮影する部位や検査の目的に応じて適切に決められている。
▶ 検査の目的によっては、造影剤を使用することもある。

ⅲ.検査の実際

CT検査

▶ CT 検査は、ベッドの上にあおむけになった姿勢で行う。
▶ 検査の際はベッドが自動で動き、トンネル状の装置の中に入る。
▶ 部位によっては、息を止めることがある。
▶ 検査全体にかかる時間は 10 ~ 15 分程度である。
▶ 造影剤を使用する場合には、検査を受ける数時間前から食事はできない。
▶ 造影剤を静脈から注射したときに体が熱いと感じることがあるが、一時的なものなので心配はない。
▶ 副作用として、吐き気やかゆみ、くしゃみ、発疹などの症状が 100 人に数人程度、また、血圧低下、呼吸低下などのショック症状が 1,000 人に 1 人未満に起こることがある。
▶ 造影剤は尿によって排泄されるため、検査の後には水分を多めに取ることが大切である。
▶ これまでに造影剤による副作用の症状が出たことのある人、喘息やアレルギーがある人、糖尿病の薬を飲んでいる人、腎機能が悪い人、授乳中の人は、造影剤の使用に注意が必要な場合があるので、必ず、主治医や担当医に伝えるようにすること。

ⅳ.検査の特徴

▶ CT 検査は、 5 ~ 15 分程度の検査時間で、広範囲な画像を細かく撮影することができる。

ⅴ.検査を行う主な‟がん”

▶ CT 検査は、血液の‟がん”も含めて、ほぼすべての‟がん”で検査することがある。

ⅵ. Q & A

Q.1 : CT 検査での被ばく量は?
A.1 : 1 回の CT 検査で受ける放射線量は 5 ~ 30mSv(※注) 程度である。

【 MRI 検査】

ⅰ.検査の目的

▶ MRI ( Magnetic Resonance Imaging )検査は、治療前に‟がん”の有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。

ⅱ.検査の方法

▶ MRI 検査は、強力な磁石と電波を使って、磁場を発生させて行う。
▶ 強力な磁場が発生しているトンネル状の装置の中で、 FM ラジオなどで用いられている周波数の電波を体にあて、体の内部の断面をさまざまな方向から画像にする。
▶ 検査の目的によっては、造影剤を使用することもある。

ⅲ.検査の実際

MRI検査

▶ MRI 検査は、撮影する部位にコイルと呼ばれる専用の用具を体に装着し、ベッドに寝た姿勢で行う。
▶ 検査の際はベッドが自動で動き、トンネル状の装置の中に入る。
▶ 磁場を発生させるときに、装置から工事現場のような大きな音がするため、検査中はヘッドホンや耳栓を装着することがある。
▶ 検査全体にかかる時間は 15 ~ 45 分と CT 検査に比べて長くかかる。
▶ 体を動かすと画質が落ちてしまうので、できる限り同じ姿勢を保つことが必要となる。
▶ 撮影部位によっては、息を止めることもある。
▶ 検査の目的によっては、造影剤を飲んだり、静脈から注射したりすることがあり、血管や胆管などの臓器で造影剤を使わずに検査をすることもある。
▶ 強力な磁石や電波を使うため、事故ややけどに十分注意が必要である。
▶ ペースメーカーや人工内耳などの金属類が体内に入っている人、磁石を使用したインプラントを埋め込まれている人は、検査が受けられない場合がある。
▶ 入れ墨やアートメーク、マスカラはやけどの原因になることがある。
▶ 装置の中の空間は狭いため、閉所恐怖症の人は検査が難しいこともある。

ⅳ.検査の特徴

▶ MRI 検査は、‟がん”などの病気の部分と正常な組織との信号の差(コントラスト)を画像上で区別しやすい検査である。
▶ X 線を使わずに磁石と電波を使うので、被ばくの心配がない。

ⅴ.検査を行う主な‟がん”

▶ MRI 検査は、ほぼすべての‟がん”で検査することがあり、特に、脳、乳腺、肝臓、子宮、卵巣、前立腺、骨軟部など、 CT 検査では正常な組織との区別がつきにくい臓器に生じる‟がん”の診断に有用である。

【 PET 検査】

ⅰ.検査の目的

▶ PET ( Positron Emission Tomography )検査は、治療前に‟がん”の有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療中の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。

ⅱ.検査の方法

▶ PET 検査は、FDG (放射性フッ素を付加したブドウ糖)(※注)を使って行う。

(※注) FDG 以外の放射性物質を使った PET 検査もあるが、研究段階の検査であり、日常診療では FDG を使用した PET 検査がほとんどで、一般的には、 FDG-PET 検査のことを PET 検査という。

▶ PET 検査では、静脈から FDG を注射し、‟がん”細胞に取り込まれたブドウ糖の分布を画像にする。
▶ PET 検査は CT 検査や MRI 検査と組み合わせて行うこともある。
▶ PET-CT 検査は、 PET 検査と CT 検査の画像を重ね合わせることで、‟がん”の有無、‟がん”の位置や広がりを高い精度で診断することができる。

