前回の続き・・・。
《内視鏡治療》
1.内視鏡とは
・‟内視鏡治療”とは、早期の‟がん”を切除したり、‟がん”によって起こる症状を和らげたりするために、内視鏡を使って行う治療のことですある。
・口や肛門、尿道から内視鏡を挿入して治療を行う。
・なお、腹壁(腹部の壁)や胸壁(胸部の壁)に小さな穴をあけて、そこから内視鏡を入れて行う腹腔鏡下手術(※注 1 )や胸腔鏡下手術(※注 2 )は手術(外科治療)の一つで、内視鏡治療とは異なる治療法である。
(※注 1 ) 腹腔鏡下手術は、炭酸ガスでおなかをふくらませてから腹壁(腹部の壁)に小さな穴をいくつか開け、そこから太さ 1cm ほどの細長い管のような腹腔鏡という器械や手術器具を挿入して、モニター画面上で腹腔(腹壁で囲まれた空間)の状態を見ながら手術を行う。
(※注 2 ) 胸腔鏡下手術は、胸壁(胸部の壁)に小さな穴をいくつか開け、そこから太さ 1cm ほどの細長い管のような胸腔鏡という器械や手術器具を挿入して、モニター画面上で胸腔(胸壁で囲まれた空間)の状態を見ながら手術を行う。
・内視鏡とは、細長い管状の医療機器で、先端で撮影した画像をモニターに映し出して観察することができ、内視鏡の先端部には、小さな穴が開いていて、ここから器具を出し入れして、‟がん”を切除する。
・‟内視鏡治療”で切除できる‟がん”は、食道がん、胃がん、十二指腸がん、大腸がん、膀胱がんである。
・食道がん、胃がん、十二指腸がんでは口から、大腸がんでは肛門から、膀胱がんでは尿道から内視鏡を挿入する。
・食道、胃、大腸などの消化管にできた‟がん”の治療の場合には太さ 1cm ほど、膀胱がんの治療の場合には太さ 5 ~ 8㎜ ほどの内視鏡を使う。
・手術に比べて、痛みが少ない、回復が早いなど体への負担が少ないのが特徴である。
・消化管にできた‟がん”の‟内視鏡治療”は、内視鏡専用の部屋や手術室で受ける。
・膀胱がんの‟内視鏡治療”は、手術室で受ける。
・‟内視鏡治療”でも手術と同様に、医師や看護師などの複数の医療スタッフが治療に関わる。
2.消化管にできたがんの内視鏡治療
・食道や胃、十二指腸、大腸といった消化管にできた‟がん”は、小さく浅い早期であれば‟内視鏡治療”によって切除できる場合がある。
・‟内視鏡治療”が受けられるかどうかの基準は、‟がん”の大きさや深さ、一度に取りきれるかなど、‟がん”の種類別に細かく決まっている。
1⃣ 治療の種類
消化管にできた‟がん”の‟内視鏡治療”には、内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)、内視鏡的粘膜切除術( MRI )、内視鏡的粘膜下層剥離術( ESD )の3つの方法があ
ⅰ ) 内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)
・キノコのような形に盛り上がった、茎があるがんに対する治療である。
・内視鏡の先端からスネアと呼ばれる輪状の細いワイヤーを出し、スネアを病変の茎にかけて締め付けて、高周波電流で焼き切る。
・最近では、前‟がん”病変と呼ばれる、‟がん”になる前の段階の病変に対しては、高周波電流を使わずに、そのままスネアで病変を切り取るコールドポリペクトミーという方法で行うこともある。
【内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)】
ⅱ ) 内視鏡的粘膜切除術( EMR )
・高周波電流を使ってがんを切り取る方法である。
・‟がん”の下の粘膜下層に生理食塩水などを注入して、‟がん”を浮き上がらせる。
・次に、内視鏡の先端から、スネアと呼ばれる輪状の細いワイヤーを出し、浮き上がった部分の根元にかけ、ワイヤーを少しずつ絞め、高周波電流を使って、病変の周囲の正常な粘膜を含めて切除する。
【内視鏡的粘膜切除術( EMR )】
ⅲ ) 内視鏡的粘膜下層剥離術( ESD )
・ EMR では切除することが難しい大きい‟がん”、生理食塩水などの注入で十分に浮き上がらない‟がん”に対する治療法である。
・ EMR と比較すると治療に時間がかかるが、より確実な切除が可能である。
・‟がん”の下の粘膜下層に生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウムなどを注入して、‟がん”を浮き上がらせる。
・次に、‟がん”の周りの粘膜を高周波ナイフで切開し、粘膜下層から病変をはぎ取りる。
・臓器によって、出血や消化管に穴が開く穿孔(せんこう)などのリスクが少し高くなることがある。
【内視鏡的粘膜下層剥離術( ESD )】
2⃣ 食道がん・胃がん・十二指腸がんの‟内視鏡治療”の実際
ⅰ ) 治療を受けるまでの準備
・食道がん・胃がん・十二指腸がんの‟内視鏡治療”では、多くの場合、前日に入院する。
・‟内視鏡治療”は、胃の中を空っぽにした状態で受ける必要があるため、治療前には絶食する。
ⅱ ) 治療の流れ
・麻酔用の液体やスプレーなどを使って、喉に麻酔をかける。
・喉に麻酔がかかったら、医師が口から内視鏡を挿入し、モニターに映った画像を確認しながら‟がん”を切除していく。
・‟内視鏡治療”中は、不快感や不安を和らげるための鎮静剤や、痛みを和らげるための鎮痛剤を使う。
・また、酸素を吸入することもある。
・‟内視鏡治療”中から‟内視鏡治療”後にかけては、心電図、血圧計、血中酸素濃度モニターを装着する。
ⅲ ) 合併症
・合併症として、治療後に出血することや、食道や胃に穴が開く穿孔が起こることがある。
・‟内視鏡治療”中の出血は少量であることがほとんどである。
・‟内視鏡治療”後に出血や穿孔が起こると、吐き気や嘔吐などの症状が出てくる。
・その他、腹痛やめまいなど、‟内視鏡治療”後に何らかの体調の変化を感じたときには、医師や看護師に伝えることが必要である。
・入院中に出血や穿孔などの合併症が起こった場合には、止血や穴をふさぐための内視鏡による治療が行われる。
・ごくまれに手術が必要になる場合もある。
ⅳ) 経過観察
・合併症が起こる可能性があるため、‟内視鏡治療”後は 1 週間程度入院する。
・‟内視鏡治療”を受けた当日は、点滴を受けながらベッドの上で安静にして過ごす。
・‟内視鏡治療”の状況や合併症の有無によるが、翌日~翌々日から水分や流動食が始まる。
・退院するまでに徐々に普通の食事に戻していく。
・切除した病変は、‟がん”の進行度を顕微鏡で調べ、‟がん”の進行度によっては、追加の治療が必要となることがある。
・追加の治療が必要ない場合は、退院後に定期的に受診して、‟がん”が再発・転移していないかどうか調べる検査を受ける。
‟がん”の種類や進行度などによって、受診の頻度や検査の内容は異なるが、多くの場合、年に 1 ~ 2 回の内視鏡検査を受ける。
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