前回の続き・・・。
《がん治療による様々な症状》
【体の一部に起こる症状】
7⃣ 排尿障害
( 1 ) 排尿障害について
● ‟がん”そのものや‟がん”の治療によって、尿失禁(尿がもれる)、頻尿(トイレが近い)、尿意切迫感(尿意を感じてから排尿するまでの時間が短い)、残尿感(排尿したあとも尿が残っているように感じる)などの排尿障害が出ることがある。
● 尿がもれてしまうと、そのことが気になり、クオリティ・オブ・ライフ( QOL:生活の質)に影響を及ぼすこともある。
● また、トイレが近いと、トイレが気になって外出しづらくなることや、夜もトイレに起きるためにゆっくり眠れなくなることがある。
● 慮せずに医師や看護師に相談して、対処法を見つけことが大切である。
( 2 ) 原因
● ‟がん”そのものや、‟がん”の治療(‟手術”・‟放射線治療”・‟薬物療法”)によって起こる。
● 加齢によっても起こるため、原因が特定しづらいことも少なくない。
● ‟がん”そのものによるものの場合には、おなかの中にできる‟がん”や、おなかに転移した‟がん”が、膀胱を圧迫したり浸潤したりすることによって生じる。
● また、‟手術”で排尿に関わる神経に傷がついたことや‟放射線治療”、‟薬物療法”、感染による膀胱炎によっても起こることがある。
( 3 ) 排尿障害になったときには
● 原因に応じて、薬による治療を行ったり、飲む水の量やトイレに行く時間を調整する。
● ‟がん”の‟手術”後の失禁(尿漏れ)は、多くの場合時間とともに改善するので、生活の中でできる工夫を取り入れながら様子をみることもある。
● しかし、もれる量が多く、生活に支障が生じる場合には、コラーゲンを尿道に注入したり、人工尿道括約筋手術などを行うこともある。
● また、尿が出にくいために膀胱に尿がたまりすぎてもれる場合には、導尿(カテーテルという管を使って排尿すること)を行うことがある。
( 4 ) 本人や周囲の人が出来る工夫
~ 日中に十分水分を取り、夕方以降の飲み物の量を減らす ~
● トイレが近いと水分を飲む量を控えてしまいがちですが、日中は十分な水分を取り、夕方以降の飲み物の量を減らす。
● 特にアルコールやカフェインが入った飲み物の量を少なくする。
● ただし、‟薬物療法”を行っている場合には、担当医と相談しながら調節する必要がある。
~ 適切な体重を維持する ~
● 肥満が改善されることによって、尿もれが起こりにくくなることもある。
● 適切な体重を維持することを心がける。
● そのためには、バランスの良い食事を取り、適度な運動をすることが大切である。
● 定期的に体重を測るのも良い。
~ 便秘を予防する ~
● おなかが張って膀胱を圧迫しないように、便秘を予防すると良いといわれている。
~ 時間を決めて、定期的にトイレに行く ~
● 膀胱に尿をためすぎないように、定期的にトイレに行き排尿する習慣をつける。
~ 膀胱訓練をする ~
● トイレに行く間隔をあけるために、膀胱にためられる尿量を増やす膀胱訓練をする。
● この訓練では、尿意を感じてから 5 分~ 10 分くらい我慢してから排尿することにより、少しずつ排尿間隔を延ばしていく。
【膀胱訓練】
● 排尿障害の原因にもよるので、訓練は担当医と相談しながら行う。
~ 排尿日誌をつける ~
● 市販のノートにトイレに行った時間や尿の量を書く(排尿日誌という)。
● 2 時間くらい間隔があくまで、数ケ月かかることもある。
● この日誌は、担当の医師にうまく症状を伝えることに役立ち、自分に合った治療を見つけることにもつながる。
● 日誌に書く内容は、症状によって異なるため医師に相談する。
~ 骨盤底筋体操をする ~
● 盤底筋を鍛えると、尿もれの改善に効果がある。
● 骨盤底筋体操は、あおむけや四つんばいなどの体勢を取り、意識して肛門をキュッと締め、 5 つ数えて緩めるという動作を繰り返し行い、この際、腹筋には力が入らないように気をつける。
【骨盤筋体操・おすすめの姿勢】
● 1 セット 10 ~ 20 回程度で 1 日 4 回を目安に行う。
~ 尿とりパッドなどのケア用品を利用する ~
● 尿がもれる場合には、快適な生活が送れるようにケア用品を利用することがおすすめである。
● ケア用品を利用するときの工夫には次のようなものがある。
・尿とりパッドは、尿がもれる量と生活のスタイルに合ったものを選ぶ
➡ 市販の尿もれ専用の尿とりパッドには、尿を吸収する部位や形状によって男性用や女性用、消臭機能つきのものがある。
・尿とりパッドは、汚れたらすぐに取り換える。
・外出時には、使用済みの尿とりパッドを封入するためのビニール袋などを準備する。
➡ 男性トイレには、使用済みの尿とりパッドを入れるためのゴミ箱がないことが多い。
・浄機能つきトイレなどを活用して陰部の清潔を保つ。
➡ 皮膚のトラブルや感染症の予防につながる。
~ その他の工夫 ~
● 夜トイレへ行く間隔が近い場合は、足の位置をクッションなどで少し高くして 30 分以内の昼寝をしたり、夕方に適度な散歩をしたりして、体の中の余分な水分を尿として排泄しやすくする。
● 腹圧がかかると尿がもれる場合は、重い物を持ち上げる際や、くしゃみや咳せきなどに気をつける。
● 体が冷えるとトイレが近くなる場合は、暖かい下着などを着ることで腰周りを冷やさないようにする。
~ 周りの人ができるサポート ~
● 排尿に関わることは、本人からは言い出しにくいため、尿とりパッドの購入など手伝えることがないか、さりげなく声をかけてみる。
● 周りの人の理解が本人の支えになる。
・夜間にトイレが近い場合には、トイレまでの通り道を整えておく。
・高齢者などで、自分でトイレに定期的に行けない場合には、周りの人が声をかける。
( 5 ) こんなときは相談する
● 下記のような症状があるばあいは、感染症の疑いがあるため医師に相談する。
・尿の回数が多く痛みを伴う
・尿の色が濁っている
・残尿感がある
・高熱や腰の辺りに響くような痛みがある
● 診察の際には、いつから、どんな症状があるのか、飲んだ水分量やトイレに行った時間などを書いた排尿日誌を持参すると良い。
次回へ・・・。