ⅲ.検査の実際

PET-CT / PET-MRI

▶ PET検査は、検査当日 6 時間前から糖分を含む飲食物の摂取はできない。
▶ 検査の直前には、排尿を済ませる。
▶ FDG を注射して 1 時間前後、ベッドなどで安静にして FDG が取り込まれるのを待つ。
▶ 撮影時には、機器の寝台の上にあおむけになる。
▶ 撮影時間は 30 分程度である。
▶ 撮影した画像で‟がん”が確認しにくい場合には、さらに、時間を置いて撮影することがある。
▶ 検査後は、体に取り込んだ FDG を体外に排出するために、水分を多めにとって排尿を促す。
▶ 糖尿病の人は、検査前に主治医や担当医及び検査をする施設の医師と相談が必要である。

ⅳ.検査の特徴

▶ PET 検査は、さまざまな部位の‟がん”や、血液がんの悪性リンパ腫で検査することがありる。
▶ ‟がん”の大きさや広がりを調べる CT 検査や MRI 検査などの検査と異なり、ブドウ糖を消費して活発に活動している‟がん”細胞の状態を調べることができる。
▶ 糖尿病などで高血糖の状態では正確な結果が出ないことがある。

ⅴ.検査を行う主な‟がん”

▶ PET 検査は、さまざまな部位の‟がん”や、血液がんの悪性リンパ腫で検査することがある。
▶ 早期の胃がんの場合には保険診療で受けることができない。
▶ 他の検査、画像診断による病期診断や転移・再発の診断が確定できない場合にのみ保険診療で受けることができる。
▶ ‟がん”と関係なくブドウ糖が集まりやすい部位では、‟がん”の診断が難しいことがある。
▶ PET 検査での診断が難しい部位は、脳や心臓、胃や腸などの消化管、肝臓、咽頭の粘膜、膀胱や腎盂・尿管などの泌尿器や、炎症を起こしている組織などである。

ⅵ. Q & A

Q.1 : PET 検査での被ばく量は?
A.1
▶ FDG から出る放射線の量は 3.5mSv (※注) である。
▶ FDG から出る放射線は時間とともに弱くなり、検査後は、水分を多めにとって排尿を促すので、多くは尿と一緒に体の外に排出されるので心配はない。
▶ PET-CT では、さらに CT による被ばく 1.4 ~ 3.5mSv が加算される。

Q.1 :‟がん”を早期に発見するために PET 検診は有効か?
A.1
▶ ‟がん”の診断が出る前に行う PET 検診は、すでに症状がある場合に行う‟PET”検査とは異なり、人間ドックなどで行われる任意の検診であり、 PET 検診によって、‟がん”がどれくらいの精度で発見され、‟がん”で亡くなる人がどれくらい減少するのかなどは、まだ十分なデータがなく、国が推奨する‟がん”検診ではない。
▶ PET 検査は一度にほぼ全身の撮影が可能だが、‟がん”の種類や場所によって、早期発見に有効な‟がん”とそうではない‟がん”がある。

【超音波(エコー)検査】

ⅰ.検査の目的

▶ 超音波検査は、‟がん”のある場所や、‟がん”の形・大きさ、‟がん”の周辺の臓器との関係などを確認するために行う検査である。

ⅱ.検査の方法

▶ 超音波検査は、超音波を使って行う。
▶ 体の表面に超音波プローブ(探触子:超音波の出る器械)をあて、体内の臓器からはね返ってくる超音波を画像として映し出す。
▶ 肝臓がんや乳がんなどでは、血流を見るために、造影剤を使用して超音波検査を行うこともある。

ⅲ.検査の実際

超音波(エコー)検査

▶ 超音波検査では、検査を受ける数時間前から食事はできない。
▶ 骨盤内の臓器を見る場合には、尿をためた状態の方が見やすいため、水分を取り排尿を控えておく。
▶ 検査の際はベッドに横になった姿勢で行う。
▶ 検査する臓器によって、あおむけや横向きになったり、腕を上げたりすることもある。
▶ 超音波が伝わりやすくなるように、体の表面に検査用のゼリーを塗ってから超音波プローブ(探触子:超音波の出る器械)をあてる。
▶ 基本的に検査の最中は同じ姿勢だが、調べる部位によっては、息を止めたり体の向きを変えたりすることがある。
▶ 造影剤を使用する場合は、静脈から注射する。
▶ 超音波検査で使われる造影剤は、副作用が非常に少ないため、 CT 検査や MRI 検査の造影剤に対してアレルギー反応を起こす人も検査を受けることが可能である。

ⅳ.検査の特徴

▶ 超音波検査は、痛みや放射線による被ばくの心配がなく、体への負担が少ない検査であり、妊婦や高齢者も検査を受けることが可能である。

ⅴ.検査を行う主な‟がん”

▶ 超音波検査では、肝臓や胆のう、膵臓、腎臓、膀胱、卵巣、子宮、前立腺などの腹部にある臓器や、甲状腺や乳腺などさまざまな臓器にできた‟がん”で検査することがある。
▶ 一方で、空気や骨、厚い脂肪などは超音波が通りにくいため、骨などに囲まれた部位や肺、脳にできた‟がん”の多くは検査することができない。

次回へ・・・。