前回の続き・・・。
《がん治療による様々な症状》
【 身体の一部に起こる症状 】
2⃣ 味覚やにおいの変化
( 1 ) 味覚やにおいの変化について
● ‟がん”の治療に伴って、食べ物の味やにおいの感じ方に変化が表れることがある。
・食べ物の味を感じにくくなる
・苦味や金属のような味を感じる
・本来の味とまったく異なった味に感じる
・砂をかむような食感になる
・・・等々の症状が出る。
● 口の中の粘膜が炎症を起こし、刺激物に対して敏感になることもある。
● においの感じ方の変化については、食べ物のにおいや花・香水の香りを感じなくなる、不快に感じるなどの症状が出る。
● これらの症状によって食欲や食事の量が減り、栄養が不足することもある。
( 2 ) 原因
~ 味覚の変化 ~
● 味は、舌に多く分布している味細胞(味蕾)というセンサーに食べ物が触れることによって感知され、「甘味、苦味、酸味、塩味、うま味」として認識される。
● ‟薬物療法”や、頭頸部がん(口、のど、耳などのがん)に対する‟放射線治療”によって、味細胞が損傷したり、味細胞を作るのに必要な亜鉛の吸収が妨げられたりすると、味覚障害が起こる。
● 薬の種類によっては、唾液に分泌された薬の代謝物によって、苦味や金属のような味を感じることもある。
● 舌や歯、歯茎が汚れていたり、口内が乾燥したり、唾液の分泌が少なくなったりすることによっても、味覚が変わることもある。
● 唾液の分泌が少なくなる原因には、‟放射線治療”の影響で唾液腺が萎縮することによって起こることもある。
● 口内の感染症(カンジダ症など)も味覚が変わる原因となる。
~ においの感じ方の変化 ~
● においは、鼻の奥の粘膜にある嗅細胞(においを感じる細胞)に、においの分子が付着することによって感知され、脳で認識される。
● ‟薬物療法”や‟放射線治療”によって嗅細胞が損傷することで、においを感じにくくなったり、敏感になったする。
● 鼻腔がんなどでは、がん病変そのものや、‟がん”を取り除くための手術(‟外科治療”)が原因となることもある。
( 3 ) 味覚やにおいの変化が起きたときには
~ 味覚の変化 ~
● 体の中の亜鉛や鉄の量が味覚と関係するといわれており、飲み薬が処方されることがある。
● 口内を清潔にしてうるおいを保つように心がけることが大切である。
● 口内が乾燥していたり、唾液の分泌が少なくなったりしている場合には、唾液の分泌を促す薬や人口唾液が処方されることがある。
● ‟薬物療法”による味覚障害は、多くの場合、薬の使用を終了してから数ケ月程度で改善していく。
~ 臭いの感じ方の変化 ~
● においについては、生活の工夫を行いながら、自然に回復するのを待つ。
( 4 ) 本人や周囲の人が出来る工夫
~ 味覚の変化 ~
1 ) 口腔ケア
● 毛の柔らかい歯ブラシで、舌や歯、歯茎への優しいブラッシングを、食後や就寝前などに 1 日 2 ~ 4 回行う。
● うがいもこまめに行う。
● 入れ歯の人は、毎食後口をすすぎ、少なくとも 1 日 2 回は柔らかいブラシ(スポンジブラシなど)で歯茎や舌へのブラッシングを行う。
2 ) 口内の保湿
● 口内が乾燥しているときには、水で塗らしたガーゼで口をぬぐったり、市販の口腔保湿剤(ジェルタイプやスプレータイプ)を使ったりすることで症状が緩和する。
●あめやガムを食べたり、食事の際によくかんだりすることは、唾液の分泌を促す。
3 ) 食事の工夫
● 食べたいときに、食べたいものを、無理せず少量ずつ食べることが大切である。
● 味の感じ方は人によって異なるため、症状に合わせて味付けや調理法を工夫する。
・味を感じにくい場合は違うタイプのだしを追加したり、酢の物、からしあえ、ケチャップやマヨネーズあえなどで酸味を加えたり、バターや牛乳、チーズ、ゴマなどでコク味を加えたりするなど味付けを工夫する。
・味を感じやすい温度(人肌程度)にして食べることも推奨される。
・塩味に苦味を感じたり、金属のような味を感じたりする場合は、食材の味を生かしたシンプルな調理にする。
・マヨネーズで苦味を抑えるなどの工夫が効果的なこともある。
・しょうゆに苦味を感じることも多く、その場合は和食よりも洋食の方が食べやすいことが多い。
・一般に、味覚が変化しているときには、カレーライスや丼物、イモ類、カボチャ料理が食べやすいといわれている。
~ においの感じ方の変化 ~
1 ) においへの工夫
・‟がん”の治療中は、食品のにおいに限らず、芳香剤やたばこ、アロマオイルのにおいなど、家庭内や外出先で触れることの多いにおいを不快に感じることがある。
・においの強いものにはなるべく近づかないようにする。
・自分が不快と思うにおいについて周りの人にも伝えて避けられるようにするのも良い方法である。
・換気を積極的に行ったり、においの少ない調理法を工夫したりする。
・炊き立てのごはんや温かい食事のにおいが気になる場合は、冷ましてから食べたり、すし飯やサンドイッチなど冷たいものを試したりすると良い。
・においが気になるときには時間をかけずにテンポよく食べることも良い。
・においへの嫌悪感は、薬物療法後の 3 ~ 7 日頃に起こることが多いといわれている。
・この時期には、調理時間短縮のため、レトルト食品や冷凍食品、市販のお総菜、缶詰などを利用することも効果的である。
2 ) 周りの人へ
・‟がん”の治療中は、さまざまなにおいを不快に感じることがある。
・自分からは、家族や周りの人にはにおいの不快感について話しづらいかもしれない。
・本人にとってどんなにおいが不快か確認し、できるだけ本人に近づけないようにする。
( 5 ) こんなときは相談する
● 味やにおいの感じ方が変わったら、遠慮なく医師や歯科医師、看護師、栄養士に相談する。
● 味やにおいの感じ方に変化が出ることがわかっている薬もあるので、治療を行う前に、医師に予定している治療法、薬の種類、予測される症状、それに対する生活の工夫について確認しておくことも大切である。
次回へ・・・。