「真実の口」2,104 ‟がん”という病 51~がん治療による様々な症状・下痢編~

前回の続き・・・。

《がん治療による様々な症状》

【体の一部に起こる症状】

6⃣ 下痢

( 1 ) 下痢について

● 下痢とは、便の中の水分が過剰になった状態である。

● 一般的に、排便の回数が 1 日 3 回以上と増加する。

● 下痢が続くと脱水や栄養障害が起きたり、肛門の周りに痛みや炎症が起きたりして、心身ともに負担がかかる。

● 命に関わる状態になる場合もあるため、速やかに対処することが大切である。

( 2 ) 原因

● ‟がん”の治療に伴う下痢は、ニボルマブやペムブロリズマブなどの免疫チェックポイント阻害薬のほか、イリノテカンやフルオロウラシル( 5-FU )などを使用した‟薬物療法”によって起こることがある。

● 腹部・骨盤内への‟放射線治療”、大腸がんなどの‟手術”によって起こることがある。

● その他、感染症、腸管が狭くなること(狭窄)、宿便(高度の便秘)によって腸の内圧が高くなり腸液などが増加すること、‟がん”そのもの、食事内容、ストレスなどによって起こることもある。

( 3 ) 下痢になったときには

● 原因をみつけるために問診や検査を行い、下痢の原因や状況に応じた治療を行う。

~ 薬物療法による下痢の場合 ~

● 下痢の症状を軽減する薬を使う場合がある。

● また、下痢の重症度に応じて、原因と考えられるがんの治療薬の減量などを担当医が慎重に検討する。

~ 放射線治療による下痢の場合 ~

● 下痢の症状を軽減する薬を使う場合があり、多くは、治療が終わると徐々に落ち着いてくる。

‟放射線治療”終了後、数ケ月以上たってから難治性の下痢が起こることもある。

~ 感染症による下痢の場合 ~

● 脱水を予防するとともに、感染源に応じた抗菌薬などにより治療する。

● 整腸薬のみで経過観察することもある。

~ その他の原因による下痢の場合 ~

● 原因に応じた治療を行い、‟がん”そのものによる場合には、下痢の症状を軽減する薬を使うとともに、症状とうまく付き合いながら生活をしていく工夫をする。

● 下痢の症状を軽減するための薬には、腸のぜん動運動を抑える薬腸への刺激を抑える薬便の中の水分を吸収して便を固める薬乳酸菌などを含む整腸薬などがある。

● また、重度の場合、腸を休めるために、一時的に食事を止めるように担当医から指示があることもある。

( 4 ) 本人や周囲の人が出来る工夫

~ 水分摂取 ~

● 下痢が続くと水分とともにナトリウムやカリウムなどの電解質も奪われるため、脱水には十分に気をつけ、水分や電解質を含んだ飲み物の摂取を心がける。

● 水やお茶だけでなく、経口補水液やスポーツドリンク、スープ、みそ汁、果汁などからその時々で口に合うものを選ぶとよい。

~ 食事の工夫 ~

● おかゆなどの消化のよい食品を食べるように心がけ、高脂肪食や乳製品、食物繊維の豊富な食品、アルコールや刺激物は控える。

● 胃腸への負担を考え、冷たいものではなく、常温に近いものにするとよい。

● ビフィズス菌、乳酸菌などの生きた微生物(プロバイオティクス)を含む食品は、おなかの調子を整え、放射線治療などに伴う下痢を軽減する可能性があるといわれている???

~ 皮膚のケア ~

● 排便回数が増えることやアルカリ性の腸液を含む便の影響により、肛門の痛みや肛門の周りの皮膚の炎症が起こることがある。

● 排便の後には温水洗浄便座などを使って、温かいお湯でやさしく洗い流し、肛門の周りの皮膚を清潔に保つことを心がける。

● トイレットペーパーを使うときは、やさしく押さえるように拭き取るとよい。

● 皮膚を保護するオイルが含まれている、市販の洗浄剤(サニーナ、リモイスクレンズなど)をトイレットペーパーに含ませて押さえるように拭くと、刺激が緩和されて皮膚の痛みや炎症の予防になる。

● 肛門の痛みや肛門の周りの皮膚に炎症が起こった場合は、担当医や看護師に早めに相談する。

● 肛門の周りに使うことができる軟こうなどの薬を処方してもらうこともできる。

● 便がもれることが心配な場合には、軟便用のパッドをあてておくとよい。

~ その他の工夫 ~

● 落ち着いて排便ができるトイレの環境を整える。

● おなかを温めると、腹痛の緩和につながる。

( 5 ) こんなときは相談する

● 下痢が続く場合には、医療機関に連絡する。

● 高齢の人は、特に脱水になりやすいため、早めに相談・受診する。

● 「どのような症状のときに医療機関に連絡したらよいか」について、担当医と前もって相談しておく。

● また、体がつらくて飲み物でさえ飲むことが難しい場合も、我慢せずに相談する。

● 排便の頻度、性状(便の色や状態)、量、血が混じっているか、食事や水分の内容・量、排尿状況などを記録しておくと、診断や治療の参考になる。

次回へ・・・。